=『怪人フー・マンチュー』嵯峨静江・訳/HPB 1757
1916 「The Devil
Doctor(The Return of Dr. Fu Manchu)」
= 本書
=『悪魔博士』寺田鼎・訳/改造社
=『魔人博士(再発時には『悪魔博士』と改題)』山中峯太郎・訳/ポプラ社
1917 「Si-Fan
Mysteries(The Hand of Fu Manchu)」
1919 「The Golden
Scorpion」(但しフー・マンチューは脇役とのこと)
1931 「The Daughter of
Fu Manchu」
1932 「The Mask of Fu
Manchu」
1933 「The Bride of Fu
Manchu(Fu Manchu’s Bride)」
1934 「The Trail of Fu
Manchu」
1936 「President Fu
Manchu」
1939 「The Drums of Fu
Manchu」
1941 「The Island of
Fu Manchu」
1949 「Shadow of Fu
Manchu」
1957 「Re-Enter Fu
Manchu(Re-Enter Dr. Fu Manchu)」
1959 「Emperor Fu
Manchu」
1973 「The Wrath of Fu
Manchu」(過去の中篇・短篇を収録)
平山雄一は「第二作である本作をいきなり読んでも差し支えない」と言うが、フー・マンチューについて予備知識ゼロの読者が初めてこの本に接する場合、謎の怪人を向こうに回して戦うネイランド・スミス&ピートリー博士(物語の語り手)のコンビ、そしてフー・マンチューの手下になっている美少女カラマニ、このレギュラー三名のバックボーンを理解できていないと話を十分咀嚼しづらいんじゃないかな。ざっくりでもいいから第一作『怪人フー・マンチュー』の内容は頭に入れておいたほうがいい。
白人中心の体制を壊滅させるのがフー・マンチューの野望。でも実際描かれている悪巧みに比べたら、その野望はデカすぎるような気がする。007シリーズの内容ならスペクターが世界征服を目論んでいても不自然さは無いけど、フー・マンチューの犯罪はあそこまで大掛かりではないんだし、標的にする対象はもっと絞り込んでよかったんじゃない?ただ、小難しい謎の提示も無くヴィジュアル的にキャッチーなシーンは多いから、小説を読むより映像で観たほうが楽しめそうな点でイアン・フレミングのジェームズ・ボンドとも共通している。