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2023年12月1日金曜日

『夢の扉-マルセル・シュオッブ名作名訳集』マルセル・シュオッブ

NEW !

国書刊行会
2023年11月発売



★★★★   また買っちゃった




八年前の全集が予想以上に評判になったものだから、国書刊行会もマルセル・シュオッブで二匹目のドジョウを狙ってきたか・・・とお思いの方、遡ること四十年前の1984年にも国書は『フランス世紀末文学叢書 2 黄金仮面の王』を刊行しているので、何はともあれ昔からシュオッブとの繋がりはあったのですヨ。

 

 

今回の新刊『夢の扉』はシュオッブ作品日本語旧訳の中から制作サイドが優れていると見做したものをセレクトしていて、マルセル・シュオッブ・ベスト・セレクションみたいな意味合いとはちょっと違うと思う。仮にもし、好きなシュオッブ作品を選べと私が云われたなら、本書冒頭に採られている『架空の伝記』収録作からはあまりピックアップしないだろう。ま、あくまで個人の好みの問題ですがね。

 

 

渡辺一夫(訳)

「絵師パオロ・ウッチェロ」「犬儒哲人クラテース」「神となつたエンペドクレス」

「小説家ペトロニウス」「土占師スフラア」

 

矢野目源一(訳)

「大地炎上」「モッフレエヌの魔宴」「卵物語」「尊者」

 

鈴木信太郎(訳)

081号列車」

 

松室三郎(訳)

「黄金仮面の王」

 

青柳瑞穂(訳)

「骸骨」

 

日影丈吉(訳)

「木乃伊つくる女」「ミレーの女達」「睡れる市」


種村季弘(訳)

「吸血鳥」

 

上田敏(訳)

「浮浪学生の話」「癩病やみの話」「法王の祈禱」

 

堀口大學(訳)

「遊行僧の話」

 

山内義雄(訳)

「三人の子供の話」

 

日夏耿之介(訳)

「三人童子の話」

 

澁澤龍彦(訳)

「エンペドクレス(抄)」「パオロ・ウッチェロ(抄)」

 

 

「解題」執筆者は礒崎純一だから、旧訳の選択を行ったのもきっと彼だと推測する。本書はあの『マルセル・シュオッブ全集』の大ボリュームとそれなりのお値段に恐れをなした市井の人でも買いやすいよう配慮された単行本のように一見みえるが、旧訳を物した顔ぶれへのこだわりが最優先されており、まっさらのシュオッブ・ビギナー(私もほぼそっち側の人間だ)に優しい内容・・・というより、長年シュオッブを欲してきた人にこそ真価が味わえそうな企画だな、と感じた。(美しい挿絵が数点入っているところなどはビギナーにも嬉しいセールス・ポイント)

 

 

渡辺一夫の訳で「神となつたエンペドクレス」「絵師パオロ・ウッチェロ」を収めているのだから、澁澤龍彦に思い入れの無い私などは「わざわざ抄訳を採用してまで同一作品を二度収録するぐらいだったら、別の作品が読みたいな」と思ってしまうけれども、幻想文学界における澁澤信仰ときたらそれはそれは鼻白むほど強力だし、シュオッブを叩き台にしてそれぞれの訳者の技を楽しんでもらう事こそを第一義にしたのであろう。(「三人の子供の話」と「三人童子の話」も元は同じ作品。)

 

 

左川ちかが岩波文庫に入るこのご時世だ。マルセル・シュオッブもそのうち文庫になったりするかな。もっとも私がそれを買うかどうかは〝誰がの本をプロデュースしているか〟次第だが。

 

 

 

(銀) 『夢の扉』刊行に乗じ、品切れになっていた『マルセル・シュオッブ全集』も今月増刷された。「年末のボーナス・シーズンを当て込んでシュオッブを売りまくれ!」ってな勢いで、算盤を弾いている国書刊行会の腹積もりが覿面伝わってきますな。




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2020年7月31日金曜日

『マルセル・シュオッブ全集』マルセル・シュオッブ

2015年7月14日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

国書刊行会
2015年6月発売



★★★★    眼で読む阿片





私なんぞ江戸川乱歩からマルセル・シュオッブの事を知ったクチで、著名な数篇しか読んでおらず全く無知なものだから、日本でもシュオッブ全集が制作されたのはトテモ有難い。





彼の語り口は落ちる雫のように静かで、どの小説も散文詩のように短い。
中でも名高い作品、金色の仮面の下に恐ろしき業(カルマ)を持つ王の話「黄金仮面の王」や、パンデミックの幻影を描く「〇八一号列車」、天地の崩壊か創造かを問う(ワタシの大好きな)「大地炎上」、その他「二重の男」「吸血鬼」「少年十字軍」等をはじめレア作品・評論・エッセー、そして重厚な解説・解題・年譜と盛り沢山。造本・装幀も素晴らしく、封入物まで凝りに凝っている。なるべくなら現物で確かめてみてほしい。

 


今回初めて読んだものの中では最晩年の作とされる「マウア」に最もショックを受けた。官能描写が全然無かった訳ではないシュオッブだが、レズビアンがここまで睦みあう、脳髄がトロトロになりそうなエロスを筆にしていたとは。

 


本書の刊行を喜びつつ、国書刊行会の書籍に限らず他社でも散見されることではあるが、どんなに優れた本でもハンパなく高額だったり、重量が相当ヘビーになるケースが近年増えて、本好きの人でさえ購入を躊躇している局面が無きにしも非ず。

 


マニア以外の人が気軽に買ってみるには本の売り方の敷居が高く、世知辛い世の中になったなあと少し思ったりもする。私も海外の作家にはなるべく手を出さないよう控えているので正直この価格には迷ったが、結局は購入して良かった。それというのも幻想・怪奇・妖術そしてSF、時代でいうなら太古から中世そして近代と、あらゆる時空を駆けるシュオッブの魔力だろうか。私のような門外漢でさえこれほど満足なのだから、好きな人には宝のごとき書物となりましょうぞ。




(銀) 自分の文章ではないので勝手にこのBlogには転載できないが、Amazonに投稿された本書レビューの中でMaxさんというシュオッブに詳しそうな方がこんな発言をしている。


▼ 本書は全集と謳っているが、実は収録漏れの作品があること

▼ 翻訳に使う原書はどの版を使ったのかが書かれていないこと

▼ 他にも本書は誤訳が多い等、疑わしい点が多かったので、
最初は☆1つにしてレビュー投稿したら即座にAmazon側から削除されてしまったこと

 

私は原文を用いて訳の正確さをチェックできるような能力は持ち合わせていないが、国書刊行会の本だからといって鵜呑みにしてはいけないという警告である。ここで最も重要視したいのは、三番目の▼だ。問題点を指摘して☆1つの書評を書いたら何が悪いというのだろう? Maxさんは自分のレビューをAmazonのレビュー管理担当者に不当削除されたので、改めて☆4つにしてもう一度投稿したら、その☆4つレビューは削除の憂き目に遭わず、今でも見ることができている。「参考になった」票も多く寄せられてなによりではあるが、何で同じ文章のレビューが☆1つだと削除され☆4つだとOKなのか?



ホラネ、だから言ったでしょ?たかがレビューひとつとっても、Amazon.co.jpは信用ならない企業だってことが。同じ目にあっている多くのレビュー投稿者は声を上げないだけで、真面目な感想を書いてレビュー投稿したって、何が気にくわないんだが知らんが、アチラさんの不都合な事実を書くとなんでもかんでもすぐ削除。逆に、本当の事は何も書いていないまるで詐欺のようなレビューは絶対に消されることはなく、むしろAmazonのほうで「参考になった」票をプラス操作している。これが「地球上で最もお客様を大切にする企業」とか平気でほざいている企業の実態ですヨ。