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2022年10月20日木曜日

『マヒタイ仮面』楠田匡介③

NEW !

   



■ どういった理由で湘南探偵倶楽部は改竄を続けるのか?




 湘南探偵倶楽部が制作・発売した同人本『マヒタイ仮面』(楠田匡介)はテキスト入力時の誤字脱字があふれかえっているばかりではなかった。不幸にして、この本を買ってしまった方、あるいは底本である『小学六年生』該当号の古雑誌 or 複写コピーをお持ちの方は(そんな人はほぼいないと思うけれども)、それらを手元に置きながらこの記事を読んで頂くと、よりベターである。

 

 

 

前回の【② テキスト崩壊】の記事の中で私は『マヒタイ仮面』第六回にあたる6364頁の画像をupしておいた。その画像の右下を見ると「はじめて読まれる人に」という欄がある。これは〈前回までのあらすじ〉が簡単にわかるよう、初出誌『小学六年生』編集部が毎月冒頭に添えたものだ。

湘南探偵倶楽部版『マヒタイ仮面』を読むと、(第一回に無いのは当り前として)第二~五回/七回の〈前号までのあらすじ〉は本編と同じく、制作者が自らの手でテキスト入力している。
一方、第六回/八~九回/十二回の〈前回までのあらすじ〉は『小学六年生』原本からそのままスキャン・コピーされていて、第十回にはそれが無い代わりに豊福剛造一家/探偵役の漫画家・金近たかし/チビ連隊/死仮面の男といった主要キャラ紹介のスキャン・コピーが、残る第十一回はちょっと見ると原本からのスキャン・コピーだと勘違いしそうだが、文章は制作者が手入力したものだった。

 

 

 

さて、前回の記事にもupした文章だが第六回「はじめて読まれる人に」の部分だけズームアップしたものを読者諸兄のために、もう一度お見せしよう。三行目にはこう書いてある。
〝美江子、英子姉妹のゆくえがわからなくなったのだ。ついで剛造氏夫妻までが、緊張する警察陣をしりめに、何者かに連れ去られてしまった。〟

               

                                   


本作に登場する子供のメイン・キャラは、この本の制作者がテキスト入力した本編全文を読むと次の五人しかいない。

 

・豊福剛造・香絵夫妻の子供である木綿子/比奈子姉妹

・木綿子/比奈子とはいとこにあたる小松良夫/幸子兄弟

・チビ連隊メンバーのひとりである万病薬局の杏子

 

もうお気付きですね。上掲『小学六年生』の第六回「はじめて読まれる人に」欄に記してあった美江子/英子姉妹の名前が見当たらないことに。本書を何度見返しても物語の中に美江子/英子なんて登場人物は存在しない。そして第六回までの時点で誘拐される姉妹といったら豊福木綿子/豊福比奈子以外にはいないのである。これは作者楠田匡介や『小学六年生』編集部のミスでも何でもない。何故かって?第二回のラストに見られる、原本から直接スキャン・コピーされた(つづく)以降の煽り文にもこう書いてあるからだ。

〝死の面・・・・とうとう、美江子、英子きょうだいのへやにまでしのび込んできた、
あの不気味な面・・・・〟(☟の画像をクリック拡大して確認されたし)


            

 

それだけではない。同じく原本からスキャン・コピーされた第十回の〈主要キャラ紹介〉欄には〝清水薬局のヒロ子〟と書かれている。エエッ、万病薬局の杏子までもが・・・。このヒロ子という名前も間違いではない証拠に第八回〈前号までのあらすじ〉欄には〝豊福家の美江子、英子姉妹、それにヒロ子の三人は〟とハッキリ書いてある。つまりだ。意図的な改竄か夢遊病みたいな心地でテキスト入力をしたのか知らんが、湘南探偵倶楽部の制作者は美江子/英子姉妹の名前を木綿子/比奈子へ、清水薬局のヒロ子万病薬局の杏子へ、勝手に書き変えているとしか思えない。



      

             第十回〈主要キャラ紹介〉の一部

        原本も美江子を幸子と間違えている。やれやれ・・・。



         

             第八回〈前号までのあらすじ〉


 

 湘南探偵倶楽部のこういう改竄事例は他の本でもあった。去年の七月、当Blogで紹介した大下宇陀児のジュヴナイル作品『黒星章』→『黒星團の秘密』だ。その時の二つの記事のリンクを貼っておくので、よ~くお読み頂きたい。


①  春陽堂版(戦前)と靑柿社版(戦後)のテキスト異同

②  全体に細かく手が入れられた光文社痛快文庫版


 

 

『黒星章』は戦後になって、靑柿社という出版社から粗末な仙花紙本で『黒星團の秘密』と改題され、作者が時代の変化に合わせていくらかの改稿を施して再刊された。湘南探偵倶楽部はその靑柿社版『黒星團の秘密』を2018年に復刊しているのだけど、これが原本そっくりそのままスキャン・コピーした作りではなく、『マヒタイ仮面』同様に手入力でテキスト・データが作られていた。

そして上に挙げた『黒星章』→『黒星團の秘密』のテキストを比較した記事で説明したように、湘南探偵倶楽部はこの頃から本来ありうべからざるテキストを作りあげ、まことしやかに復刊していたのだ。こうなるともう『マヒタイ仮面』も人物名以外の部分も改竄されているのかもしれない。

ここに正真正銘、本物の靑柿社版『黒星團の秘密』テキストが閲覧できる「国会図書館デジタルコレクション」リンクも貼っておくから、湘南探偵倶楽部が復刊したほうの靑柿社版『黒星團の秘密』をお持ちの方は13頁を開いて13行目の四十八願という名の富豪の邸宅が、このリンク先にある本物の靑柿社版『黒星團の秘密』1211行目では玉置某となっているところ等を御自身の目で確認してほしい。


   国会図書館デジタルコレクション/靑柿社版『黒星團の秘密』大下宇陀児 (☜)

 

 

 

去年、大下宇陀児『黒星章』→『黒星團の秘密』の記事に着手した時にはまだ湘南探偵倶楽部を信じる気持が残っていたから「可能性は低いけど、もしかしたら靑柿社版のテキストにはヴァリアントが存在するのかもしれない」と書いておいた。しかし、今回の楠田匡介『マヒタイ仮面』でさえ明らかに(たとえごく一部とはいえ)内容改竄しているのだから、決してミスではない。確信犯だ。でなかったら、制作者の頭は相当ヤバイ状態にあるとしか考えられないではないか。

もしこんな風に書き変える必要があるのならば、なぜ理由を本の中に一言書いておかないのか。誠に失礼ながら、前回の記事で私が「頭がおかしいとしか受け取りようがない」と書いたのは、これだけの動かぬ証拠が上がっているからだ。

 

 

 

しかも『マヒタイ仮面』の新刊売価は驚くなかれ、なんと5,800円だよ。ボッタクリ価格な上に間違いだらけだと私以外の人からもこのリンク先を見よ指摘されている善渡爾宗衛の本並みだぞ。そりゃあ今、何でもかんでも物価が上昇しているさ。前回の記事で比較対象として掲げた横溝正史ファンの同人誌『偏愛横溝短編を語ろう』(2,500円)だって前に出ていた『ネタバレ全開! 横溝正史読書会レポート集』と比べて40頁増えて新刊売価が1,000円もアップしてる。

それが妥当な金額なのか私にはわからんけど、
あのミーハーな横溝ファンでさえテキスト入力はちゃんとやっているのに、
湘南探偵倶楽部がやっている事は著作権の侵害ではないのか・・・。
どのような目的でこんな事をしたのか、明らかにする義務が彼らにはある。


 

 

 

(銀) 湘南探偵倶楽部のアイテムは最初のうち内輪のメーリング・リストのみの扱いだったが今では盛林堂書房をはじめいくつかのミステリー専門古書店で販売されている。



楠田匡介の本名は小松保爾。現在の著作権継承者がどなたなのか残念ながら存じ上げない。大下宇陀児の著作権継承者は今もお元気なのであれば娘の木下里美さんから変更は無いと思われる。小松保爾氏の遺族そして木下里美さんとコンタクトが取れる方は、このようなやってはならない改竄行為が行われている事を大至急知らせてあげてほしい。



探偵小説の欲に目がくらんだ人間の頭の中はこんな風になっているんだろうか。
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲・・・・・ではなく、
金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金・・・・・と。





2022年10月18日火曜日

『マヒタイ仮面』楠田匡介②

NEW !

湘南探偵倶楽部叢書 臨増版4号
2022年8月発売



   テキスト崩壊



 前回の記事【① 湘南探偵倶楽部が販売してきたもの】からのつづきである。本日はいよいよ湘南探偵倶楽部が先月発売した同人本『マヒタイ仮面』(楠田匡介)の実態に踏み込む。
このところ彼らは楠田匡介の未刊ジュヴナイル作品を立て続けに刊行しており、今回はそれまでのサイズよりもグッとコンパクトなA5判に変更。全145ページ、梁川剛一の挿絵も収録。価格については次回の記事 にて記す。初出誌情報などは何も記載されておらず、ネットで調べたらこの作品は『少学六年生』昭和324月号から翌年3月号まで連載との情報があった。

 

 

 

 湘南探偵倶楽部が制作・販売する同人本は前回も書いたように、原本をそのままスキャン(コピー)して作られるのが主だったが、最近は自らテキストを打ち込んだ体裁の本も多くなり挿絵がある作品であればその部分を原本からカットアウト + 複写 + ペーストした紙面になっている。この『マヒタイ仮面』も同様。原本を1ページ1ページ丸のままスキャン(コピー)するのであれば見栄え的には問題無いが、PCを使ったテキスト・データ作りとなると、このレーベルの制作者は洗練された編集スキルを持っている人がいないのか文字組みが下手だったり、場面転換する箇所なら底本では改行して適当なスペースが空けられているはずなのに、それが全くなされていなかったり、旧漢字が意味もなく混じっていたり、はたまた漢字であるべき単語をひらがなのまま入力していたりと、非常に読みにくいこと甚だしい。

 

 

 

参考までに、これも最近横溝正史ファンの人達が自主制作した『偏愛横溝短編を語ろう』という同人誌があるので、それの紙面と『マヒタイ仮面』の紙面とを見比べてもらおう。画像クリックすると拡大して見ることができる。

       

               
              『マヒタイ仮面』の紙面



 
  
『偏愛横溝短編を語ろう』の書影と紙面

表紙だけでなく中のページもコーティングされているような良い紙質が使われており、
こちらはちゃんと校正がされ、誤字脱字なども無さそうに感じた。
『マヒタイ仮面』と同サイズのA5判/全104ページ/新刊売価2,000






Web上では伝わりづらいかもしれないが、『偏愛横溝短編を語ろう』の紙面はテキストが非常に読みやすく組まれているのに対し、『マヒタイ仮面』は文字間隔がギチギチで窮屈。もちろん、小説ではない前者と(ジュヴナイルとはいえ)れっきとした小説である後者を比べるのはフェアじゃないかもしれないが、どっぷり小説を復刊している盛林堂ミステリアス文庫あたりの紙面と比較してみても、湘南探偵倶楽部の本作りには素人っぽさが漂う。このようなPCの作業だと年齢が若い制作者のほうがテキパキ進められる傾向は確かにある。だがプロの出版人の仕事ではなくフツーの素人がやっている事なのだし、そこを問題にして責めているのではない。





同人本を作っている人のすべてが編集作業に秀でていたり良い印刷業者を使っている訳ではないから、本の見た目の多少の拙さには目をつぶるべきだろう。しかし、だ。この『マヒタイ仮面』のテキストの無惨なザマは決して他人様からお金を頂けるような代物ではない。いちいちページをめくり入力ミスを拾い出すなんて面倒臭くてイヤなのだけど、事実は事実として、このような本を買わされてしまう被害者が出ないよう世の中に伝えなければならない。善渡爾宗衛の作った本以上に発生している『マヒタイ仮面』の大量な入力ミスをここにお目にかける。


以下、上段の『マヒタイ仮面』の紙面上に入力されている文章。
下段のは正しい底本の、というか本来あるべき文章。
下線は私(銀髪伯爵)が記した。(私は底本となる『小学六年生』は一冊も所有していない)
頭を抱えるほどの数だから心して御覧頂きたい。

 

 

 

● は七日でまだ正月気分から     320行目

● 今日は七日でまだ正月気分から

 

 

● 「まあ、いいタクシーで帰ろう」     518行目

● 「まあいい、タクシーで帰ろう」

こういうミスは数えだすとキリがない。

 

 

● ころげ落ちたんです」     924行目

● ころげ落ちたんですか?」

この会話は木綿子の説明に対し警官が疑わしそうに問いかけている言葉なので、
語尾は〝ですか?〟でないとおかしい。

 

 

● してあったんです」「ですもの、ナンバーなんかで     108行目

● してあったんですもの、ナンバーなんかで

このように会話のカギカッコを置く位置ががメチャクチャだったり、〈、〉〈。〉など句読点の打ち方が間違っている箇所は全体にわたってあちこちに見られる。その他にも !(=感嘆符)が文字化けみたく ▢ となっている箇所もある。

 

 

● 「だれ一人いないが、    1119行目

● 「だれ一人いないが、」

 

 

● ギョとしたように     1124行目

● ギョとしたように

〝フフっ〟とされている箇所もある。
カタカナ小文字〝ッ〟の打ち方がわからないのだろうか?

 

 

● 1220行目から【死面(デスマスク)】という新しいチャプターが始まっているのに、改行さえされていない。

 

 

● あの時だって、まったまったくわからない話である。     1416行目

正しい文は何だったのか、さっぱり見当が付かない。

 

 

● さすが顔色を変えていた。     1423行目

● さすがに顔色を変えていた。

 

 

● さめてから聞いてみたが         1517行目

● 彼らの目がさめてから聞いてみたが

 

 

 「だっだってえ、     1610行目

 「だってえ、

 

 

● でたらめいうからさ ・ 幽霊が出るなんて・・・・・・」     172行目

● でたらめいうからさ。幽霊が出るなんて・・・・・・」

〈。〉でないとしたら〈、〉にすべきだろう。

 

 

● ずいぶんと古風なことを言って     189行目

● ずいぶんと古風なことを言って

 

 

● ミシリ・・・。と、また、     2212行目

なぜこの〝ミシリ〟という擬音に〝みしり〟とルビを振る必要があるのか?

 

 

● 《 っ。 っ。》     2314行目

28頁の記述からして、《フッ。フッ。》とするのが正しいと思われるのに・・・。

 

 

● 柱時計鳴る音もハッキリ聞いたわ」     289行目

● 柱時計の鳴る音もハッキリ聞いたわ」

 

 

● お世話にっております。どうぞ。」    297行目

● お世話になっております。どうぞ」

 

 

●  不平言う     3514行目

●  不平を言う

 

 

 「大原さん、会社?お父様だけ」(3527行目)という木綿子の問いのあとには大原運転手の返事が来るべきで、もしかすると一~二行分欠落している可能性もある(微妙)。

 

 

● とっくに此所には着いているはずである。     4218行目

● とっくに此所には着いているはずである。

 

 

● しい|んと静まり返っている。     447行目

● しいーんと静まり返っている。

 

 

● 考え込んでいた。とっ。少しずつわかってくるような     4524行目

地の文で〝とっ〟って何よ?

 

 

● みな殺しにする計画ためだったんです」     4724行目

● みな殺しにする計画のためだったんです」

 

 

● なにを夢見ていらっしゃる。     5716行目

● なにを夢見ていらっしゃる。

 

 

● 「あっ!と叫び声をあげた。     588行目

● 「あっ!」と叫び声をあげた。

 

 

● 獄門だがゆらいで竹竿が     6621行目

● 獄門台がゆらいで竹竿が

 

 

● 無気味さをいっそうにもちもちとくにかいしている。     755行目

???

 

 

● 「それより、あんたのことだわ?よ?」     768行目

● 「それより、あんたのことだわよ」

 

 

● 逃げ出す工夫をしなくっちゃ。     7710行目

● 逃げ出す工夫をしなくっちゃ。

 

 

● ないわけなでしょう。     782行目

● ないわけないでしょう。

 

 

● 三浦君がそう言っ。     7915行目

● 三浦君がそう言って、

 

 

● 見たことがある?と知らせてくれた。     8715行目

● 見たことがあると知らせてくれた。

 

 

● 五つの良夫をのぞく寝台の人は、     922行目

楠田匡介ジュヴナイルのレギュラー・キャラ小松良夫少年が五歳ってことはありえないし、
五つめの寝台という意味ではないのか?

 

 

● 殺人犯がこの船に今乗っているんですよ。     9513行目

この時点で小松良夫たちの一行はまだ寝台列車に乗っている筈なのに、
〝この船〟などと訳わからんセリフが飛び交っている。

 

 

● 明日の朝森入港まであと三時間です。     9517行目

● 明日の朝青森駅到着まであと三時間です。

 

 

● 杏子はノート取っている。     968行目

● 杏子はノートを取っている。

 

 

● 「あれっえ!」杏子ちゃんが悲鳴を上げた。     992行目

● 「あれえっ!」杏子ちゃんが悲鳴を上げた。

 

 

● 剛造氏が書いた肖像画あった。     10025行目

● 剛造氏が書いた肖像画があった。 

 

 

● 金田一耕助のような吃音が特徴の漫画家・金近たかしがチビ連隊に話しかける際にはいつもタメ口だったのに、【マヒタイ族】のチャプター(101頁~)になると、なぜか丁寧なですます調に変っているのが不自然。おそらくは104頁に登場する豊福鉱山の案内人の口調とごっちゃにしてしまっている。

 

 

● 日本のとがった木の枝     1055行目

● 二本のとがった木の枝

 

 

● かなり金近さんのグループを詳しいようだ。     1071行目

● かなり金近さんのグループを詳しいようだ。

 

 

● 尊敬の目で改めて見るのった。     1166行目

● 尊敬の目で改めて見るのだった。

 

 

● 行く方向示すものです。     1252行目

● 行く方向を示すものです。





(銀) これ程までにテキストが崩壊状態の本をシレッと売る者がいて、それを読みもしないかあるいは何も気付かずにワッショイしている莫迦が現実に存在しているのである。まあ楠田匡介のストーリー執筆、そして『小学六年生』編集部の校正無視ともどもやっつけ仕事な訳だから、上に挙げた事例のうち湘南探偵倶楽部の責任ではない箇所も、あるにはある。それにしたって、入力したテキストがこんなんなっているのに、どうして彼らはデータが打ちあがった時点で再度見直しをしたり、あるいは印刷業者から本が出来上がってきて売りに出す前に一冊でもチェックしようとしないのか?悪いけど頭がおかしいとしか受け取りようがない。


この擁護のしようがない数の入力ミスばかりか、湘南探偵倶楽部の本作りにはそれ以上の悪質な疑いが発覚している。その疑いとは? 


次回の記事  ③  へつづく。




2022年10月17日月曜日

『マヒタイ仮面』楠田匡介①

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■ 湘南探偵倶楽部が販売してきたもの



 Blogではプリント・オン・デマンドとか商業出版とか同人出版とか関係なく、捕物出版/大陸書館に論創社、そしてなによりも盛林堂書房周辺で販売している善渡爾宗衛の制作する本が購買者をまったく馬鹿にした杜撰なテキストであること、特に善渡爾宗衛の本作りは話にならぬレベルであることを忖度無くレポートしてきた。だが、善渡爾宗衛の酷さを超えるぐらい読むに堪えない本が作られ非常識な金額で売られている事実が今回また新たに判明。その内容を正しくお伝えするため数回の記事に分けて発信したいと思うので、そのつもりでお読み頂きたい。

 

 

 

 神奈川県在住の奈良泰明という(かなり高齢と思われる)人物がいる。この人はヤフオクがまだyahooオークションという名称だった頃から探偵小説関連古書を毎週出品 + 販売していて、遊楽洞の屋号を名乗っていたが古本屋を営業しているでもなく、森英俊のように世間で売られている珍しい古本をセドリしてきて転売しているようにも見えず、それなのに稀少かつ状態の良い古本を長い間売り続ける事ができていたから「なんでこの人は本を手元に置かずヤフオクで処分しまうのだろう?」と私はずっと不思議に思いつつ観察していたものだ。

 

 

 

2012年頃だったろうか、この奈良氏とはまた別のヤフオクIDを使用している松澤勲という人物が一緒になって、湘南探偵倶楽部というレーベル名で探偵小説関連の同人出版本の販売を始めた。つまり奈良・松澤両氏のヤフオクIDにてお得意様だった古本落札者への各連絡先をメーリング・リストにして、ごく内輪の好事家向けに通信販売を始めたという訳だ。昔のヤフオクは取引ナビなんて機能がまだ無くて、出品者も落札者もおのおののメールアドレスから住所・電話番号まで全部明らかにされるシステムだったから、そういう事も可能だったのである。

 

             

 

 湘南探偵倶楽部の最初期のアイテムとしてすぐ思い浮かぶのは、(もしかしたら『初期創元推理文庫 書影&作品 目録』のほうが先だったような気もするが)フィリップ・マクドナルドがマーティン・ポーロック名義で発表した「殺人鬼對皇帝」を『新青年』が1939年に掲載した井上良夫の翻訳(本日の記事の冒頭に掲げてある書影がそれにあたる)


湘南探偵倶楽部が刊行した『殺人鬼對皇帝』のテキストは、底本である雑誌『新青年』をそのまま挿絵ごとコピーというかスキャンして印刷されており、スキャンの際に取りこぼしミスでもない限り、復刊本としてテキスト・ミスなど発生のしようがない作りになっていた。この時はレーベル・スタートの餞だったのか新保博久が解説を寄せていて、その部分だけは制作者がPCでタイピングしている。盛林堂が自分の店でも同人出版本を出すようになるのは翌2013年。今にして思い返すと湘南探偵倶楽部は今世紀に入って通販の形で継続的に探偵小説やSF関連の同人本を制作販売する〝先駆け〟だったかもしれない。

 

 

 

湘南探偵倶楽部着目する作品は昭和初期以前の海外ミステリ翻訳本が多く、中では戦前の黒白書房「世界探偵傑作叢書」や春秋社版翻訳探偵小説あたりの復刊が特に印象深い。彼らの同人本というのはおそらく原本を裁断・分解しキレイにスキャンして作られており原本そのままの装幀が再現され、かつテキストも当時の旧仮名のままの状態だったから、製作者がテキスト入力する際にやりがちなタイプ・ミスなど起こりようがないのはアドバンテージであった。


                                                        

    当時の『新青年』の紙面をそのまま転載して制作された『殺人鬼對皇帝』
             98ページ/新刊売価1,300



ただ、遠慮なしに原本を都合よく丸のままスキャンしているから、果して彼らは著作権を守っているのだろうかという疑惑も無くはない。戦前の探偵小説全集の附録である月報等を復刻したりもしているが、それは製本などされておらずホントウに只のコピーに過ぎない。また現在に至るまで、印刷業者がキチンと製本するカタチではなく、まるで会議に使われる資料のような、印刷されたままのペラペラ用紙を綴じただけのものもレーベル開始時から平気で販売されていて、「こういうのって・・・。」と私は首を傾げざるをえなかった。


最近では束(つか)のある製本された本よりも、その手の複写コピーばかりを販売し、本というより紙資料みたいなものに1,000円以上のありえない売価を付けて売っているので、いつしか私は醒めた目で湘南探偵倶楽部を見るようになっていた。



                     

          『銀座不連續殺人事件』大河内常平

      たった26ページのペラペラ紙資料に売価3,300円って・・・
            いったいどれだけの利益が?   



更に湘南探偵倶楽部の本はたとえキチンと製本されたものでも、後発同人出版と比べると細かいところでクオリティに見劣りがする。それは制作者が自分で仕込むテキスト・データの作り方が拙いからなのか、それともそのデータを受け取って製本作業を行う印刷業者の質がよろしくないのか・・・。たぶん前者だと私は見ている。ではどういったところに見劣りが?そしてどういう風に酷いテキスト入力がなされていたのか?今回の記事の題材である湘南探偵倶楽部の最新刊『マヒタイ仮面』(楠田匡介)について、次回以降の記事にて細かく見ていきたい。




(銀) 奈良泰明/松澤勲両氏のヤフオクIDは承知しているが、ここには書かないでおく。またその他にも湘南探偵倶楽部の関係者と思しき人物がヤフオク上にはちらほら見受けられる。近頃は以前と違って、古書を売るというより論創社から送られてくる「論創海外ミステリ」や「論創ミステリ叢書」の最新刊献本分、あるいは湘南探偵倶楽部刊行物の売れ残りをヤフオクに出品しているようだ。



次回の記事 つづく。




2023年3月11日土曜日

日本人の出版モラルは地に落ちたのか

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本日、☜マークで示した箇所にはリンクを張っているので適宜クリックしてご覧下さい。さて、半月ほど前だが『名張人外境ブログ2.0』にて、このような記事がupされていた。

「雪国はいまもつらいか」(2023222日付記事) 

 

日本人のモラルの低下というか、本を作る人間がどれだけ校閲をないがしろにしているか、その見本を人外境主人・中相作はピックアップして嘆いておられる。以下、下線は私(銀髪伯爵)によるものです。


➊ 『朝日新聞DIGITAL2023218日付記事 「人体模型に江戸川乱歩?〈大正レトロ〉な金魚カフェ、人気の秘密は」(筆者:大滝哲彰)の中で、「幽霊」が「幽霊」と誤記されている件。

 

➋ 教科書会社最大手の東京書籍が発行した高校地図教科書に、なんと約1,200箇所もの誤りがあった件。しかも、こんな状態なのに文部科学省は教科書検定でこれをヘーキで合格させており20224月から実際に高校で使われてしまっていた。中相作が記事のタイトルにしている〝雪国はいまもつらいか〟というのは、だいぶ前に新潟の「雪国はつらつ条例」を東京書籍が教科書上で「雪国はつらいよ条例」と記載し、それもまた国が堂々とスルーさせていたみっともない笑い話をオチョくったもの。版元も版元なら役人も役人で、ホントにどうなってるんでしょうな。


                    

 

不肖ワタクシめもこの『銀髪伯爵バードス島綺譚』にて、他人様の著作を本にさせてもらってるくせにテキストの校正・校閲を全くしようともせず、中にはあろうことか底本の内容を改竄までしている疑惑がある連中を糾弾する記事を書いてきた。

 

論創社 関連

『幻の探偵作家を求めて【完全版】(上)』 鮎川哲也

「鮎川哲也と幻の探偵作家達にもっとリスペクトを込めて復刊してほしかった」

『幻の探偵作家を求めて【完全版】(下)』 鮎川哲也

「論創社とミステリ業界の堕落」

 

湘南探偵倶楽部 関連

『マヒタイ仮面』 楠田匡介 

「① 湘南探偵倶楽部が販売してきたもの」

「② テキスト崩壊」

「③ どういった理由で湘南探偵倶楽部は改竄を続けるのか」

 

捕物出版/大陸書館 関連

「他人の小説を、テキストの最終チェックもせずに平気で売り捌く愚人達のこと①」

「他人の小説を、テキストの最終チェックもせずに平気で売り捌く愚人達のこと②」

 

善渡爾宗衛/小野塚力/杉山淳/盛林堂書房 関連

Q夫人と猫』 鷲尾三郎 東都我刊我書房

「企画そのものは大変嬉しいけれど・・・」

『葬られた女』 鷲尾三郎 東都我刊我書房

「テキストの校正をここまで無視して発売された新刊を私は見たことがない」

『影を持つ女』 鷲尾三郎 東都我刊我書房

「三冊連続でテキスト入力ミスが多過ぎ」


                    

 

消費者を軽んじたこのような事例は冒頭の二件以外にもあふれかえっているらしい。ここまでが長いマクラで、そろそろ今日の本題に入ろう。この一年の間に私が購入した探偵小説以外の新刊のうち、上記の例同様に、校閲がなされていなくて気分を害した二冊について述べたい。イエロー・マジック・オーケストラに関する音楽評論書、いわゆるYMOライターと世間で呼ばれている人間が書いたYMO本である。

 

まずCD・レコード販売会社 Disc Union 系列の出版部門DU BOOKSより2022年秋に発売された『シン・YMO』(著者:田中雄二)。この本がまた、なかなかお目にかかれないぐらいに誤字というか誤記の数がすさまじい。著者は校正費が少ないからこうなってしまったと発売後に言っていて、事実そうなのかもしれない。だからといって許されることではないし膨大なミスの中でも私がかなり気になった記述がある。初版589ページ(☟)がそれだ。 

 

   


坂本龍一がベルナルド・ベルトルッチ監督から映画『ラストエンペラー』について、最初音楽ではなく主役を演じて欲しいとの依頼があったと著者は書いているのだが、サカモトがあの映画に主役前提で出演オファーされたなんて話は、私は一度も見聞したことがない。誰もが知るとおり主役の溥儀を演じたのはジョン・ローンであって、サカモトに与えられた役・甘粕正彦は『戦場のメリークリスマス』でサカモトと親しくなったプロデューサー(ジェレミー・トーマス)のプッシュにより、確かに重要な存在としてクレジットされてはいるが、甘粕が登場するのはあの長い作品の後のほう。サカモトを主役はおろか準主役とするのもどうだろう?

もし仮に坂本龍一を坂本龍二と誤植したのであれば、普通に校閲担当者のミステイクと受け取ってもいいけれども、『ラストエンペラー』への主演依頼と書かれていたら、それは明らかに著者の責任ではないのか?

 

                     


私が田中雄二を心配しているのは著書以外にtwitterでもこんな発言をしているからだ。サカモトが80年代にDJを務めていたNHK-FM『サウンドストリート』に沢田研二が出演した回があって、ジュリーも実は『戦メリ』におけるヨノイ大尉の役を打診されていたのだが、断ったので結局サカモトに落ち着いた。その辺の裏話が語られているこの回の『サウンドストリート』を運良く私は当時エアチェックしていたから何度も聴いてきたし、また現在youtubeにこの回の音源がupされているので、興味のある方は下のリンクから入って聴いてみてもらいたい。


『サウンドストリート』DJ:坂本龍一/ゲスト:沢田研二 

(32分あたりで『戦メリ』について二人が語っている)

 

自分が丸坊主になるのは生まれて初めてだったのでサカモトはてっきりジュリーもそうだと早合点して「坊主になるのがイヤだったから断ったの?」と質問したところ、ジュリーは「いや中学時代は野球部だったから」と坊主刈り拒否を否定、ヨノイ役を受けなかったのはスケジュールの都合だったと語っているのが確認できる。ところが田中はどういう訳かtwitterにて「『戦メリ』は沢田研二が坊主頭嫌って降板した役を教授がやった話は有名。」と発信している。単なる勘違いならともかく『シン・YMO』のミスの多さを思うと、SNSのやりすぎなのか他のYMOライターに感情的になりすぎているのか、せっかく蓄積してきた知識を混濁させたまま発言してるようで痛々しい。



       



長くなるから簡略に記すが、後述する吉村栄一、さらに田山三樹/佐藤公稔といったYMOオタ・ライターへの田中雄二の憎悪はとめどない。だからこそ、彼らと己の違いを明確にするためにもテキストは正確に作成すべきだった。ボリュームがあって少ない校正費ではミスを免れなかったと言いたいのかもしれないが、他のDU BOOKSの本を読むかぎり、そこまで誤字だらけになっている印象がない。吉村/田山/佐藤の作るYMO本にロクなものがないのはそのとおりで『シン・YMO』は単純にメンバー三人の歴史を追うだけでなく、各時代の潮流や人間関係などが重層的に盛り込まれ内容的には優れているだけに、なんとももったいなさすぎる。



                     



さてもう一方の吉村栄一による『坂本龍一 音楽の歴史』(特装版)。版元は小学館。特装版は本体の評伝+ディスコグラフィー+写真集の三冊が小ぶりな函に入っているのだけども、こちらも問題山積みで定価13,200円に見合う内容とはとても言い難い。ディスコグラフィーなどなんとも見にくい上に、YMO『テクノデリック』の副題が〈京城音楽〉と記載されていたり、サカモトが関わった郷ひろみ「美貌の都」のシングル・ヴァージョンはアルバムとは全く異なるアレンジの別ヴァージョンなのにエディット・ヴァージョンなどと書かれていたり。もともと頭も良くなさそうだし編集センスの無い吉村栄一だが、よくこれでYMOの専門家を名乗れるものだ。


              


余談だがYMOライターと呼ばれる者に優秀な人はいない(優秀な編集者というのは昨年惜しくも亡くなった島本脩二みたいな人のことである)。それなのにYMO関係のアルバム・リイシュー盤や蔵出しアイテム等々が発売される際、どうしてレコード会社は毎回彼らを登用するのだろう?細野/坂本/高橋だって忙しいだろうからYMOライターのやる事を逐一すべてチェックなどしていないだろうし、またやっていたとしてもそれは周りのブレーンがやる仕事でしょ。田中雄二が常々怒っているとおり、90年代以降YMOライターはYMOにパラサイトしてきたし、それを有難がる頭の悪いYMOオタというのも存在してきた。YMOのメンバー三人ほどの知性にして、なんでYMOライターを野放しにしてきたのかそれがどうにも私には理解しがたい。とどのつまり持ちつ持たれつって事か?



〝ろくに本の校正・校閲をしない人種〟へ話を戻そう。活字に関わる人間がこんなバカになってしまった原因はそれぞれにいろいろあると推測されるけど、やっぱし私はスマホとtwitterがヒトの脳を狂わせてしまったとしか思えない。特に40歳以上の中高年、SNSを腐らせているのはこの世代の年寄りだと若者はしょっちゅう怒っている。もちろん中相作をはじめ、私の敬愛している人はSNSなんか手を出さない。反対に、毎日毎日エゴサーチだか知らんけど、もう取り憑かれたようにネットに張り付いて戯言ばかり発している人間に限ってやるべき仕事を全然やってない傾向がある(日下三蔵とか)。twitterをこの世からなくすだけで、くだらんトラブルや炎上なんてかなり減少する筈なんだがな。twitter、早くなくならないかな~。