✪ 湘南探偵倶楽部が制作・販売する同人本は前回も書いたように、原本をそのままスキャン(コピー)して作られるのが主だったが、最近は自らテキストを打ち込んだ体裁の本も多くなり挿絵がある作品であればその部分を原本からカットアウト + 複写 + ペーストした紙面になっている。この『マヒタイ仮面』も同様。原本を1ページ1ページ丸のままスキャン(コピー)するのであれば見栄え的には問題無いが、PCを使ったテキスト・データ作りとなると、このレーベルの制作者は洗練された編集スキルを持っている人がいないのか文字組みが下手だったり、場面転換する箇所なら底本では改行して適当なスペースが空けられているはずなのに、それが全くなされていなかったり、旧漢字が意味もなく混じっていたり、はたまた漢字であるべき単語をひらがなのまま入力していたりと、非常に読みにくいこと甚だしい。
● 教は七日でまだ正月気分から 3頁20行目
● 今日は七日でまだ正月気分から
● 「まあ、いいタクシーで帰ろう」 5頁18行目
● 「まあいい、タクシーで帰ろう」
こういうミスは数えだすとキリがない。
● ころげ落ちたんです」 9頁24行目
● ころげ落ちたんですか?」
● してあったんです」「ですもの、ナンバーなんかで 10頁8行目
● してあったんですもの、ナンバーなんかで
このように会話のカギカッコを置く位置ががメチャクチャだったり、〈、〉〈。〉など句読点の打ち方が間違っている箇所は全体にわたってあちこちに見られる。その他にも !(=感嘆符)が文字化けみたく ▢ となっている箇所もある。
● 「だれ一人もいないが、 11頁19行目
● 「だれ一人いないが、」
● ギョっとしたように 11頁24行目
● ギョッとしたように
● 12頁20行目から【死面(デスマスク)】という新しいチャプターが始まっているのに、改行さえされていない。
● あの時だって、まったまったくわからない話である。 14頁16行目
正しい文は何だったのか、さっぱり見当が付かない。
● さすが顔色を変えていた。 14頁23行目
● さすがに顔色を変えていた。
● さめてから聞いてみたが 15頁17行目
● 彼らの目がさめてから聞いてみたが
● 「だっだってえ、 16頁10行目
● 「だってえ、
● でたらめいうからさ
・ 幽霊が出るなんて・・・・・・」 17頁2行目
● でたらめいうからさ。幽霊が出るなんて・・・・・・」
〈。〉でないとしたら〈、〉にすべきだろう。
● ずいぶんと古風ななことを言って 18頁9行目
● ずいぶんと古風なことを言って
● ミシリ・・・。と、また、 22頁12行目
なぜこの〝ミシリ〟という擬音に〝みしり〟とルビを振る必要があるのか?
● 《 っ。 っ。》 23頁14行目
28頁の記述からして、《フッ。フッ。》とするのが正しいと思われるのに・・・。
● 柱時計鳴る音もハッキリ聞いたわ」 28頁9行目
● 柱時計の鳴る音もハッキリ聞いたわ」
● お世話にっております。どうぞ。」 29頁7行目
● お世話になっております。どうぞ」
● 不平言う 35頁14行目
● 不平を言う
● 「大原さん、会社?お父様だけ」(35頁27行目)という木綿子の問いのあとには大原運転手の返事が来るべきで、もしかすると一~二行分欠落している可能性もある(微妙)。
● とっくに此所には着いているはずである?。 42頁18行目
● とっくに此所には着いているはずである。
● しい|んと静まり返っている。 44頁7行目
● しいーんと静まり返っている。
● 考え込んでいた。とっ。少しずつわかってくるような 45頁24行目
地の文で〝とっ〟って何よ?
● みな殺しにする計画ためだったんです」 47頁24行目
● みな殺しにする計画のためだったんです」
● なにを夢て見ていらっしゃる。 57頁16行目
● なにを夢見ていらっしゃる。
● 「あっ!] と叫び声をあげた。 58頁8行目
● 「あっ!」と叫び声をあげた。
● 獄門だがゆらいで竹竿が 66頁21行目
● 獄門台がゆらいで竹竿が
● 無気味さをいっそうにもちもちとくにかいしている。 75頁5行目
???
● 「それより、あんたのことだわ?よ?」 76頁8行目
● 「それより、あんたのことだわよ」
● 逃げ出す工夫をしなくつっちゃ。 77頁10行目
● 逃げ出す工夫をしなくっちゃ。
● ないわけなでしょう。 78頁2行目
● ないわけないでしょう。
● 三浦君がそう言っ。 79頁15行目
● 三浦君がそう言って、
● 見たことがある?と知らせてくれた。 87頁15行目
● 見たことがあると知らせてくれた。
● 五つの良夫をのぞく寝台の人は、 92頁2行目
● 殺人犯がこの船に今乗っているんですよ。 95頁13行目
● 明日の朝森入港まであと三時間です。 95頁17行目
● 明日の朝青森駅到着まであと三時間です。
● 杏子はノート取っている。 96頁8行目
● 杏子はノートを取っている。
● 「あれっえ!」杏子ちゃんが悲鳴を上げた。 99頁2行目
● 「あれえっ!」杏子ちゃんが悲鳴を上げた。
● 剛造氏が書いた肖像画あった。 100頁25行目
● 剛造氏が書いた肖像画があった。
● 金田一耕助のような吃音が特徴の漫画家・金近たかしがチビ連隊に話しかける際にはいつもタメ口だったのに、【マヒタイ族】のチャプター(101頁~)になると、なぜか丁寧なですます調に変っているのが不自然。おそらくは104頁に登場する豊福鉱山の案内人の口調とごっちゃにしてしまっている。
● 日本のとがった木の枝 105頁5行目
● 二本のとがった木の枝
● 男ほかなり金近さんのグループを詳しいようだ。 107頁1行目
● 男はかなり金近さんのグループを詳しいようだ。
● 尊敬の目で改めて見るのった。 116頁6行目
● 尊敬の目で改めて見るのだった。
● 行く方向示すものです。 125頁2行目
● 行く方向を示すものです。
(銀) これ程までにテキストが崩壊状態の本をシレッと売る者がいて、それを読みもしないかあるいは何も気付かずにワッショイしている莫迦が現実に存在しているのである。まあ楠田匡介のストーリー執筆、そして『小学六年生』編集部の校正無視ともどもやっつけ仕事な訳だから、上に挙げた事例のうち湘南探偵倶楽部の責任ではない箇所も、あるにはある。それにしたって、入力したテキストがこんなんなっているのに、どうして彼らはデータが打ちあがった時点で再度見直しをしたり、あるいは印刷業者から本が出来上がってきて売りに出す前に一冊でもチェックしようとしないのか?悪いけど頭がおかしいとしか受け取りようがない。
この擁護のしようがない数の入力ミスばかりか、湘南探偵倶楽部の本作りにはそれ以上の悪質な疑いが発覚している。その疑いとは?
次回の記事 ③ へつづく。