そのKさん曰く、例えば版元で既に販売終了している本を欲しくなり、通販サイトではどこも売り切れだが、自分の住んでいる都道府県からかなり離れた地方のTSUTAYA店舗に、たまたまその本が一冊売れ残っていたとする。でもTSUTAYAの場合、最寄りの店舗へ取り寄せて購入したくともフランチャイズ等の区分けがあって、ジュンク堂や紀伊國屋等のように、どこの他店舗からでも取り寄せができる訳ではないそうだ。
「何のための全国展開なんでしょうね?」とKさんが口にする数々のTSUTAYA批判はことごとく的を射ており、書店としてTSUTAYAを評価していない私にも、思い当たるフシが多々ある。在庫検索システムなんて、まさにあの会社の本質を表しているのではないか。非常に使いづらく不親切だったとはいえ、以前はTSUTAYAのwebサイトにて、全国どこの店舗の在庫でも、状況を確認することは可能だった。ところが最近はスマホにアプリを入れなければ、在庫検索ができない。携帯嫌いの私にとって、こんな事でアプリを強要してくる企業など下の下でしかない。
TSUTAYAの母体は、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)という。2000年代半ば、〈すみや〉〈新星堂〉など歴史のあるドメスティックなレコード・CDショップのみならず〈ヴァージン・メガストア・ジャパン〉まで我が物顔に吸収していった頃から、なんとなく私はCCCに対して嫌悪感を持つようになっていた。多くの日本人がCCCの本性を知るに至ったきっかけは、彼らが2013年以降、各地の公共図書館へ触手を伸ばし始め、運営受託の名のもとに図書館を次々と内部破壊していった事による。
この事業に、最初から強く異議を唱えていた人は少なくなかった。案の定、CCCを指定管理者にした結果、最も大切に保存すべき郷土史資料などは真っ先に廃棄処分され、施設本来のあり方はそっちのけ、オシャレ空間最優先のTSUTAYA図書館にされてしまっている。そればかりかCCCの傘下にあるネットオフ(これも元はブックオフの暖簾分けみたいな会社だった)によって、ダブついた不良在庫のゴミ本を押し付けられ、惨憺たる状態。佐賀の武雄市図書館や神奈川の海老名市立図書館は、今どうなっているのだろう?「地方自治体の人間がアホすぎるから」と言ってしまえば確かにそうなのだけど、綺麗ごとを並べて擦り寄ってくるCCCこそ、諸悪の根源じゃないのか?
♼ かつてのTSUTAYAといえば誰だか知らない女性シンガーの歌う、既存のヒット曲のボサノバ風カバーを店内フロアに流し、オーガニックさをアピールする程度の雰囲気作りだった。それがCD・DVDレンタルの衰退を見るや否や、カフェのスペースをこれでもかと拡張したり、書店とはまるで関係の無いものばかり売っている。書店/図書館に関わらず、うわべだけコージーに見えても中身は空っぽのTSUTAYA戦略を「おしゃれ~」とか「斬新~」とか喜ぶ田舎者がいたりするから、余計に彼らは図に乗ってくる。