公共図書館の相場に比べたら白黒コピー1枚ぶんの複写代は40円と高いものの、 もう、そんな贅沢は言ってられない。先方が発送してくれるまで一ヶ月ぐらい待たされたが ついに江戸川乱歩/横溝正史「女妖」新聞連載時のコピーを入手する事ができた。 久留米大学御井図書館の担当者さん、アリガトウゴザイマシタ。
🐌 これで春陽文庫とのテキスト比較作業に入れると思いきや、 実は久留米大学に行きつく前から薄々判明してはいたのだが、 どこの図書館に所蔵している『九州日報』マイクロフィルム(或いはDVD)でも欠号が二回、 テキスト1/3欠落した号が二回、同じくテキスト部分左端一行が欠落した号も二回あるらしい。 その計六回分のテキストもできることなら調達しておきたいし、 ここに至ってようやく国会図書館を使ってみる気持ちになった。 アカウントを作って六回分の『九州日報』をバッチリ複写してもらえるかどうか、返事を待つ。 北海道立図書館のように自分とこの複写依頼を盥回しする不届き者がいるから、 回答だけでも国会図書館は時間がかかるんだろうなあ、と予想しながら。
八日後返信が来た。結局、国会図書館の所蔵する『九州日報』も同じ日付に欠号/欠損がある のは一緒らしくて、問題の六回分を複写してもらう事は叶わなかった。 別に本を制作するつもりで底本に使う資料を準備している訳ではないから、 わずかに揃わない部分があっても、それほど支障は無いんだけど、 初めて国会図書館を使ってみて、細かい手順にやっぱり融通が利かないし、 申請を受け付けない場合にはわざわざ〝謝絶〟なんて仰々しい言葉を使ってるぐらいだから、 最初から〝断ること前提〟で郵送複写の業務をやってるんだなあ、という印象を受けた。 なによりも、この条件(☟)を見よ。
国会図書館HPの複写サービスに関する説明を読むと、
● マイクロフィルムをA3サイズ白黒で複写するなら一枚あたり単価が110円(!) ● 新聞小説複写の場合一回ぶんを一件として申請せよ ● 一度に申請できる上限は30件(新聞小説だったら30回分)
だそうである。国会図書館がいつからこのルールを施行しているのか知りえないが、 これだったら今まで一切利用してこなくて大正解、としみじみ胸を撫で下ろした事だった。
🐌 古い小説を掘り起こし新刊で出すとなれば大概、国会図書館に御百度踏むのを強いられる。 それは好きでなければとてもやってられない、辛気臭い作業だ。 世の中には探偵小説の書誌を調べるのが趣味だとおっしゃる御仁もいるけれども、 何年も前から各地の図書館が所蔵している新聞の調査を続けてきたその手の人達は、 私がここ数日書き連ねてきたコロナ下における図書館の現状に、どう対処しているのだろう?
遠くの県まで出かけるとなれば労力も金もかかるし、ちょっとした旅になってしまうが、 本来なら、文献の複写というのは郵送ではなく自らその図書館に出向くのが理想なのよ。 著作権の範囲なら小うるさい複写制限など気にせずコピーできるし、目当てとする文献の中に 思わぬ発見があったりもするし、なまじ郵送依頼で頼むと稀に複写漏れがあったりするんでね。 でも殆どの人はそこまで自由に動きがとれないから郵送複写サービスを使わざるをえない。
🐌 四回にわたって、図書館を利用した新聞の郵送複写が随分やりにくくなった話をしてきた。 世間を見渡すと、民営の日本郵便を例にとってもサービスの低下は悪くなる一方だし、 全国の図書館というのは所詮楽する事しか考えていない公務員が確固たる指針もなく職員の首のすげ替えを繰り返しながら運営しているのだから、コロナによる閉塞があろうとなかろうと、 郵送複写サービスみたいな業務を嫌がって受け付けなくなる事は十分ありえるのかもしれない。
各県の公共図書館に設置してあるマイクロフィルムリーダーや通常のコピー機の数は限られて もいるし、昨今のように図書館がクローズされ郵送複写依頼が増えると対応が難しくなるのは 容易に想像できる。とはいえ、複写に使うキカイの数は限られてたって、 図書館をクローズしているんだったら普段来館者の応対をしている職員は手が空くのだから、 その分リファレンス関係の業務に回せばいいんじゃないの? ていうか、 制限ルールを改訂しなけりゃならんほど郵送複写の依頼件数ってそんなに増加しているのか? 偽りの無いエビデンスを示してくれなくちゃ、とても信じられないな。
それに、半年分の新聞小説を複写するっていったら確かにすごく面倒臭そうに聞こえるけども 複写希望記事は何新聞の何年何月何日から何日まで、という情報を事前にわかってさえいれば あとは只コピーしてゆくだけだし、特別なスキルだとかアタマを使う必要は何も無い。 むしろ新聞名は特定しているが誰それの作家のこういう小説が載っているかどうか、 とりあえず調べてほしいというレファレンス等のほうが時間がかかって、ずっと大変だろ。
🐌 無能な役人が街の図書館を単なる無料貸本屋だと思っているのなら、 日本全国の図書館が次世代に残していかねばならないものは悉く消滅していってしまうし、 私のように探偵小説が好きな人間にとっても、その存在を知られず長い間眠ったままの新聞小説を気軽に掘り起こす作業さえ出来なくなったら由々しき問題である。 おとといの記事(②)にも書いたように、 私が遭遇した文献複写郵送サービスの縮小なんていうのは、 あくまでもコロナに起因する一時的なやむをえない処置であるべきで、 平気でそのまま続けていたり、あるいは文科省が更に酷いサービスの低下を進めようものなら、 それこそ許すべからざる悪政だ。
(銀) よく「コロナが蔓延して世の中は変わってしまった」なんてしたり顔で語って、 時代の変化(=悪化)を受け入れるべきなどとのたまっている頭の悪い奴がいますね。 そういう考えを彼らの頭の中だけで持つのは勝手だが、他人にまで押し付けるのは御免被る。
図書館の郵送複写サービス縮小をはじめ、レジ袋有料化、郵便配達業務の縮小、 ゆうちょ口座同士の送金なのにATMでも手数料をいちいち搾取するゆうちょ銀行etc・・・。 これらは一刻も早く一掃して、元の状態に戻さないとな。 ただでさえ顔がムズムズするのに年中マスクなんかしてられるか。