2023年6月13日火曜日

『火の鳥〈オリジナル版〉/04鳳凰編』手塚治虫

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復刊ドットコム
2020年11月発売



★★   〈オリジナル版〉を謳いつつ、その実態は言葉狩り本




  復刊ドットコムは2011年、「火の鳥」の初出誌連載ヴァージョンを【オリジナル版 復刻大全集】と銘打ってリリース。函入りハードカバー上製B5判(雑誌サイズ)全14巻。一冊あたりの価格は巻によって異なるが、だいたい7,700円~10,450円。この函入り仕様は今でもまだ市場に残っている巻がある。




全ての巻をまだ売り切っていないのに、やっぱり「火の鳥」はマネーになるのだろう。2020年になるとプライスダウンしたソフトカバーA5判12巻が再び発売される。私なんかは「火の鳥」に対してそこまで思い入れも無いし、一冊が7,000円以上もする昨今の豪華本コミックス商法には疑念を抱いているので、様子見するつもりで『04 鳳凰編』のソフトカバー版を入手してみた。もともと「鳳凰編」2011年版の函のデザインも好ましいと思ってなくて、ソフトカバー版の落ち着いたカバーデザインのほうがずっと良かったから。(2020年ソフトカバー版『04 鳳凰編』の価格は4,290円)


2011年の函入りハードカバー『火の鳥(オリジナル版)/04 鳳凰編』


先程も述べたように、この復刊ドットコム版は雑誌『COM』に連載された時の初出ヴァージョンを初めて単行本化したものゆえ、通常の単行本では見ることのできない各回の扉絵が元通り収められているし、コミックス収録にあたって手塚治虫が加筆・修正するその前の構成が楽しめる。「火の鳥」は妹が昔持っていた90年代の角川文庫版以来の再読だったのもあって、異なるヴァージョンで読めるのは嬉しいものだ。

 

 


 「鳳凰編」は「火の鳥」全エピソード中、間違いなく三本の指に入る傑作だし、どなたでも一度ぐらいはお読みになられた経験があると思うが、生後まもなく父親の不慮の事故によって、片目片腕になってしまった我王の物語である。私は今『COM』を手元に持っていないけれども、我王について連載時には〝カタワ(片輪)〟〝めっかち〟と形容していたそうだ。ところがこの復刊ドットコム版は初出に忠実な【オリジナル版】を謳っておきながら、〝カタワ(片輪)〟〝めっかち〟という言葉がどこにも見つからない。結局、角川書店や講談社など大手出版社の本と何ら変わりない言葉狩りが横行している。〝こじき〟〝気がくるった〟はOKで〝キチガイ〟〝白痴(こけ)〟はダメだという釈然としない倫理観。

 

 

復刊ドットコムって復刻・復刊が主力の会社だろ?「火の鳥」にやらかした要らざる語句改変が果たして手塚プロダクションのルーティーンなのか、それとも復刊ドットコムの方針なのか私には解らないが、どっちにしろこんな高すぎる価格を設定しといて言葉狩りが当り前ならば、復刊ドットコムはまことに信用ならない会社だ。他の復刊ドットコムの本を積極的に買う気なんて、これっぽっちも湧かないけれど、もし機会があったらチェックしてみないとな。

 

 

 

(銀) 私のBlogで取り上げてきたマンガは、内容的にはどれも皆好きなものばかりなんだが、ポリコレ自主規制のもとで再発されたコミックスは減点せざるをえないのがツライ、というか腹が立つ。復刊ドットコムの『火の鳥』なんて【オリジナル版】と言っているのに語句改変って、詐欺じゃん?こんな風に昭和のマンガは探偵小説とは比べものにならないほど言葉狩りの標的にされ、正しい形でリイシューされる機会は殆どない。「発売当時のまま!」とか、「オリジナルどおり!」とか、嘘っぱちの売り文句に騙されてはいけない。

 

 

まったくテキスト校閲をしていない善渡爾宗衛のゴミ本を買う奴らもそうだが、こういう欠陥品を考えなしにホイホイ買う莫迦が多いのも諸悪の根源のひとつ。LGBTなんてやる必要のない法案など全部チャラにして、ポリコレ自主規制病から日本の創作物を守ってくれるような正常な感覚の政治家が誰かひとりぐらいいないのか。




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