当Blogでは2021年7月23日から10月3日の記事にて、戦前の地方新聞に連載された長篇探偵小説 「女妖」(江戸川乱歩/横溝正史)のテキスト検証という作業を行った。それを行う為には、 小説が掲載されている昔の新聞のコピーを、図書館へ複写依頼して入手しなければならない。 そのサービスを利用するのは久しぶり、最後に図書館や文学館へ文献複写の郵送依頼をしたのはもう何年前の話だったっけ、などと悠長な気分でいたら今回図らずも、 「Blogのネタとして絶対書いておかなければならん」と怒りが湧くような状況に出くわしたので 『クローズアップ現代』ばりに世間に問題提起してやろうと思い立ち、本の話は一時休止して、 全国の図書館に噛付いてみたい。
これから書く事は、普段図書館の郵送複写サービスをしょっちゅう利用している人にとっては、 何という事もない、わかりきった事実かもしれないが、 このサービスをまだ一度も使った事がない人や、私のようにここ数年利用していなかったせいで 以前とは状況が変化、いや悪化している事にまだお気づきでない方々に図書館の現状が伝われば幸いに思う。
♰ 先に挙げた「女妖」という作品を書籍化したのが春陽文庫『覆面の佳人 或は「女妖」 』で その底本には「覆面の佳人」のタイトルで連載された初出新聞『北海タイムス』のテキストが 用いられているようだったから、春陽文庫と比較するテキストには『北海タイムス』以外の新聞を使ってみたくて『九州日報』のコピーを入手する事に決めた。
古雑誌の郵送複写依頼に関しては某文学館の担当者が実に塩対応だったとさっき書いたけれども 新聞小説の郵送複写依頼に関しては運が良かったのか、 今迄どこの図書館も普通にトラブルの無い対応をしてくれた記憶しかない。 (いつも手順はいちいちメンドーだなぁとは思うが) 複写依頼先で最もボーダイな所蔵を持つ機関といえば当然国会図書館になるのだが、 あそこは日本全国かなり多くの人が複写依頼をしていそうで、 私は一度も利用した事が無い。ていうか、なんとなく避けていたかも。 雑誌と違って、新聞だったら発行していたご当地の図書館に申請するのが好ましく、 そのやり方を続けてきた。
♰ 『九州日報』は福岡の新聞だ。この新聞を複写依頼できる所蔵機関をネット検索してみたら 過去にも利用した事のある福岡県立図書館に所蔵があったから、こちらへ依頼申請してみる。 そしたら福岡県立図書館の「ふくおか資料室」というセクションを担当しているらしい K という 男性から送られてきた返信メールを見て私は目を疑った。その文面の肝心な部分をご覧頂こう。 下線は私によるもの。
「当館では、郵送複写サービスの受付は、1回10件までとなっております。 この10件というのは、今回の連載小説の場合、10日分ということになります。
流れといたしましては、まず受付後1週間以内に最初の10件分の見積書を作成し、 依頼者様が見積内容を確認後、代金と依頼書(見積書に記入項目が印刷されています)を当館に発送していただき、代金が到着したのち、こちらから発送するという形になります。 1回目の複写物の発送が完了したのち、 2回目のご依頼が上述と同じ流れで始まることになります。 3回目以降も同様です。」
はあ? 1回の依頼で連載小説の場合は10日分? 2016年の秋に福岡県立図書館へ戦前の『福岡日日新聞』に半年間連載されたある長篇小説の郵送複写をお願いした時には、そんなおかしな制限なかったぞ。 なんで、たった10日分(=10回分)しか受けてくれなくなったのか?
すぐさま私は「五年前、貴館に同じような新聞連載小説半年分の郵送複写をにお願いした時は、 郷土資料課のTさんという方が一度の申請で何の問題もなく全回分複写して下さいましたが、 何故このような制限をなさるのでしょうか?」と質問メールを発射した。 しかしその「ふくおか資料室」のKという担当者は納得のいく説明をするつもりがさらさら無く 「当館までお越し頂ければ・・・」などと再びメールに書いてよこしてきた。 アホか、サクッとそっちに行けるようだったらとっくに行っとるわい。 (特に、この申請をした時はコロナによる全国の規制がまっさかりだった)。 福岡まで行ってられないから、こうしてお願いしてるのではないか。
(銀) 全部で180回近くもある長篇を、申請18回にも分けて郵送複写依頼していられるか。 手間もそうだけど、どんだけ送料がムダになると思ってんだ? ②へつづく。