2021年10月20日水曜日

図書館は郵送複写サービスがそんなにもイヤなのか?②

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熊本県立図書館




◆ 公共図書館の郵送複写サービス大幅制限は
        コロナ騒ぎのどさくさに紛れて行われていた




 それまで各地の公共図書館が提供する文献郵送複写サービスを利用してきて、「いま混んでいるから」等の理由ごときで複写件数を制限された事なんて一度もなかったのに、以前利用させてもらった福岡県立図書館に今回また郵送複写の申請をしたら、1回の申請につき10件(新聞連載小説の場合ならば10日分)しか受けない」と云われたため、コピーを入手するには他をあたらざるをえなくなったところから、前回の続きを始めよう。

この時点ではまだ、こんなサービスの制限をやっているのは福岡ぐらいだろうと軽く考えていたが、そうではない事がだんだんわかってきた。




一枚あたりの文献複写料金は、やっぱり公共図書館のほうが安い。
それを考えると近年、小栗虫太郎「亜細亜の旗」が『九州新聞』、横溝正史「愛馬召さるゝ日=(雪割草)」が『九州日日新聞』、いずれも現在の『熊本日日新聞』の前身たる戦前二紙に掲載されていた事実が明らかになっていたし、もしかして昭和45年あたりで熊本の新聞のどこかに「女妖」が掲載されているかもしれず、『九州日報』は所蔵されていないものの、試しに熊本県立図書館へも問い合わせてみた。

 

 

 

メールが返ってきて「熊本の戦前の新聞にどんな小説が連載されていたか、といった調査はしておらず昔の新聞記事のデータ管理もしてないから、内部でも検索のしようがない」との回答が。そっかあ、福岡の場合だと戦前の福岡で発行されていた新聞にどんな小説が連載されていたか、某ローカル資料にてリスト化されていたから、あるいは熊本も・・・と期待したんだが、玉砕。

と思ってたら、二週間経って再び熊本県立図書館のリファレンス係からメールが届いた。
わざわざマイクロフィルムを見て、1929(昭4)年9月から翌1930(昭5)年12月までの『九州日日新聞』及び『九州新聞』に連載されている小説を調べて下さったらしく、一覧表が添付してあった。アリガトウゴザイマス。

これはこれで嬉しいけれども、残念ながらその一年ちょっとの間に、私の求めている「女妖」ばかりか自分的に興味を引く小説は掲載されていなかった。むう~。(唯一、『九州新聞』に連載された畑耕一「悪魔暦」だけが少し気になるが、『光の序曲』と同一作品だろうか?)

 

 

 

ちょいと話が横道に逸れるけれども、
何年も前に、戦前のどの新聞に何という小説が連載されているか調べたくて利用した一冊の書籍があった。国書刊行会が出している『新聞小説史年表』というのがそれで、昭和62年に刊行され平成8年には新装版が出ている。良い本なんだけど惜しい事に、調査の対象とされているのはホンのごく一部であり、その本に載っていない多くの新聞小説がいまだに日の目を見ないままでいるのだ。

全国の図書館が自分達の属する都道府県の新聞小説を(大正末から昭和30年代まででいいから)すべて洗い出して調査したデータを持ち寄り、『新聞小説史年表』のヴァージョン・アップした決定版みたいな本が完成したなら私は大喜びで買うのだが、日本全国の図書館がそんな前向きな作業をするなんてまずありえない。所詮、夢物語でしかないのである。

 

 

 

♰ 本題に戻ろう。
複写依頼を申請しなかったとはいえHPを見ると、なんと熊本県立図書館までもが郵送複写は「一回の申込は10件以内かつ合計枚数100枚以内とする」と謳っているではないか。てことは、どの公共図書館も横一列で郵送複写サービスを縮小させているのか?

熊本県立図書館の人に、この件についてさりげなく訊いてみるも、ゴニョゴニョと要領をえず、本当のところがわからない。県立図書館の後ろ盾といったら県庁だ。こうなったら真実を知るためにも、一体どういう理由で図書館がこんな制限を設けたのか福岡/熊本両方の県庁へ電凸して訊いてみるしかない。どこのセクションに訊けばいいのかわからなかったが、どっちの県庁も電話の対応は至極丁寧、「大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません。よく調べて御返事差し上げます。」と言うんで、どんな弁解が返ってくるかお待ち申し上げていましたよ。

 

 

 

すると熊本県庁はNo Ansewer。都合が悪いからシカトしたのか。
一方、福岡県庁からは十日ほど過ぎてメールに添付された回答文書が届いた。
これも参考までに必要な部分だけ、手を加えないままでお目にかけよう。
メールの発信者は福岡県教育庁社会教育課だが、回答してきたのは福岡県立図書館。



いつも福岡県立図書館をご利用いただきありがとうございます。
複写サービスについてお問い合わせいただきました件について、回答させていただきます。



館の所蔵資料については、県内外を問わず、多くの皆様からご利用いただいており、
文献の複写依頼についても、毎日多数のご依頼をお受けしております。
当館といたしましては、公共図書館として、利用者の皆様からのご依頼に対しては、
できるだけ速やかに、かつ、公平に対応すべきと考えております。



このため、お一人様のお申し込みが大量となる場合は、当館HPに記載しておりますように、
分割してお申し込みいただくようお願いしております。
現在、1回のお申し込みにつき10件を上限として対応させていただいておりますが、
このことについては、HP等で明確に表記しておらず、
利用者の皆様に対する周知が不十分であったことをお詫び申し上げます。
利用者の皆様にご理解いただけるよう、今後HP等の表記の見直しを行いたいと思います。


ご覧のとおり私は「何が原因でこのような制限にしてしまったのか?」と訊いているのに、責任回避なのか知らんけども、結局県庁は回答を図書館側へ丸投げしたらしく、わざわざ県庁へ電凸して質問した意味が全くない回答しか得られなかった。ついこの前まで普通に行われていたサービスを、何故ここまで縮小する意味があるのか?こっちはそれが知りたいんだけどね。






 これは明らかに、2020年初頭に始まったコロナ騒ぎを原因とする緊急事態宣言等のせいで、文献資料のコピーを直接図書館まで入手しに行けなくなった人々が郵送複写サービスへと流れた余波であることぐらい、いちいち先方に訊かなくとも承知している。パンデミック拡大防止の為に図書館のサービスがやむなく一時的に縮小されるのを、私はガミガミ責めているのではない。問題はそこじゃないのだ





熊本県立図書館のHPには、郵送複写サービスの規定を改訂した日付が2020615日だとハッキリ書いてある。この年、安倍晋三が最初の緊急事態宣言を発したのはたしか春先だった。福岡と熊本以外にどれだけの県立図書館がサービスを制限してしまったのかまでは未調査だし、コロナ前と比べてどれほど郵送複写サービス申請の数が増したのか私の知るところではないが、このサービスの制限を改訂するにしても、ずいぶん手回しが早過ぎるんじゃないのかね?

公務員という生き物は基本的に、住民のプラスになるようなことにはとかく対応が遅いくせに、こういう自分達が仕事をしないで済むように変えることについては、行動が異常に迅速過ぎるんじゃないの? って私は感じた訳よ。





これじゃまるで、環境保護が好きな嫁の趣味に感化された小泉進次郎のセクシー志向とやらで実施されたレジ袋有料化導入の影に隠れて、ビニールではない紙のレジ袋まであつかましく有料化しやがった奴らとやってる事は全く同じではないか。
そもそもパンデミックだからって、なんで図書館はルール改訂までしなくちゃならんのか?
事態が収まるまでの郵送複写サービス縮小という応急処置ではどうしていけないのか?
単に自分達にとって都合よくするためだけのテイのいい詭弁じゃん。






(銀)世の中には更にタチの悪い図書館というのがあって、それはまた次回。


(☜)へつづく。