城昌幸の短篇集は、同じ作品があっちの本にもこっちの本にも入っている重複収録が多い。平成以降にリリースされた書籍で、「若さま侍捕物手帖」などの時代小説やジュヴナイル『ハダカ島探検』を除くと彼の探偵小説関連本は次の三冊があり、そこに収められている作品を書き並べてみた。複数の本に亘り収録が重複しているものは色文字で示している。
第二部
「桃源」「影の路」「分身」「実在」
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リンク先の記事を踏まえ、本日の主題となる昭和22年の単行本『夢と秘密』に入っている作品も見て頂く。この色文字の短篇は、上記『怪奇製造人』もしくは『みすてりい』のどちらかに収録されている。
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城の探偵小説短篇も数に限りがあるとはいえ、こうしてみると無駄にダブリが多い。別に「一作たりとも重複させるな」とか、そんな無茶は言わないけれど、10月に創元推理文庫から発売されるという城昌幸・短篇集二冊(藤原編集室・編)の内容が、またも桃源社版『みすてりい』+α、牧神社版『のすたるじあ』+αと聞いて、どうにも私は首を傾げてしまう。
確かに桃源社版『みすてりい』は城自ら気に入った短篇をセレクトした、傑作選の名にふさわしい本だけど、あれはちくま文庫版『城昌幸集 みすてりい』にそっくりそのまま再録されていた訳でしょ?ただでさえ重複が多いのに、また桃源社版『みすてりい』をベースとした新刊を出すって、商売として上手いやり方とは思えないな。
上段の収録内容比較をよく見てもらいたいのだが、『夢と秘密』に入っている「最後の夢」なんかは、平成以降の本には一度もセレクトされていない。さらに『夢と秘密』と同じ昭和22年に刊行された単行本『美貌術師』(立誠社)所収の九短篇「美貌術師」「自殺倶楽部」「運命を搬ぶ者」「大いなる幻影」「妖しい戀」「夢の女」「影の運命」「嘘の眞實」「おまん様の家」に至っては、本日の記事にて紹介しているどの城昌幸の本にも入っていない。酷い出来で読むに値しないというならともかく、なぜ新刊で読めるようにならないのか理解に苦しむ。
こういうのって読む側の利益を無視した、編者間/出版社間での不毛な縄張り争いでもあるのかねえ。あるいは東京創元社が藤原編集室に「その作家の代表作をゼッタイ押さえておかなきゃ、昭和前期の日本探偵作家の本は出さしてやらないよ」とか言ってプレッシャー掛けているとか。いつもおんなじ作品ばかりでなく、色々なものを読めるようになったほうが、ユーザーは喜ぶと思うのだが。
(銀) いっそ『大坪砂男全集』みたいに、城昌幸の探偵小説短篇を全てコンプリートする本を企画したほうが良かったかも。多く見積もっても、文庫四冊分あれば十分網羅できるだろ。でも今、紙のコストが高くなっているから、きっと東京創元社のお偉いさんが「城昌幸ひとりに四冊も出せるか!」とガミガミ怒って却下するだろうけど。