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東光出版社 少年少女最新探偵長篇小説集3
1958年7月発売
★★★★★ 原子力スーパーテレビジョンの
秘密を狙う犯人は誰か?
本書を手に取ると、東光出版社によるこのジュブナイル・ミステリ・シリーズのタイトルは、
カバーの背が「少年少女最新探偵小説集」、
カバー表紙だと「少年少女最新探偵長篇小説集」、
本体の巻末広告では「少年少女・読物 新選探偵小説集」といった具合に一定しておらず、
当初の予定ではラインナップに大河内常平『影なき拳銃』が入っていたことがわかる。
結局、大河内の巻は発売されなかった。
先日渡辺啓助のジュブナイル集『黒い獣』(☜)を取り上げた際、茨城県東海村の原子力研究所を描いた短篇「姿なき訪問者」に注目したけれど、期せずして岡田鯱彦も(こちらは原子力スーパーテレビジョンといって荒唐無稽な発明ではあるが)〝原子力〟という言葉を子供達に意識させるような長篇「黒い太陽の秘密」を書いており、「姿なき訪問者」と同じ昭和32年、中学生向け雑誌に連載していた。
さすがに核の危うさを前面に打ち出している訳ではないものの、ジュブナイル・ミステリの楽しさを踏まえた内容に仕上がっているのが良い。〝黒い悪魔〟を名乗る怪人物は新発明のパテントを狙って丘博士の二人の愛娘を誘拐、設計図を引き渡すよう脅迫する。丘博士の周りには原子力スーパーテレビジョンの秘密を知りたがっている友人の大山博士もいたりして、一筋縄ではいかない。
〝黒い悪魔〟を向こうに回して戦う中学生・谷川俊彦/阿部まり子、そして彼らをサポートする探偵役は尾形幸彦!彼は大人ものばかりかジュブナイルにまで起用されているのだ。
この長篇、まず巻頭にて登場人物がズラリ紹介され、「この中に、犯人がいます」の一文あり。218ページでは改めて作者・岡田鯱彦から、「じぶんで犯人○○○○をあててみてください」と読者への挑戦が投げ掛けられている。作中での人間消失トリックも正攻法な謎の解明にページが割かれているのには好感が持てた。
(銀) まさに本作はテレビ時代の到来を象徴しているのかもしれない。岡田鯱彦ジュブナイルだと、本作以外にも長篇があるのかどうか私は知らない。存在が判明している彼のジュブナイル短篇にも、レギュラー・キャラクター尾形幸彦は登場しているのだろうか?
なにはともあれ「黒い太陽の秘密」に尾形幸彦が使われているのは、鯱彦がこの作品に力を入れて書いた証左のような気がする。
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