2023年10月24日火曜日

『あまとりあ風流派新書/代表作選集/第2集』

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あまとりあ社
1956年月発売



★★     大河内・楠田・朝山・九鬼の作品を収録




あまとりあ社がそれまで出した単行本から一作家につき一作品選び出して編んだアンソロジー。基本二段組なのに時々一段組のページが混じっているのは、既刊本の紙型をそのまま使っているからかもしれない。〈あまとりあ〉だからといってすべてエロ尽くしというほどでもなく、なんらかの形で♀がテーマになっている感じ。

 

 

「金と愛慾」村松駿吉/「延明院日記」加賀山直哉/「野天風呂の湯女たち」組坂松史

「痴情の果て」北園孝吉/「回春譜」上田広/「情欲の星座」原比露志

枇杷~ふづき~」武野藤介/「女間諜の肉体秘術」高野三郎/「音羽地獄」狭山温

「『十八大通』お笑い行狀記」平野威馬雄/「枇杷の種」山田順子/「鎌倉夫人」藤田秀彌

「女ばかりの『釣鐘くらぶ』」久木光/「女猿」坂本嘉江/「はだか天國」福田えーいち

「人妻娼婦」日夏由紀夫

 

 

本書で読める二十の短篇のうち、当Blog的に読んでおくべきなのは探偵作家が書いた次の四篇。

 

 

♨「桃色会社」大河内常平     『不思議な巷』に収録

平社員の瀬川晋三は突然社長に呼び出され適当な愛人を秘かに斡旋してくれないかと頼まれる。それに乗じて瀬川は社長の娘メイ子に近付き、彼女をものにしようとするが・・・大河内らしさを期待してはいけないスケベ話。

 

 

♨「硝子妻」楠田匡介     『人肉の詩集』に収録

最新硬質硝子の開発、そして峰田博士の一粒種・比佐子、その両方を手に入れるため罠に嵌めて殺したとばかり思っていた男が実は生きていた!もはや狂人と化した彼の最終目的とは?シリアスタッチな復讐劇だし本書の中では浮いて・・・もとい、唯一読み甲斐のある作品。一人の女性をめぐる恩讐だけでなく楠田匡介本人キャラ(?)や科学ネタとミックスさせているのが〈あまとりあ〉っぽくなくて良い。

 

 

♨「楽しい夏の想出」朝山蜻一     『白昼艶夢』に収録

夏の海岸でアルバイトしている青年は美しい摩耶夫人と知り合うが、奇行の目立つ夫人の陰にはもう一人の男の存在があった。どきついシーンが無いぶん、朝山蜻一の世界観を苦手な人でもトライしやすい。出版芸術社版『白昼艶夢』にも収録。

 

 

♨「まぼろし莊の女たち」九鬼紫郎     『魔女の閨』に収録

これもなかなか面白い。シチュエーションこそ全然違えど、途中までは松本清張「霧の旗」のような展開。怪奇作家・八木蘭次郎って木々高太郎を少し意識して書いてる?となると九鬼は江戸川乱歩に代表される本格探偵小説推進派に寄っているようにも受け取れるが、そんな風に邪推して読んでみるのも一興。




これら四篇の他、北園孝吉「痴情の果て」には地味ながら探偵小説色がある。逆に〈スパイ秘話〉と冠が付けられた高野三郎「女間諜の肉体秘術」はタイトルのわりにくだらない。





(銀) せっかくなら探偵作家の作品ばかり集めた〈あまとりあ〉アンソロジーを出してくれればよかったのに。でもそうなると古書価がガーンと上がっちゃうんだよな。この『あまとりあ風流派新書/代表作選集/第2集』はそれほど高い古書価じゃないけど、エロ中心だとしてももう少し読める作品がないとなァ。




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