2023年4月14日金曜日

乱歩研究のプロに事実確認ひとつ取ろうともしない立教大学のキョージュ

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おととい4月12日の『名張人外境ブログ2.0』。


「池袋雑筆についてお答えします」 


江戸川乱歩が随筆雑誌『三十日』の第二巻第一号に「池袋雑筆」というちょっとしたエッセイを寄稿していた。その存在は「江戸川乱歩執筆年譜」昭和24年度上にて抜かりなくチェックされているのだが、中相作によればこれは乱歩本人の書いたものではないそうで、「江戸川乱歩執筆年譜」には〝偽作〟の注記が見て取れる。

 

 

立教大学の江戸川乱歩記念大衆文化研究センターが時々発行している『センター通信』なる館報っぽい刊行物(以前このBlogでも15を紹介しましたね)、それの最近出来上がった第17号に研究センターの石川巧が【「ほんものが生きてゆけない世間」への憂い】と題した論文を書いているそうな。

その論文の中で「池袋雑筆」に言及しているらしく、『センター通信』第17号を見たと思しきどこぞの誰かが〝「池袋雑筆」を偽作と見做した根拠は何でしょうか?〟と中氏に訊ねてきた。で、中氏は即座にその根拠となる画像を提示。乱歩が生前自ら記した目録のコピーを中氏は所有しており「江戸川乱歩随筆評論の本にならないもの発表順目録」と書かれた箇所にハッキリ「池袋雑筆」は〝偽作〟と書かれていたので、そう判断したとの事である。ここまでが『名張人外境ブログ2.0』からの情報であります。

 

 

その後、私も『センター通信』第17号を入手。「池袋雑筆」の全文並びに石川巧による件の論文を確認した。石川の【「ほんものが生きてゆけない世間」への憂い】を読むと、「池袋雑筆」を取り上げるにあたりwebサイト『名張人外境』の「江戸川乱歩執筆年譜」を見て、中相作がこのエッセイを〝偽作〟としているのは一応確認したようだが、論文の中で石川はこんな事を書いている。

 

〝中相作がどのような根拠に基づいてそのように表記したのかは不詳だが、『三十日』という雑誌の信頼性および「池袋雑筆」の内容から類推する限り、この随筆を「偽作」とする理由は見出せない。〟

 

 

                    



さて、本日の記事を御覧になり「『センター通信』入手できないよ」という方はBlog画面左上の画像をクリック拡大し、『センター通信』第176ページに転載されている「池袋雑筆」の全文を読んでみて下さい。「池袋雑筆」に目を通して私が感じたのは、内容どうこうというよりも、そこで使われている言葉遣いへの違和感である。中相作には到底適わないものの、人並み以上に乱歩を読んできたつもりだし、ワタシの頭の中には〝乱歩らしい言葉遣い〟のイメージがある。しかし、「池袋雑筆」に見られる文章はどこかしら、そのイメージから逸脱しているような気がする。

 

 

例えばコチラ。旧仮名遣いになっている文字があるけれど、雑誌『三十日』の「池袋雑筆」にはこのとおり印刷されているのを石川巧が転載したのであろうから私のタイプ・ミスではないですよ。

 

〝みんな酔ひどれ天使を気取る兄ちゃんや姐ちゃんである。〟

〝おきのどくながら「馬鹿正直」という言葉が口え上るのだ。〟

 

酔ひどれ天使? 兄ちゃん姐ちゃん? おきのどくながら? 
小説の中に登場する人物のセリフならまだしも、乱歩が心のうちを随筆に落とし込む際、こんな言葉を選ぶかなあ?仮に、中相作による偽作注記を見る前に、私が「池袋雑筆」を読んでいたとしても、(感覚的な物言いで恐縮だけど)上記二行だけでなく全体を眺めても〝乱歩らしさ〟というよりは〝乱歩らしくなさ〟のほうが私は勝ってしまうけどねぇ。

 

 

                     



それ以上に気になる事がある。中相作は自身のwebサイトに必ず連絡先のメアドを載せている。世の中には相手の肩書きによって大きく態度を変える輩もいるが、常識的な節度を持って江戸川乱歩に関する質問をすれば(その質問内容にもよるが)誰に対しても明快な回答を返してくれるのが中相作という人だ。

そこまで中氏は手厚く質問を送信する窓口となるメアドまで載せているのに、なぜ石川巧は中氏へ確認するアクションさえ起こさず、〝この随筆を「偽作」とする理由は見出せない。〟などと書いたのだろう?この世界に疎い一般人ならいざ知らず、江戸川乱歩記念大衆文化研究センターを名乗っている集団の一員が、乱歩研究の大家に問い合わせてみる程度の事をやりもせず中氏の見立てを否定するのは、怠惰かつアンポンタンと云われても仕方がない。

 

 

石川巧については言いたい事がいろいろあるが、今日はそれをやっている暇が無い。興味のある方はこのBlog画面の右上のほうにある「このブログを検索」のところに石川巧と打って検索して頂ければ、彼について書いた過去の記事が読めます。

 

 

 

(銀) 本日の記事を書くため久しぶりに江戸川乱歩記念大衆文化研究センター公式HPを開いてみた。そこにはセンターの組織人員が掲載されていて、現体制は以下のようになっている。


 

センター長  

金子明雄    (文学部教授)

 

 

運営委員  

井川充雄    (社会学部教授)

石川巧     (文学部教授)

石橋正孝    (観光学部准教授)

尾崎名津子 (文学部准教授)

川崎賢子    (清華大学日本研究センター客員研究員)

菅谷寧   (総長室事務部長)

土居浩   (ものつくり大学教授)

野中健一  (文学部教授)

細井尚子  (異文化コミュニケーション学部教授)

水谷隆之    (文学部教授)

宮川健郎    (武蔵野大学名誉教授)

 

 

所員

後藤隆基     (助教)

 

 

あれ、石川巧って知らぬ間にセンター長から降ろされたのか。それにしても石川だけでなく石橋正孝って・・・。江戸川乱歩記念大衆文化研究センターのこの先が思いやられる。