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KL Studio Classics From『Anna May Wong Collection』 Blu-ray
2023年5月発売
★★ 原案はエドガー・ウォーレスの戯曲「On The Spot」
エドガー・ウォーレスといったら代表作「正義の四人」どうこう以前に、かなり多作なイメージがあるけれど、私の場合「黄水仙事件」をはじめ小説数冊しか読んでいなくて、何の知識も無いに等しい。英語圏wikipedia情報によればウォーレスは1931年、あの犯罪王アル・カポネを題材にした戯曲「On The Spot」を手掛け、数ある舞台作品の中でも一際成功を収めたという。本日取り上げる「Dangerous To Know」は「On The Spot」の映画化と言えるもので、内容的にはクライム+メロドラマなのだが、その感想は後述する。
スティーブン・レッカは市政と財界の実力者。 このギャングの親玉の犯罪をなんとしてでも立証すべく、ブランドン警部は懐柔目的の賄賂を撥ね付け、動向に目を光らせている。
アンナ・メイ・ウォン(Anna May Wong)の演じるマダム・ラン・インは他の誰よりレッカに近い存在だからか、自分のことをHostessと呼ばれようともさりげなく受け流す、そんな女だ。Hostessをストレートに訳すと女主人。体の関係こそ言及されないとはいえ愛人・情婦的な意味も含まれているだろうし、「私たち、友人だから」と言いクライマックスにラン・インが見せるレッカへの接し方には不思議と母性愛さえ滲む。
名家の令嬢マーガレット・ヴァン・ケースに目を付け自分の妻に迎えようとするレッカ。マーガレットには債権セールスマンの恋人フィリップ・イーストンがいて、さしもの犯罪王も意のままにならない。するとレッカは二人の与太者を雇い、銀行から21万8千ドルの債券を盗んだ犯人にフィリップを仕立て上げ、「あの男を救いたいのなら君は私の妻になるしか方法は無い」とマーガレットに迫る。制作された年代の違いもあるけど、エイキム・タミロフ演じるスティーブン・レッカは後年の映画『アンタッチャブル』でロバート・デ・ニーロが放っていた凶悪なオーラをあまり漂わせていないぶん、芸術や音楽を愛するソフトな面を持ち合わせている。
エドガー・ウォーレス原案ならミステリ映画として鑑賞できるのでは?と思われるかもしれないが、皮肉にもサスペンスで盛り上がる展開に一向なっておらず、観終わったあと印象に残るのはメランコリックな後味だけ。この映画に限ったことではなく、アンナ・メイ・ウォンの際立った存在感に対し、共演する俳優/脚本の質といったモロモロの要素が釣り合っていない。押さえるべきところを押さえていれば、私のような門外漢が観ても満足できる良質なメロドラマは作れる筈なのに。
画質は安心して観られるクオリティー。時間も70分と長くはない。犯罪とメロドラマの融合って1930年代には新しかったのかもしれないが、今観るとベタだね。日本で公開されていなさそうなマイナー映画を商品化してくれて、Blu-ray Box『Anna May Wong Collection』には感謝している。三枚組のうち「Dangerous To Know」が一番の売りみたいな扱いになっているものの、私はイマイチだった。なので今日は微笑むアンナの画像を多めにupしつつ終わりたい。
あ、スティーブン・レッカ役エイキム・タミロフの画像はupしなかったな。
本日の記事左上にあるジャケットにて一番大きく描かれているヒゲの男性がそれです。
(銀) 「On The Spot」は小説として日本で翻訳されていないばかりか、作品名さえ知られていないのでは?以前紹介した映画『King Kong』にしても小説化したのはエドガー・ウォーレス本人ではない。ウォーレス関連映画を記事にするのが二度目とはいえ、ラベル(=タグ)付ける必要無いよな・・・とも思ったけど、前回の『King Kong』と違って今回彼の名前を度々出している以上、やっぱりラベル(=タグ)は設定することにした。彼の作品を取り上げる機会、この先あるかなあ。
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