2024年6月2日日曜日

『あぶない刑事/港署全事件簿FILE3』

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VAP     LD-BOX
1995年7月発売



★★★★★   追いかけてヨコハマ




 たぶん、このBlogを一度も見たことの無い方がたまたま見つけてアクセスして下さっているのだろう。522日にupした『あぶない刑事インタビューズ「核心」』の記事の閲覧数が非常に多い。嬉しい気持ちは勿論だが、この反応は意外でもある。新作映画の怒濤のプロモーションによる瞬間風速現象とはいえ、「あぶない刑事」への関心がそんなに高まっているのか、エンタメ界隈をチェックする習慣の無い私にはいまいちピンとこない。1980年代のシンボルともいえる「あぶ刑事」が2024年にねえ・・・。

 

 

たくさんの方が『あぶない刑事インタビューズ「核心」』の記事を見て下さったので、御礼がてら(?)再び「あぶ刑事」ネタをupするが、今回紹介しているいにしえのLD-BOXは、今更わざわざ中古で探す必要もないアイテムだ。TVシリーズを観たいなら、それこそブルーレイBOXからデアゴスティーニが出しているお手頃価格のDVDコレクション(分売)まで様々流通しており、自分のニーズに合ったものを選ぶことができる。

 

 

レーザーディスクの時代、TV1stシリーズのLD-BOXは『あぶない刑事/港署全事件簿』FILE13の三セット、TV2ndシリーズは『もっとあぶない刑事/Yokohama Bay Box』Ⅰ~Ⅱの二セットが発売された。特典映像もブックレットも、そこまで持っておかなきゃならないものでもないし、これらはスルーして大丈夫。TV1stシリーズ全51話の中でやっぱり良いのは、好評につき放送が延長され脂の乗り切った後半。よってここでは、35話「錯覚」以降、「疑惑」「暴発」「独断」「迷走」「温情」「仰天」「恐怖」「脱線」「苦杯」「謹慎」「脱出」「報復」「無謀」「乱調」「狙撃」して最終回「悪夢」までを収録したFILE3を選んだ。


 

 

 

✈ Vシリーズ以外の「あぶ刑事」がつまらない理由のひとつに、ストーリーの中でタカとユージがいつも一緒にいすぎることが挙げられる。連ドラと違って一発勝負の映画では、主役の舘ひろしと柴田恭兵を常に見せていなければならない、そんな強迫観念がプロデューサーら制作陣にはあるのだろう。

でも、いくら「太陽にほえろ!」の前時代感を払拭するコンセプトであれ、結局「あぶ刑事」も刑事ドラマには変わりないのだし、「古畑任三郎」のように最小限の登場人物を動かして謎解きを見せるミステリとは根本から違う。本来この作品は(たとえ舘・柴田に比重を置くとしても)港署捜査課のメンバーが一体となって事件にあたる集団劇だったんじゃないか?言い換えるなら「古畑」と同様、いまいち映画には向いてないような。

 

 

TVシリーズではタカ(舘ひろし)とパパ(山西道広)のシーンは頻繁に見られる。ユージ(柴田恭兵)とトオル(仲村トオル)が組んで捜査に出ているエピソードも多い。トオルもしくは薫(浅野温子)が事件の中心になる回ばかりでなく、最初の頃は県警本部から派遣されている柴野(清水綋治)がセミ・レギュラーとして捜査課に加わってもいた。さすがに映画でそこまで枝葉を伸ばすのは無理だろうけど、内輪受けのギャグをセーブして捜査課のメンバーを上手く絡ませるぐらいのことは出来た筈。TV1stシリーズでは緊張感が一定にキープされているので、バックに流れる「Cops And Robbers」「Running Shot」「Bacon,Ham,And Scrambled Eggs」「Fugitive」といった一連の曲も映像に溶け込み、観る人の印象に強く残る。




(小林信彦によれば)クレージー・キャッツの映画「クレージー大作戦」について荻昌弘は、〝クレージー・キャッツの映画っていうのは、七人でやる必然性のない話が多いんですよ。その点で、うまく行っていると思いましたがね。〟と述べたそうだ。「あぶ刑事」もそれに近い問題を抱えている気がしてならない。映画を作るたびに捜査課のメンバー達はすっかり〝おフザケ〟一発芸要員にされてしまって、あれじゃ居ても居なくても一緒。TV1stシリーズとそれ以外のものとの埋められないギャップの要因はここにある。

 

 

脚本を担当してきた大川俊道や柏原寛司あたりは、私なんかに言われなくたって、この辺の問題はきっとわかっているに違いない。その証拠に、大川は「X」で〝「悪夢」の時の薫が一番良かった〟とつぶやいていたし、柏原が脚本ではなくオリジナルのノベルス本『あぶない刑事 1990』で近藤課長(中条静夫)定年退職間際の事件を執筆したのも、初期の「あぶ刑事」に回帰したい気持ちの表われとは言えまいか。すっかりチンドン屋みたいになってしまった薫とナカさん(ベンガル)を見せられるたび、ドン引きしてしまうのは私だけではないと思う。







(銀) 最新作『帰ってきた あぶない刑事』は、もう横浜で100%撮影できなくて、地方でのロケも多いんだってね。それって富良野で「北の国から」を撮れないようなものじゃん?TV1stシリーズが素晴らしいのは、いつの間にか失われてしまった港町ヨコハマの風景がたっぷり楽しめるから。あの頃、大黒埠頭もベイブリッジもランドマークタワーもまだ完成していないし、山下公園前のバーニーズ・ニューヨークは影も形も無かった。まさかBUND HOTELが壊されて、その跡地にドンキが立つとは・・・。





現在はどんな風に変貌したのか詳しく知らないが、「あぶ刑事」が始まった頃の横浜はオシャレで華やかなイメージがある反面、銀星会(初期「あぶ刑事」でヨコハマを拠点に活動していた暴力団)のような組織がいてもおかしくない一郭は確かに存在していた。シャブや拳銃の取引が行われていそうなうらぶれた酒場・フーゾク街、さらに倉庫街や米軍跡地なんかもあって、陽と陰のコントラストが魅力的な、「あぶ刑事」には不可欠な街だった。






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