2024年5月22日水曜日

『あぶない刑事インタビューズ「核心」』高鳥都

NEW !

立東舎
2024年5月発売



★★★★★   最初のTVシリーズ全51話は、今観ても面白い





 本日の隠れテーマ。
〝立東舎/リットーミュージックの出す本には、あなどれないものが多い〟
それはさておき、このところ映画『帰ってきた あぶない刑事』のプロモーションを目にする機会が多い。家の近所を歩いてたら、警察の防犯ポスターにまでタカとユージのツーショットが使われてるし、公開日5月24日の『オールナイトニッポンGOLD』には舘ひろしと柴田恭兵がフル出演するっていうけど、マジか?あの二人、七十代やぞ。

 

 

198610月から19879月までオンエアされた「あぶない刑事」の最初のTVシリーズだけは、LDBOX買って何度も観たぐらいだから、結構好きだったんだな~(未だBDに買い替えることもなく、LD所有のまま)。

でも後続の『あぶない刑事』(映画)→『またまたあぶない刑事』(映画)→『もっとあぶない刑事』(TV2ndシリーズ)→『もっともあぶない刑事』(映画)になると、〝シリアスさ〟〝サスペンス〟の邪魔にならない程度にやるべきだった〝おフザケ〟の部分が制御不能に陥り、絶妙なバランスでコンパクトにまとまっていたTV1stシリーズの良さはごっそり失われてしまう。私にとって「あぶ刑事」とは、毎週日曜夜9時に放送されていたドラマ全51話以上でも以下でもない。

 

 

『もっともあぶない刑事』のあと、ちゃんと観たのは1998年の『あぶない刑事フォーエヴァー』(TV+映画)だけか。どう足掻いたところでTV・1stシリーズの完成度を再現するのは不可能。ロングスパンな間隔を置き、その都度映画の新作が作られても「あ~、またやってるんだ」程度にしか思わない。いまさら「あぶ刑事」復活させてどうすんの?・・・・それが『あぶない刑事リターンズ』(映画)以降ずっと抱き続けてきた、偽らざる私の本音である。

ところが、何がきっかけで興味が再燃するか、わからないものだ。先月偶然見かけた新刊情報によると、舘ひろし/柴田恭兵ら出演者だけでなく、長きに亘って「あぶ刑事」を支えてきたスタッフの貴重な証言を集成した『あぶない刑事インタビューズ「核心」』という本が出るらしく、発売される前からネット上では「初期のあぶ刑事ファンこそ、これは絶対読むべき」みたいな期待感が漂っているではないか。ウーム・・・さすがに『帰ってきた あぶない刑事』を観る気にはなれんけど、この本はちょっと読んでみたい・・・。

 

 

♠ 版元の立東舎というかリットーミュージックは、2010年代に入って『ミック・カーン自伝』のような採算度外視の良い本をちょくちょく刊行してくれたり、最近では手塚治虫漫画の復刻もやっているので、チェックを怠ってはいけない出版社だ。また『あぶない刑事インタビューズ「核心」』の著者・高鳥都は1980年生まれ。TV・1stシリーズの頃はまだ幼い年齢だから、当時の雰囲気をどの程度把握しているのか微妙だったけれど、「必殺シリーズ」のマニアックなインタビュー本を立東舎か三冊出し、それらの評判は良いらしい。この出版社と著者の組み合わせでなかったら、本書を買ってみる気にはならなかったかもしれない。




♠ そんなこんなでTOWER RECORD ONLINEに予約注文しておいた本書が到着。結論から言うと、買ってよかった。スタッフ・サイドが全面協力していて、ここまで力の入った本はめったにお目にかかれないんじゃないの?あまりの面白さに一息入れる間も無く、むさぼるように一気に読み終えた。


 

再放送その他で幾度となく「あぶ刑事」を観てきた人であっても、セントラル・アーツをはじめ黒澤満/志熊研三/大川俊道といったスタッフ・クレジットに対し、何がしかの見覚えはおありだろうか?彼らの名前にビビッと反応する人でなければ、この本はディープ過ぎて咀嚼するのが少々大変かもしれない。それぐらい専門的で奥深い内容だと申し上げておく。

「あぶ刑事」立ち上げ時のスタッフにはハードボイルド・アクション時代の日活関係者が多い。それゆえ、彼らの証言を読んでいると「あぶ刑事」は日活アクションの最期の末裔だったことがよくわかる。つまりこれは「あぶ刑事」に対する検証であるのと同時に、今やその灯が消えようとしている日本産のアクション映画の検証でもあり、本書の内容を〝奥深い〟と表現したのは、そういった二重の側面を持ち合わせているからだ。






(銀) 世の中には批判する人もいるが、大川俊道が脚本を手掛けたTV・1stシリーズ第51話「悪夢」は、あれ以外には考えられない見事な最終回だと私は絶賛している。そ大川のX での最近の投稿が、本書ともリンクする興味深い内容で、X嫌いのくせに、ついついそちらも読みふけってしまった。

彼の脚本が「あぶ刑事」TV・1stシリーズにもたらしたものは、他のどの脚本家よりも大きい。大川俊道個人でも「あぶ刑事」の裏側を語り尽くした本を出してみたらどう?