杉山満丸によると、現在絶版になっている父・杉山龍丸の著作をもう一度世に出したいそうなのだが、出版社へ話を持ち込んでも「一度出版されたものは売れる見込みが立たないので出版できない」などと云われ、断られているらしい。本当だろうか?だとしたらオファーを受けた出版社の見識を私は疑うね。『わが父・夢野久作』もそうだし、私が以前から欲し続けている『夢野久作の日記』のアップデート版にしても、再発に携わる人間が無能だったら出す意味がないどころか、かえって逆効果になる。盛林堂書房周辺・捕物出版/大陸書館・論創社に代表される、テキスト校正チェックさえろくにやろうともしない(カネだけが目当ての)連中は論外、たとえ有名でなくとも杉山家に愛情をもってじっくり本を作ってくれる版元に出会えるまで、再発は待ったほうがいい。
会報別冊『夢の久作のごとある』。こちらもnow on sale。
今、日本は中国という侵略者にじわじわ乗っ取られようとしている。そんな ❛今そこにある危機❜ を踏まえ、杉山茂丸が明治~大正の御代にやってきたことを、口先だけで誰かと繋がっていなければ何もできぬ現代人にでもわかりやすく学習させられる評論書というのも欲しい。本号を読むと、梅乃木彬夫という人物が『鬼滅の刃はドグラ・マグラ』と題された小説を近日刊行するそうで、「鬼滅の刃」と夢野久作がどう繋がるのか遺憾ながら全然わからないが、私はファンの妄想云々ではなくリアリスティックな文献を求める。十年目を過ぎると、様々な点でマンネリが目につく局面も出てくるとは思うが、杉山家の研究にどんな新しい変化が見られるのか楽しみだ。
(銀) 本号の内容が告知され、私が一番楽しみにしていた記事は沢田安史「国書刊行会『定本夢野久作全集』編纂に関わって」だった。これも当Blog上にてさんざん述べたとおり、あの全集の編纂作業の裏側でいったい何が起きていたのかを知りたかったから。ところが、この記事は第9回研究大会の中で沢田が発表する際に参加者へ配布したとおぼしきレジュメの転載でしかなく、沢田自身による文章は何もなくて落胆した。会場ではいろいろ突っ込んだ話がされたのかもしれないが。