2020年6月15日月曜日

『夢野久作の世界』西原和海(編)

2009年5月13日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿
   
沖積舎
1991年11月発売



★★★★   編者・西原和海の果てしなき拘り




二段組500頁にも及ぶ夢野久作に触れたエッセイを網羅する本書。編者は久作研究者といったらこの人、西原和海。これは1975年に平河出版社より上梓した『夢野久作の世界』の新装版。

 

 

第1部「同時代からの証言」は久作生前とその急死まで。
江戸川乱歩・森下雨村・小酒井不木・平林初之輔・甲賀三郎・延原謙・水谷準・大下宇陀児・九鬼紫郎・三上於菟吉・竹中英太郎、その他大勢。更に近親者である紫村一重・石井舜耳・青柳喜兵衛、そして久作夫人である杉山クラが名を連ねる。
 

 

第2部「六十年代における再評価」は鶴見俊輔・横溝正史・山田風太郎・中島河太郎らの寄稿。
第3部「新たなる視座からの接近」は澁澤龍彦・唐十郎・由良君美・竹中労らの寄稿。

 

 

久作長男・杉山龍丸の夢野一族論にはかなり頁を割いている。探偵小説の視点から見るとやはり前半が面白い。平岡正明の熱弁は相変わらず鬱陶しいし狩々博士の論述は難解。久作を語る団塊世代はどうも問題提起というかアカデミック調になってしまうのが私には少し疲れる。

 

 

それでも、これだけの執筆を纏めた編者の力はお見事。なぜ横溝正史にはこういう充実した本がまるでないのか?浜田知明も少しは西原和海を見習って欲しいものだ。 

 

 

 

 

(銀) 著作を除く夢野久作関連書の中では、今でもNo.1の座を明け渡していない必携の一冊。浜田知明というのは本業が校正者、一応世間では横溝正史研究の筆頭とされている人物。横溝正史の人と作品を研究する書物など期待しても無駄なのだという諦観については、これから当blogの中でおいおい記していく。