NEW !
Universal Pictures Blu-ray
2019年3月発売
★★★★ 二人の娼婦
Anna
May Wong(アンナ・メイ・ウォン)の出演した映画で一般的に最も知名度の高いものと言ったらこれか。配給は米パラマウント。
今「Shanghai Express」をブルーレイで観ようとしても、
リージョン A の北米盤は単体で発売されておらず、
マレーネ・ディートリッヒ/ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督コラボ作品をコンパイルした六枚組BOX『Dietrich & von Sternberg in Hollywood』を購わなければならない。
アンナ・メイ・ウォンの出ていない映画はさしあたって欲しくないし、
そうなると日本で普通に再生できるブルーレイの残った選択肢はスペイン盤のみ。
だから本盤のタイトルはスペイン語表記『El Expreso De Shanghai』なのである。
私の観たい昔の洋画はなぜだかリージョン B 地域のほうがBDのリリース数が多くて悩ましい。
【 仕 様 】
リージョン:A/B/C(日本のブルーレイ・プレーヤーで再生可能)
本編:82分
特典コンテンツ:なし
ブックレット:なし
【 字 幕 】
英語/スペイン語
(色はイエロー。字がほんのちょっと大きいのが気になると言えば気になる。)
【 画 質 】
100点中89点
【 ストーリー 】
中国女フイ・フェイ(アンナ・メイ・ウォン)は上海リリーの綽名を持つマデリン(マレーネ・ディートリッヒ)と顔見知りではないものの、どうやら二人は高級娼婦らしい。
本作におけるアンナのビリングは三番手。
1931年。中国は内戦の真っ只中。
マデリンとフイ・フェイは北平(北京)発・上海行きの特急列車に乗り込む。そこでマデリンは偶然、かつての恋人だった英国軍医ハーヴェイ(クライヴ・ブルック)と再会。互いにプライドをちらつかせつつ、心の中では相手のことを忘れられずにいた。途中の停車駅で中国政府が乗客の身元チェックを始め、反乱軍のスパイを拘束。ところが、マデリン達の一等客室に乗っている白人と中国人の混血男性ヘンリー・チャン(ワーナー・オーランド)は反乱軍のリーダー。逆に列車を乗っ取った彼らはハーヴェイを人質に取り、捕まった仲間の解放を要求する。
基本マデリンとハーヴェイのメロドラマなんで、ソフトフォーカスがかった上海リリーのアップに象徴される如く、ディートリッヒを印象的に撮ることが第一義の映画。サスペンスはまあそこそこに、美麗なモノトーン映像を楽しむべし。好色なヘンリー・チャンを演じるワーナー・オーランドは怪人フー・マンチューや警部チャーリー・チャン役で知られる俳優。スウェーデン系の米国人ながら外見がアジア人っぽく見えるため、こういう役柄は多い。また、ウィリアム・パウエルがファイロ・ヴァンス役を務めたヴァン・ダイン映画(☜)にヒース部長刑事役で出ていたユージン・ポーレットも賭け事好きの乗客サム・ソルトとして本作に出演している。
上海リリー = マデリン
(マレーネ・ディートリッヒ)
フイ・フェイ
(アンナ・メイ・ウォン)
ヘンリー・チャンがマデリンにフランス語の通訳をさせ、将校レナード少佐から聞き取りを行うシーンにおいて、映像が一瞬飛んでいるような箇所あり。なんでも90年代の半ばにVHS/LDを発売する際、deleteされたセリフがあるらしい。
(ポリティカル・コレクトネスの為の自主規制ではなさそうだけど)
それゆえ現在出回っているブルーレイはどれもDelete箇所ありヴァージョン。欧州PAL仕様のDVDはDelete箇所なしヴァージョンが採用されているとの説もあるが、はっきりした事はわからない。
旧い作品とはいえ、日本で「Shanghai Express〈上海特急〉」のブルーレイは一度もリリースされていない。私が海外盤でばかり洋画を観るのには理由がある。
▼ 海外では当り前にブルーレイが出ている作品でも、日本盤では一向に発売されない
▼ 日本盤ブルーレイが出ていても、海外盤に比べるとクオリティーが低い
(特典映像の貧弱さ/画質がそれほど良くない)
▼ 日本語字幕はあったほうが助かるけれど、日本語吹替版の収録が無駄に多過ぎる
(大ヒットしたものとか、メジャーな作品は特に顕著)
▼ 日本盤ブルーレイ /DVDのパッケージ・デザインはダサい
良質な映画ソフトを製作・販売するという意味でも、かなりの遅れを取っている日本。
アニメ一辺倒の国になってしまったからだろうか。
(銀) マレーネ・ディートリッヒ。当Blog的に言うと、『竹中英太郎作品譜/百怪、我ガ腸ニ入ル』(☜)の表紙に描かれていたドイツ出身の名女優。後年は歌手としても活動、竹中英太郎の息子・竹中労の招聘により来日公演を行った。
マデリン(ディートリッヒ)とフイ・フェイ(アンナ・メイ・ウォン)はいつも煙草を燻らせている。この二人が高級娼婦だと明確に語られる場面は無く、間接話法を用いてそう匂わせているだけ。彼女たちが四六時中、指に煙草を挟んでいるのもそんな演出の一つじゃないかな。セリフの説明ではなく、立ち振る舞いによって観る者に娼婦という日陰の職業を暗示させているのだと思う。でなきゃマデリンもフイ・フェイも重度のニコチン中毒だよ。あれじゃ。