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日本映画専門チャンネル
2019年12月放送
★★ いわゆるひとつのB級ミステリ映画
樹下太郎が雑誌『宝石』へ発表した小説「散歩する霊柩車」を、1964年に映画化したもの。
今でもソフト化はされていない様子。
さえないタクシー運転手の麻見(西村晃)は、女房のすぎ江(春川ますみ)が複数の男と不貞を重ねている事実を知り、彼女を絞殺。自殺したテイにサクっと偽装した上で、すぎ江の浮気相手の男達から金を巻き上げるべく行動を開始する。コンゲームとは違うけど、騙したかと思えば騙されていたり、ブラック・コメディ色を纏ったミステリ映画だ。
西村晃は昔から好きな役者で、本作のセコい小悪党のみならず、どんな悪役/怪人を演じても、クリストファー・リーばりの風貌と、あの美声に得難いものを感じるね。声優として彼をマモー(映画『ルパン三世~ルパンvs複製人間』)にキャスティングした人は具眼の士といえるし、逆に黄門様なんぞやらせた奴は万死に値する。
出番はそう多くないとはいえ、西村晃と並んで目を引くのは、
まだ中堅クラスで藻掻いていた時代の渥美清。
彼の演じる霊柩車運転手・毛利は最初と最後しか出てこないわりに抑えた演技が効いていて、
イヤ~な目付きと滲み出る胡散臭さが強烈な印象。
この頃の渥美は映画『拝啓天皇陛下様』でスマッシュ・ヒットを放ち、本作もトメ扱い(キャスト・クレジットで一番最後に表示される出演者のこと)なのだが、小林信彦の評伝『おかしな男 渥美清』の中で『散歩する霊柩車』は注目すべき作品扱いをされておらず、フジテレビのドラマでテキ屋の寅として大ブレイクのきっかけを掴むまで、あと四年待たなければならない。
麻見(西村晃)の女房・すぎ江は毛利(渥美清)よりずっと重要な役柄で、男好きのする肉感的なキャラクターの筈なんだが、どうも春川ますみだと胸焼けがして困る。
いやブラックとはいえ、笑わせる要素も必要なストーリーだけに、変に整った女優だとコメディな部分が引き出せなくなるのは解るけど、ひたすら田舎臭く、でっぷりしたこの人の感じは申し訳ないけど私にはムリだな~。そこそこ許せる範囲の女優がすぎ江の役を演じていたなら、映画自体の評価もグッと上がったんだが、たった一人の配役が私には受け付けなかった。春川ますみって結局、1970年代以降の『江戸を斬る』での口うるさい女将のイメージが付き纏ってしまうね。菊池俊輔の音楽は ◯。
(銀) 考えてみると、声だけの演技のマモー役と同じぐらい俳優・西村晃の魅力を引き出している映画やドラマって、どれぐらいあるのだろう?怪奇キャラなんか結構ノリノリでやっていたらしく、日本にもハマー・フィルム・プロダクションのような会社があったら、西村はその道でなお一層、成功を収めていたに違いない。