◘ 「密林の医師」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「異境冒険小説 陸鰐島の囚人」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「ジャガタラお春」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「ビルマの桜吹雪」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「冒険小説 チベットの雪豹」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「伝記小説 無装荷松前」(『陸鰐島の虜囚』)
◘ 「沙漠のヨシツネ」(『沙漠の地下廊』)
◘ 「砂底の聖火」(『沙漠の地下廊』)
本書に見られる「砂底の聖火」の〝砂〟という字だが、ちょっと調べてみたら初刊本の『沙漠の地下廊』も初出誌の『新青年』も〝沙〟のほうを使っているみたいなのに、なぜ「砂底の聖火」と表記を?本当に『新青年』では「砂底の聖火」になってるのか?
今回の盛林堂ミステリアス文庫版『密林の医師』は日下三蔵の蔵書整理に定期的に駆り出されている盛林堂書房店主・小野純一が、春陽堂文庫版『密林の医師』を日下が所有しているのを知り新刊として出そうと決めたという。誰に尋ねてもまず間違いなく春陽堂文庫版『密林の医師』はお目にかかるチャンスのない文庫本だが、前述したとおり、ここでしか読めない作品は無い。(とはいえ『陸鰐島の虜囚』も『沙漠の地下廊』も十分に稀少本だが)
『密林の医師』を復刊するというんで、てっきり日下の持っている春陽堂文庫を底本にしたのかと思ったら、あまりにもお宝だし触りすぎて破損するのが心配だからすべて初出誌のテキストで代用したとあって思わず吹き出してしまった。本のノドを開いていちいちコピーを取るのは危険行為ゆえ気持ちはわからんでもないけれど、どうせ古本ゴロ仲間なんだからその文庫を小野個人に貸してやって、コピーを取らず現物を見ながらテキスト入力させるってのを日下は認めてやらなかったのかね。春陽堂文庫版を底本にしないのならば「幻の一冊である春陽堂文庫版『密林の医師』をここに復刻」なんて大袈裟に銘打つ必要は無い。
(銀) せっかく読みにくい作品を新刊で出す良い行いをしていながら、日下三蔵や小野純一の言動の裏に透けて見えるのは、作品の内容ではなくレアだとか稀少とかその手の価値目線のみ。実は盛林堂店主の小野純一って、古本を売る立場なのにちょっとレアな本がヤフオクに出ていると気張ってせっせと落札しているって皆さんご存知でしたか?そんな暇があったら善渡爾宗衛の本の校正でも手伝ってやるか、ろくにテキスト入力もできぬ善渡爾にあこぎな同人出版なんて即刻やめるようきっぱり宣告してやればいいものを。