2023年4月30日日曜日

『りお・で・じゃねいろ巷夜譚(ちまたのよばなし)』渡邉文子

NEW !

東都我刊我書房  渡邉文子/北島文子/北島府未子一人三人撰集  善渡爾宗衛企畫)
2023年4月発売





  善渡爾宗衛に酷い本を出されてしまった作家の著作権継承者、
                  もしくはその親族の方々へ




本日の記事に取り上げている同人出版本『りお・で・じゃねいろ巷夜譚』の著者・渡邉文子氏の著作権継承者、またその親族にあたる方々へ急ぎお伝えしなければならない事があります。

戦前の雑誌『新青年』に探偵小説を発表なさっていた渡邉文子氏は横浜出身で、昭和4年に初めてブラジルの地を踏み、結婚して北島姓となられた昭和10年頃再度ブラジルへ渡られたとのこと。詳しい情報は持っていないのですが、二人のお子様がいらっしゃるも渡邉氏は昭和39年に逝去、それ以前に配偶者様が他界されていたとも聞きますので、果して御親族が日本国内にどのくらいおられるのか知る由もありません。二人のお子様の血を引く方々はきっと今でも南米にてご健在だろうと推測するのですが、今はインターネットで地球の裏側までも情報を届けることが可能であり、たとえどの地にいらっしゃろうとも渡邉文子氏の関係者のどなたかにどうしてもこの文章を読んで頂きたく、僭越ながら一筆したためました。

 

 

東京都内に善渡爾宗衛と名乗っているかなり頭のおかしくなった老人が存在し、いまや読むのが困難になったレアな探偵/幻想小説の類をこの数年にわたり、通常の出版社経由ではなく〈東都我刊我書房〉などという自主レーベルより刊行しております。本年4月に善渡爾宗衛は渡邉文子氏の遺した作品「葉巻の殺人」「夜開く花」「人間腸詰事件」「姦通を聴く男」「第二の復讐」「りお・で・じゃねいろ巷夜譚」「妖艶鬼ロウイス」「ダニューブの悲劇」「ほうたい」「金髪に気をつけろ」「運命のダグラス機」を一冊に集めた『りお・で・じゃねいろ巷夜譚』なる本の販売を始めました。

 

 

そもそも昭和39年の逝去、そしてブラジル移住。この二つの要因から渡邉氏の著作権は現在どうなっているのでしょう。既にパブリックドメインになっているのかどうか私には判断が付かないのですが、仮にまだパブリックドメインになってない場合、つまり渡邉氏の作品を刊行するには今でも著作権継承者の方の了承を得る必要があったとして、善渡爾宗衛はその方の許可を得て本を販売しているのでしょうか?彼のやる事を監視してきた私は次に述べる理由からして、とてもそうは思えずにいます。


 

 



この善渡爾宗衛、自分でテキストの入力作業をしているようですけれど、いくら素人の自主出版とはいえ、パソコンを用いて底本のとおりまともに文字を打つことができないらしく、彼の売り出した本のテキストは誤字脱字だらけな惨状。テキストを一度打ち終わったあと、ゆっくり時間をかけて再チェックしミスが無いよう確認すればいいものを、入力ミスだらけの状態で整ってもいないテキストのまま製本に回すだけでなく、通常の同人出版の数倍もする法外な価格を付けて売り捌いているのです。印刷を依頼した会社の名さえハッキリさせていません。

 

 

老眼でテキストを入力するのに目がよく見えず手元も集中力もおぼつかないのであれば、それが可能な他者に頼めば何も問題は無い筈。しかしこの善渡爾宗衛に至っては作品を復刊させて頂く作家への敬意と常識を欠片も持ち合わせていないばかりか、私がこのBlogで以前からずっと忠告しているにもかかわらず、作品のテキストを正しく入力するつもりなど髪の毛一本程度も無く、ひたすら自分の懐を肥やす欲望しか頭にないようです。

 

 




今回の『りお・で・じゃねいろ巷夜譚』もどんな酷いテキスト入力がされているか、お目にかけましょう。以下に記します本書の制作者・善渡爾宗衛の入力ミスですが、信じられないでしょうけれど230ページの本一冊全体では決してなく、冒頭に収録された約20ページ程度の短篇「葉巻の殺人」だけでこれほどの数の誤字脱字を発生させている事、更に(煩雑になるのでここに書くのを省きましたが)たった一短編のうち他にも正しいとは考えにくい送り仮名や句読点がある事をくれぐれも念押ししておきます。(下線は私=銀髪伯爵によるものです)


 

 

 5ページ8行目

選ましいブルドッグが一匹(✕)  →   勇ましいの間違いではないのか?

 

 5ページ10行目

今は自分主人公自ら把手をとっている(✕)  →   自分主人公自らって何???

 

 7ページ18行目

大試合をせんけれけりゃァならんのでね

→  現代でいうところの「~しなければ」を、明治の人は「~んければ」という言い方で表現していたという。そうだとしても渡邉文子氏が本当にこのとおりの言葉遣いで執筆したかどうか善渡爾の作った本である限り私には疑わしい。

 

 8ページ2行目

苦い顔を仕様としまいと(✕)  →   しようとしまいと

 

 9ページ3行目

辞してきなかった(✕)  →   きかなかった

 

 


 9ページ9行目

気持が悪いからこので下車(おり)りて(✕)  →   ここで下車(おり)て

 

 9ページ17行目

サンバロウ中央警察署(✕)  →   サンパウロ中央警察署

 

 10ページ11行目

その空地のをまわっていたのだ(✕)  →   その空地を


 11ページ18行目

だが多の人々は(✕)  →   多くの人々は

 

 13ページ1行目

マッチを取をおとす位は(✕)  →   取りおとす位は

 

 


 14ページ5行目

灰皿のへそっと置いた(✕)  →   灰皿の、の次には底/隅/端のどれかが来る筈である

 

 18ページ1行目

尾羽打ちした彼の様子(✕)  →   尾羽打ち枯らした


 18ページ6行目

ツい同情心を起して(✕)

→   もしカタカナ表記にするのなら作者はツイと書くのではないか?

 

 21ページ7行目

私の社の株主総合の日(✕)

→   株主総会のことを南米では株主総合と呼ぶとは思えない

 

 21ページ12行目

其葉が小父さんの手にあるのを見て

→   単体一本の葉巻を其葉と表現することもあるかもしれないが一応疑問を呈しておく

普通に考えるなら其の葉巻とすべき

 

 


 24ページ9行目

ある時一味を一網打尽に(✕)  →   文脈からして一味等(いちみら)ではないのか?

 

 24ページ18行目

私、無味がわるくて生きた心持もしないわ(✕) →  気味がわるくて


 25ページ8行目

悩みに耐かねた(✕) →  悩みに耐かねた

本書の制作者は底本の旧仮名遣いを現代仮名遣いへ全て変更して入力しているのに、それを忘却してしまっている

 

 



御覧頂いたとおり、よくあるケアレスミスで済まされるレベルではありません。渡邉氏の代表作「地獄に結ぶ恋」や「復讐の書」でたっぷり楽しませてもらった私からしたら、上記の例が渡邉氏の書き癖だったり当時の校正/校閲者のあやまちだとは考えられないのです。そして初めて私のこのBlogにアクセスして下さった方のために再度お見せしますが、善渡爾宗衛は過去にも鷲尾三郎氏や伊東鍈太郎氏の作品で目に余るテキスト入力ミスのまま本を制作し販売してきました。彼らの悪行は幾度となく記事にしていますが、とりあえず下段()のリンク先を参照下さい。この業界には、こんな酷いテキストの本が世に出されても、製作者に疑問を投げかけたり批判を向けるどころか却って逆に有難がったり、褒め上げるツイートを拡散して善渡爾らに加担する、いわば詐欺グループにおける〝受け子〟のような者も中には存在しているのですから。

 

「ミステリ同人出版のルフィとその子分は誰だ?」 


善渡爾宗衛の作る悪質な本は主に「盛林堂書房」をはじめ「PASSAGE(パサージュ)」「古書いろどり」「まんだらけ」で売られています(店名文字にリンクを張っておきました)。その中でも特に「盛林堂書房」と善渡爾はズブズブの関係にあります。既にこの世の人ではないと思ってナメているのか、ここまで作家を、そして読者を侮辱した本を作って売る人間を私は他に知りません。渡邉文子氏・鷲尾三郎氏・伊東鍈太郎氏、また善渡爾宗衛以外にも湘南探偵倶楽部と名乗る集団によって同様の酷い本を出された楠田匡介氏・大下宇陀児氏の関係者の方々にもこの現状を知って頂き、これらの連中に強く苦情を伝えるなり著作権の関係機関へ通報するなり、何らかの処置をするべきだと私は愚考するのです。





ちなみに『りお・で・じゃねいろ巷夜譚』の奥付はこう記載してあります。

著者       渡邉文子

企畫       善渡爾宗衛

カバー      ケンコングラフィック 小山力也

本文レイアウト  後藤浩久

発行日      二〇二三年 四月 二八日

発行       東都我刊我書房  東京都杉並区荻窪 一 - 三四 - 十六  安藤方



上記の住所が善渡爾宗衛と名乗っている人物の住まいなのかもしれません。なにかあればコチラもしくは「盛林堂書房」の店主に申し出るとよろしいかと思います。もっとも彼らは誰ひとりとして自分の非を認めるような人間ではないので、やはりそこはしかるべき筋へと通報するほうが望ましいかもしれません。いずれにせよ渡邉氏をはじめ作品を遺して下さった作家の人格を汚すような行為が一日も早く一掃されることを強く願ってやみません。