2023年3月5日日曜日

『恐ろしき馬鹿』高木彬光

NEW !

和同出版社 神津恭介探偵小説全集第七巻
1958年5月発売




★★★    ズバ抜けた短篇がひとつあれば・・・




昭和30年代初頭までに発表された名探偵神津恭介の登場作品ばかりを集めた「神津恭介探偵小説全集」全十巻。内訳はこのようになっている。緑文字は長・中篇白文字は非小説を示す。


 

 第一巻『刺青殺人事件』

刺青殺人事件あとがき(「初版の序」江戸川乱歩)

 


♦ 第二巻『時計塔の秘密』

時計塔の秘密/女の手/月世界の女/幽霊の顔/小指のない魔女/探偵作家になるまで

 


♦ 第三巻『魔弾の射手』

魔弾の射手

 


♦ 第四巻『白雪姫』

白雪姫/魔笛/ヴィナスの棺/出獄/天誅/妖婦の宿

 


♦ 第五巻『原子病患者』

輓歌/原子病患者/邪教の神/嘘つき娘

 


♦ 第六巻『影なき女』

影なき女/冥府の使者/眠れる美女/黄金の刃/薔薇の刺青/私は殺される/蛇性の女

 


♦ 第七巻『恐ろしき馬鹿』(本書)

恐ろしき馬鹿/紫の恐怖/これが法律だ/血ぬられた薔薇/加害妄想狂/罪なき罪人/鼠の贄

 


♦ 第八巻『白妖鬼

白妖鬼

 


♦ 第九巻『白魔の歌』

白魔の歌

(第七巻の全集告知ページには「破戒殺人事件」と記されている)

 


♦ 第十巻『呪縛の家』

呪縛の家

 

 

本日はこの全集の中から第七巻収録各短篇に簡単に触れてゆく。もっとも古いのが昭和255月発表した「鼠の贄」。それなりにトリックはあるのだがなんともグロい。これを読んだ後は牡蛎フライが美味しく食べられなくなる。翌6月に発表されたのが「恐ろしき馬鹿」。エイプリル・フールの茶番に巻き込まれた松下研三は殺人鬼の罠に嵌まる。同じく6月発表「血ぬられた薔薇」。名古屋へ立ち寄った神津恭介がタクシーに乗ろうとすると、命を狙われていると言って怯える女が同乗。その女が残していった鞄には血痕が付いており、中には短刀が。怪しい姉妹に絡まる動物園内の死体の謎とは?二の腕を斬られて負傷する恭介。

 

 

お次は昭和272月発表「紫の恐怖」。藤枝家の紫の間で、霊魂を吸い取られるかのように連続して死者が出る。それは幽霊の仕業なのか?ちょっとカーっぽいところもある短篇。どういうオチが付くか読んでみて下さいな。「罪なき罪人」は昭和284月の発表。ラストシーンで古井戸の中を覗くところだけよく覚えているけれど、それ以外は覚えてないんだよなあ。「加害妄想狂」は昭和296月作品。これはヘンテコなのでまだ記憶に残っている(出来が良いという意味じゃないけれど)。一人の死者に対し三人が「自分がやった」と申告。真相は如何に?

 

 

最後は「これが法律だ」。昭和298月発表。これもバカバカしいというか、無類の精力絶倫で女百人斬りを達成したいと思っている大木五郎という男が友人にいて、彼を囮に使って神津恭介は法の裁きを免れているある人物の正体を暴こうとする。ブラックジョークみたいな話。

 

 

どの短篇もこざっぱりし過ぎていてインパクト弱し。ひとつでも傑作が入っていれば本書の評価はグンと上がったのだが・・・。

 

 

 

(銀) いま改めて神津恭介ものをコンプリートした全集を出すのも面白いとは思うけれども、後年の作品はどうも読む気力が起きないレベルなのでね・・・。「成吉思汗の秘密」「邪馬台国の秘密」あたりの歴史ミステリはベストセラーになったし好きな人はいるのだろうが、私の趣味には合わなかった。もう一度読み返したら少しは印象変わるかな?