♥ 『週刊現代』と『週刊ポスト』は昔から女性のヌードや水着といったSEXYグラビアページにプラスしてアダルト・マンガを掲載するのがルーティーン。本日取り上げる松本零士『妖星伝』ハードカバー単行本全二巻も、元はと言えば85年に『週刊現代』のマンガ枠で連載されたもの。松本ほどの地位を確立した漫画家がいくら販売部数の多い成人向け週刊誌とはいえ、よくこんなエロオンリーの連載仕事を引き受けたもんだなあと私は当時不思議でならなかった。それぐらいストーリーはあってないような、濡れ場満載の内容なのである。
♥ 説明するまでもなく「妖星伝」は半村良の小説がオリジナル。鬼道衆とか外道皇帝も一応は出てくるんだけど、松本零士の「妖星伝」は忠実なコミカライズになっていない。半村良の原作をキッチリ漫画化するとなると300ページ弱の単行本二冊では到底足りないし、なんとなく設定だけ借りている感じ。お幾・天道尼・絵里、三人の美女がひたすら凌辱され最後は巨大な曼陀羅が空から降りてきて唐突に物語は終わる。そこまでが〈第一部〉とあるが〈第二部〉以降も書き継ぐつもりはあったのだろうか?
♥ とはいえ私には松本零士の描く、BWHともムダの無い肢体で長い髪が腰まで絡んだひんやりとした瞳の美女が大変好ましい。そんな美女がよがる場面をたっぷり楽しめるだけで満点とまではいかなくとも満足。そう、このマンガは伝奇もののフォーマットを借りた松本零士版春画だと思えばいいのだ。他の作品群とはかなり毛色が違うこの「妖星伝」を松本零士はノリノリで描いたのか、それとも仕事と割り切ってビジネスライクに描いたのかぜひとも知りたいところだが、彼はもうこの世にはいない。R.I.P.
(銀) 以前、松本零士ファンの人に〝「妖星伝」って松本零士ヒストリーの中でどういう位置付けされてるの?〟と訊いてみた事があるが、その人はモゴモゴと困った風に明確な返答ができない様子だった。やっぱ、誰に訊いてもそんなもんかな。