2022年8月17日水曜日

ドナルド・フェイゲンが十代だった頃、統一教会は既に米国へ侵入していた

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◢ かつての桜田淳子/山崎浩子/飯星景子らの騒ぎ以来しばらく耳にする機会もなかったが、78日における奈良市での安倍晋三暗殺以来、またしても日本国内で連日メディアの話題になっている旧統一教会こと世界平和統一家庭連合(いちいち面倒臭いので以下「統一教会」と記す)。決して小さくない規模の統一教会イベントへ安倍晋三と共にビデオメッセージを寄せていたのがいみじくも大富豪であり元・米大統領ドナルド・トランプだったというから、さあ大変。



◢ 『情報7days ニュースキャスター』を観ていたら、この手の統一教会の話題を紹介しつつ、安住紳一郎がピーター・ランダース(ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局長)に「アメリカにおいて統一教会はいったいどんな風に認識されているのか?」と質問を投げかけていた。ピーター・ランダースは「米国では統一教会信者はそれほど多くなくて、今まで特に社会問題化したことは無かった。広く存在するキリスト教の一種という感じで。」と返答。記憶で書いているので一字一句完璧に正しいとは言えないけれど、安住とランダースのやりとりはだいたいこんなものだったと思う。「あ、そういえば」と私はふと気付き書棚から一冊の本を取り出してページを捲った。 

 

 

◢ 何年か前に日本でも翻訳刊行されたドナルド・フェイゲンの著書『ヒップの極意』の中に、なにげに統一教会に関するワードがあったのを思い出したのだ。この本の前半はウォルター・ベッカーと二人でスティーリー・ダンとして成功を享受するまでの青年時代を断片的にReminisceしているちょっとしたエッセイ。そんな前半部分の「皮質・視床停止 - SFで育つ」という章に統一教会の大ボスの名前が。翻訳者は奥田祐士。

 

 

1968年になると(中略)ヴェトナム戦争は激化の一途をたどり、ケネディⅡ世とキングが暗殺され、右側も左側も恐怖と怒りのサイクルからぬけられなくなっていた。(中略)カウンターカルチャー、すなわちミュータント志望者たちの同盟関係は、ほとんどその場で神経衰弱を起こしたかに見え、それぞれに権威ある存在を仰ぐ、おべっか使いのグループに細分化した。マハリシ、ミハー・ババ、ラジニーシとそのオレンジ・ピープル、文鮮明(下線は私=銀髪伯爵による)、スーフィー、ジーザス・フリーク、ハレ・クリシュナ、そして仏教のさまざまな宗派 - 入会先はよりどりみどりだった。〟 

 


ウーム、この顔ぶれの中に文鮮明が紛れ込んでいるとは・・・。統一教会のWikipediaを見ると1965年に文鮮明一家と幹部たちはアメリカに宗教・政治的情宣活動の拠点を移し、世界宣教・経済活動を拡大し巨大な統一運動傘下の組織を創設した」とある。ドナルド・フェイゲンがニュージャージー州にて誕生したのが1948年。とするとフェイゲンが自分の国に統一教会が存在しているのを知ったのは十代の後半か。『ヒップの極意』を買って最初に読んだ時、世界の宗教に疎い私は(いくらフェイゲンが読書家だからとはいえ)ここに文鮮明の名が混じっているのはとても場違いでヘンに感じた(だから頭の中になんとなく記憶していたのだけど)。さらにこの本の後半、フェイゲンが旧友マイケル・マクドナルド/ボズ・スキャッグスと組んで「デュークス・オブ・セプテンバー」のツアーを続けていた時に書いた2012年の日記パートにもこんな一文があったりする。

 

 

〝何年か前からわたしは、サーヴィス業界の機械化された脳みそ不要のルーティーンは、カルト教団の所有するビジネス、たとえばある種の死んだ目をしたキリスト・ファシストか統一教会信者ムーニーズとルビあり/下線は私=銀髪伯爵による)かオレンジ・ピープルが運営するレストラン・チェーンが起源なのではないかと疑ってきた。〟

 

 

フェイゲンの皮肉たっぷりな文章の中に、こうポンポン統一教会に関するワードが出てくるぐらいだから、アメリカ社会でさえも韓国産のこの邪教が(我々日本人が考えている以上に)巧妙に忍び入っていたのがわかる。多様な宗教の良し悪しをここで検証するつもりはないが、ひとつ言っておきたいのは、上段にて引用したフェイゲンの文章に挙げられている宗教家や神秘主義者のうち、骨の髄までしゃぶりつくすが如く信者からカネを巻き上げる極悪非道な集団って統一教会だけじゃないんかい? という事。

ドナルド・フェイゲンは宗教に取り込まれるような人じゃないからよかったようなものの、ハービー・ハンコックなんてすっかり創価学会の広告塔にされてしまって・・・。他国と違い、ビビってカルト集団をゴリゴリ取り締まれない日本人はどこまでもフヌケだ。そもそも日本人を呪う韓国人が作り出した宗教が、一体どうやって日本人を幸福にするというのか。

 

 

 

 

(銀) 時節柄、統一教会ネタを中心にして記事を書いてみた。口の悪い皮肉やぼやき三昧の、この『ヒップの極意』という本は笑えて面白い。とは言ってもドナルド・フェイゲンが「TVベイビー」と称して度々クサしているような人々、例えば「自分はスティーリー・ダン通だ」と言いながら、その実『Aja』『Gaucho』『The Nightfly』にしか興味がないような人達にはちっとも楽しめない一冊であろう。



本書を読むまでもなく、フェイゲン氏はいかにも偏屈で性格が悪そうに世間から思われているが本書に書かれている内容は至って真っ当。特に私の好きな一節は本の帯にも流用されているこの部分。



〝たぶんわたしはいまだに青春時代のほうが、今現在やその間の半世紀よりも、リアルに感じられてしまう人種のひとりなのだろう。でもそのどこが悪い?現代の芸術、文学、音楽、映画、TV、凶悪な小型電話、金の話、不動産の話といったもろもろは大半がわたしを心底げんなりさせる。最初はとても魅力的に映ったインターネットも、TV以上にタチが悪いものへと変化しているように思えるが、これはもう様子を見るしかない。〟