2022年3月3日木曜日

『江戸川乱歩(作)/上野友夫(演出)【連続ラジオ小説】黄金仮面』

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NHKラジオ第一
1978年12月11日~12月29日放送




★★★★★  【連続ラジオ小説】にて広川太一郎が演じた
          懐かしい名探偵明智小五郎シリーズの第一作



NHKに入局し、ラジオ文芸部の演出家として多くのラジオ・ドラマを制作してきた川野京輔こと上野友夫。【連続ラジオ小説】の枠で彼は江戸川乱歩作品を毎年ドラマ化。                             本日取り上げる『黄金仮面』の前にもNHKラジオ第一では唐十郎・李麗仙を起用した『黒蜥蜴』を放送していたが、明智小五郎役=広川太一郎として定着するシリーズはここから始まった。                             放送時間帯はAMラジオの月曜~金曜215分から2120分。




乱歩作品を映像化したところで原作の素晴らしさの再現など望むべくもない。                  理由は簡単。乱歩の小説はあの語り口に類い稀なる魔力が込められているのに、                               TVドラマや映画だとその部分はすっかり失われてしまうのだから、面白くなる道理が無いのだ。              その点、上野友夫はこの【連続ラジオ小説】で乱歩の〝地の文〟での語りを極力活かし、               1928年生まれである中西龍アナウンサーの語りも探偵小説に〝うってつけ〟だったから、                               凡百の映像とは違って原作らしさと戦前の時代の雰囲気が楽しめた。

 

 

 

毎年12月に乱歩作品が【連続ラジオ小説】にて放送されるのをこのラジオ・ドラマで初めて認識した人が多かったのか、『黄金仮面』以前の音源を録音している人は非常に少ない気がする。                 私もまた『黄金仮面』については第十回と最終回しかカセット・テープに残せていない。            愚かなるNHKは私の観たい(聴きたい)番組に限ってどれもこれも保存していないものだから、                 当シリーズの商品化はおろか、NHKラジオで再放送される事もなく、                           そうなると余計に年を重ねるにつれ、もう一度全ての回を聴きたくてたまらなかった。                                ところがなんと探偵小説の神様(?)のお導きか、                                              こむこむさんという方がネット上に『黄金仮面』をupして下さっているのを発見!!                                                        あまりにも嬉しくて仕事を放り出し、懐かしのラジオ・ドラマに聴き入ってしまったのである。                                 (こむこむさんに感謝! 但し残念ながら第六回と第十回は欠落せしむ)

 

 

 

すべての回のサブタイトル、及び主要な声の出演者を記しておく。

第一回「金色の恐怖」

第二回「金色の守宮(ヤモリ)」

第三回「浴槽の美女」

第四回「ALの記号」

第五回「鎧武者」


 

第六回「(ネットにupされていないので不明)」

第七回「月光の怪異」

第八回「死体紛失事件」

第九回「赤き死の仮面」

第十回「ルパンは何処に」


 

第十一回「開けセザーム」

第十二回「アトリエの怪」

第十三回「白き巨人」

第十四回「大爆発」

最終回「勝負はいずれに」 

殆どのサブタイトルが原作の章題に準拠しているので、                                         おそらく第六回のサブタイトルは「恋の魔力」ではなかろうか。                                    そして第六回のストーリーに本来入るべき、小雪を殺し逃亡した賊を追う途中にて明智小五郎が仮病を使ってトンズラするくだりは省かれているものと想像する。

 

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◖ 声の出演 ◗


語り手          中西龍

 

明智小五郎          広川太一郎

浪越警部                      木下秀雄

 

鷲尾正俊侯爵           巌金四郎

美子姫                           川口京子(*)

小雪             友部光子

大鳥不二子          川口京子(*)

エベール               須永宏

 

黄金仮面           久松保夫

 

特別出演           山村正夫


                                                       (*)のかわぐち きょうこ氏は漢字表記がこれで正しいのか確かなデータが得られなかった。                  また声優名を記さなかった登場人物もいるが、数少ない人数で掛け持ちして演じていることが                    多いため、やむをえず省略している(例えば川村雲山や川村絹枝など)。読者諒せよ。

 

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数十年ぶりに聴いたもんだから、本物の山村正夫が解説のために数回出演しているのなんて               すっかり忘却していて驚いた。探偵作家同士の付き合いがあって川野京輔が頼んだのだろう。                   広川太一郎演じる明智シリーズの第一作だし、放送一週目の第一回から第五回までは、                 まだ演出サイドも声優サイドも型が定まってない感じがする。それと二点文句を言うとしたら            大鳥不二子が恋人に呼びかける時「アルセーヌ」「ルパン」「黄金仮面」と呼び名をコロコロ             変えるのはイヤだ。せめて「あなた」で統一してほしかった。そして、                        天理教の教師・木場(広川太一郎)は剽軽なイメージじゃないんだけどな。                                  『黄金仮面』は全15回ゆえに余計な肉付けも無く原作どおりの進行とはいえ、                      もうこの時から作品の書かれた時代に国内で流行していた歌(「すみれの花咲く頃」ほか)を 劇中で流している。




歌といえば、主題歌「黄金仮面」挿入歌「悪魔のように」を唄う三人組女性ユニットのギャル。                   黒木真由美・目黒ひとみ、そしてもう一人の石江理世は1978年に脱退しているそうだから                  この頃にはもう中世古明代にメンバー・チェンジしていたのか。                             いやそれよりもネット見て意外だったのはこの二曲のアレンジをのちに「ビーイング」設立者として有名になる長戸大幸が担当していたとは。人に歴史あり。                                           【連続ラジオ小説】の次なる乱歩作品『魔術師』以降、その主題歌・挿入歌はどれもムード歌謡  っぽいものばかりになってしまうが、「黄金仮面」はノリのあるポップ・チューン、「悪魔の ように」はしんみりしたバラードで、その点でも『黄金仮面』は華やかなイメージがあった。





(銀) ネット上にUPされた音源はいつまでもある訳じゃなく突然消されたりするので、興味のある方はなるべくお早めに聴かれたし。どうせだったらこのシリーズ、明智の登場する通俗長篇第一弾の「蜘蛛男」から始めてもらいたかったけど、明智の出番がかなり後のほうになるから 上野友夫は着手しなかったのか。惜しい。                                    それにしてもとうとう【連続ラジオ小説】を当Blogで取り上げたからには次作の『魔術師』も 記事にしないといかんだろうなあ。



放送期間中、聴取者に配布された番組主題歌・挿入歌の楽譜画像を見るには、                              下記にある ☟ 〝川野京輔〟ラベル(タグ)をクリックし、『猿神の呪い』の記事をご覧あれ。