2022年2月26日土曜日

『発掘!ラジオアーカイブス連続人形劇〝新八犬伝〟』

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NHKラジオ第一
2022年2月放送




★★★★★  視聴者に物語の基調を反芻させるため
           総集編は毎回伏姫八房譚を再現したのか




一話でも多く観たくて観たくてしようがない「新八犬伝」。また新たに発掘された回がNHKラジオで放送されるという。え、ラジオ?
なんでも番組関係者から提供された(全464回中の)第320回(1975826日オンエア)音源だそうで、この度のアーカイブ放送は残念ながら映像は無し。当時の視聴者で番組の音声をカセットテープに録音していた人のエピソードは噂に聞いていたが、関係者にもそんな御仁が?この第320回は当Blogの以前の「新八犬伝」関連記事で紹介した86(本日の記事の最下部にある「曲亭馬琴」のラベル〈タグ〉をクリックして頂ければスキップできる)と同様に、通常の15分から40分に拡大して放送された総集編。




「孫子の代まで、祟ってやるう~ッ」

 


226日土曜午後15分。ドキドキしながらradikoで録音しつつ『発掘!ラジオアーカイブス』を聴く。なにせ時は1975年、テレビの録画ができるVIDEOなんてものはまだ殆どの家庭に普及しておらず、余程の金持ちは別として、世の視聴者はラジカセぐらいしか番組を保存できる手段が無かった。ラジカセをテレビと接続コードで繋がずに、テレビの前にただ置いて録音するだけだと部屋の中に聞こえる雑音まで拾ってしまって、クリアな録音にするのはなかなか難しいのだが、今回オンエアされる音源は関係者提供だからかマスター・テープ並みのハイ・クオリティ。

 

 

 

320回は犬士を探して犬村角太郎が琵琶湖へ赴く「石見太郎坊」篇が一段落したところ。「新八犬伝」ノベライズ本(初刊/日本放送協会版全三巻)でいうなら『下の巻』の序盤。『NHK連続人形劇のすべて』を開いて放送データを確認すると総集編は第86回と、この第320回しか制作されていないようだ。

 

 

 

さて気になる第320回の内容なんだが、
話はかなり後半だというのに(いやだからこそなのか)長い物語のプロローグである伏姫八房譚がまたしても繰り返され、犬士たちの活躍は観られ・・・いや聴けず。だってさあ、このプロローグ部分は劇場版DVDや以前の記事でも紹介した第86回の総集編で十分見られるじゃないの。(第86回はテレビでアーカイブ放送されたけれども、現段階では未だにソフト化されていない)ということは全464回のうち、第86回及び第320回における総集編と題され時間拡大した回は、根幹をなす発端伏姫八房パートを改めて視聴者に復習させるためのものだったのか。これだったら40分の拡大回じゃなくてもいいから、準・総集編といえそうな第176180回「新春顔見世」篇(信乃・額蔵・現八・道節・小文吾・舟虫エピソード紹介)や第405406回「新春いろはかるた上・下」篇(〝いろはかるた〟になぞった「新八犬伝」の各キャラクターとそのエピソード紹介)のほうが聴きた・・・いや観たかったぞ。


 

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などと、つい繰り言を漏らしてしまったが、たとえ辻村ジュサブローの人形が見れなくとも極上のラジオドラマとして楽しむ事ができるのは言うまでもなく、音声だけで聴くと改めて確認できる声優陣のなんと素晴らしい演技よ。時たまネットで「新八犬伝」をリメイクしてほしいとの声を見かけるけれど、ヴィジュアル面のみならず声の演技/音楽そして脚本に至るまで、旧き良き日本文化である歌舞伎/能/講談のポップな魅力を結集させたこの作品を、デジタルでアタマが退化した現代人が再現するのは逆立ちしたって無理。

 

 

 

86回しかり、第320回も総集編であれ新たに撮影はしなおしているみたいだし、従来の回の映像を再編集したものでは決してないと思う。第86回は語り手・坂本九を全面的にフューチャーし彼が挿入歌を唄うシーンなどがあったが、第320回は純粋に人形劇のみで進行。伏姫の死に至るまでのストーリーを駆け足で見せた後、この時点ではまだ登場していない「仁」の玉を持つ犬江親兵衛を除く七犬士、そしてこれまで登場してきた悪役キャラクター達の紹介が!(ここだけは何が何でも映像で観たかった)



第320回の内容とは完全一致していないが、悪役キャラ集合の図



DVDや第86回で鑑賞できる玉梓が怨霊、悪女舟虫、さもしい浪人・網乾左母二郎、蟇六・亀篠夫婦はもちろん、第320回総集編exclusive、この豪華な悪役の顔ぶれを見よ。


関東管領扇谷定正(!)とその奥方・蟹目前(!)

四六城木工作の後妻・夏引(!)

馬加大記(!)

海賊・漏右衛門(!)

赤岩一角(!)

犬玉梓之介(!)

虬〈ミヅチ〉の悪霊・矇雲(!)

石見太郎坊(!)

 

箙大刀自(!)

彼女は原作『南総里見八犬伝』に出てくる〝そこそこ重要な大物〟なのに『新八犬伝』ノベライズ本ではその存在が割愛されてしまっていた。こうして第320回を聴くことでオンエアではちゃんと登場していたのが判明した訳だ。



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今回のラジオ・アーカイブを聴いて「あれっ?」と思った点。犬飼現八の声を演じた声優は三人おり(井上真樹夫 → 穂積隆信 → 関根信昭)、第320回の時点だと私の記憶ではこの頃はもう三代目の関根信昭が演じていたはずだったのに、radikoから聞こえてくる現八が口上を述べる場面で穂積隆信らしき声が。なぜ現八役は二度も声優が変わったんだろう?そして声優がチェンジした正確な時期はいつだったのか? 

        




(銀) 「新八犬伝」と「ウルトラQ」はテレビ史上に残る永遠のマスターピース。今回のオンエアの中でも触れていたが、第320回の他にも視聴者から「新八犬伝」を約200回分ほど録音したテープの提供があったそうだ。NHKはこの名作をしっかり録画しておかなかった罪滅ぼしとして、提供されたそのープを全て最新の技術を駆使して丁寧にマスタリングし、我々に聴かせる義務がある。



最後に犬玉梓之介の雄姿(?)をどうぞ。本日の記事につきCarina氏、辻村寿和氏、その他すべての関係者の方々に深い感謝を。

彼の名前をよくよく見てみれば・・・。