2月26日土曜午後1時5分。ドキドキしながらradikoで録音しつつ『発掘!ラジオアーカイブス』を聴く。なにせ時は1975年、テレビの録画ができるVIDEOなんてものはまだ殆どの家庭に普及しておらず、余程の金持ちは別として、世の視聴者はラジカセぐらいしか番組を保存できる手段が無かった。ラジカセをテレビと接続コードで繋がずに、テレビの前にただ置いて録音するだけだと部屋の中に聞こえる雑音まで拾ってしまって、クリアな録音にするのはなかなか難しいのだが、今回オンエアされる音源は関係者提供だからかマスター・テープ並みのハイ・クオリティ。
第320回は犬士を探して犬村角太郎が琵琶湖へ赴く「石見太郎坊」篇が一段落したところ。「新八犬伝」ノベライズ本(初刊/日本放送協会版全三巻)でいうなら『下の巻』の序盤。『NHK連続人形劇のすべて』を開いて放送データを確認すると総集編は第86回と、この第320回しか制作されていないようだ。
などと、つい繰り言を漏らしてしまったが、たとえ辻村ジュサブローの人形が見れなくとも極上のラジオドラマとして楽しむ事ができるのは言うまでもなく、音声だけで聴くと改めて確認できる声優陣のなんと素晴らしい演技よ。時たまネットで「新八犬伝」をリメイクしてほしいとの声を見かけるけれど、ヴィジュアル面のみならず声の演技/音楽そして脚本に至るまで、旧き良き日本文化である歌舞伎/能/講談のポップな魅力を結集させたこの作品を、デジタルでアタマが退化した現代人が再現するのは逆立ちしたって無理。
関東管領扇谷定正(!)とその奥方・蟹目前(!)
四六城木工作の後妻・夏引(!)
馬加大記(!)
海賊・漏右衛門(!)
赤岩一角(!)
犬玉梓之介(!)
虬〈ミヅチ〉の悪霊・矇雲(!)
石見太郎坊(!)
箙大刀自(!)
彼女は原作『南総里見八犬伝』に出てくる〝そこそこ重要な大物〟なのに『新八犬伝』ノベライズ本ではその存在が割愛されてしまっていた。こうして第320回を聴くことでオンエアではちゃんと登場していたのが判明した訳だ。
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今回のラジオ・アーカイブを聴いて「あれっ?」と思った点。犬飼現八の声を演じた声優は三人おり(井上真樹夫 → 穂積隆信 → 関根信昭)、第320回の時点だと私の記憶ではこの頃はもう三代目の関根信昭が演じていたはずだったのに、radikoから聞こえてくる現八が口上を述べる場面で穂積隆信らしき声が。なぜ現八役は二度も声優が変わったんだろう?そして声優がチェンジした正確な時期はいつだったのか?
(銀) 「新八犬伝」と「ウルトラQ」はテレビ史上に残る永遠のマスターピース。今回のオンエアの中でも触れていたが、第320回の他にも視聴者から「新八犬伝」を約200回分ほど録音したテープの提供があったそうだ。NHKはこの名作をしっかり録画しておかなかった罪滅ぼしとして、提供されたそのテープを全て最新の技術を駆使して丁寧にマスタリングし、我々に聴かせる義務がある。