内容をよく確かめずに古書を買って、運悪く〝ハズレ〟を引いた例がコレ。現物を手に取れない通販ならば仕方がないけれども、何年も前に古書店でまとめ買いをした時、全然時間が無くて急ぎで会計しなければならなくなり、タイトルと奥付を一瞬見ただけで「これは二度と再発されなさそうな胡散臭い探偵小説に違いない」と早合点してしまった。
著者の島村喬については何も知らない。戦争に関するノンフィクション本を出している事、百瀬三郎という別のペンネームでも著書があるらしいという事、そんな程度だ。『探偵雑誌目次総覧』を眺めたが、島村喬/百瀬三郎どちらもヒットする作品が見つからない。今回取り上げる『悪の比重』が探偵小説っぽい内容だったらもう少し調べたかもしれないが、あまり深追いしたくなる気持にもならず。
🔳 星野省蔵
日本一の宝石商。裏でナイトクラブを経営し、政界とも人脈があるダーティーな実力者。
🔳 蜂谷辰治
星野とヘクトの仲立ちとなる国内の宝石ブローカー。
🔳 ジョン・ヘクト
米国の大物宝石ブローカー。
🔳 江藤伸
元は普通のサラリーマンだったが警察に無実の罪を着せられ人生が狂う。八年の刑を経て、今は冷血な殺し屋に変わってしまった。クライマックスを〆るのはこの男。
🔳 古河得武
情報屋。日銀地下のダイヤ売却ネタをいち早く掴み、関係者に接近しまくる。
🔳 戸部
『朝陽新報』青年記者。めぐみと付き合っている。
🔳 有吉めぐみ
有吉勇太郎の娘。『朝陽新報』婦人部記者。
🔳 影山
赤坂一帯を仕切っている裏社会のボス。三十七、八歳で誰も彼の過去を知らない。
🔳 篤子
影山の店の、まだ二十を過ぎたばかりのマダム。蜂谷とねんごろになるよう送りこまれる。
🔳 麦子
ナイトクラブで働く江藤の恋人。カラダ目的ではない愛情を注がれている。
🔳 有吉勇太郎
保守党総裁以上の力を持ち、財界とも繋がりが深い。
🔳 萬谷古志朗
汚職まみれの代議士。有吉勇太郎の腹心。
探偵小説の味わいは無く、一種のピカレスク的な群像劇。私の好む内容じゃなくて残念だった。大藪春彦とか好きだったら楽しめるかも。ただ書き方が雑なんで安っぽい感じはする。