1978年から1992年まで月一ペースで『朝日新聞』に連載された国内外ミステリ・コラム。それは鮎川哲也がまだ現役で『沈黙の函』や『死びとの座』を発表していた時代。基本的にこの十五年間に発表された新作ミステリを取り上げている項が多いけれどクラシック・ミステリにも言及していたり、時には業界への苦言など話題は広範囲。私はこの時代の新作を自分の読書対象とはしていないから例えば逢坂剛なんて一冊も読んだことは無いが、そんな人間が読んでも十分楽しめる内容になっている。
105頁の原・石毛というのは、のちに監督になってグータッチを定着させた読売巨人軍の原辰徳そして元西武ライオンズの石毛宏典のルーキー時代の話。この二人の名は本書巻末の人名索引にもちゃんと載っているが、こういうコラムに引用されるほど人気があったのよ。もっともその後の選手時代の原はいつもここぞという時に打てない四番バッターだった印象しかない。あと356頁はピンク・レディじゃなくてピンク・レディーね。どうでもいいけど。
本書の評価を☆4つにしているとはいっても、それは上記でも述べたとおり私の興味範囲外のミステリ作品に関する書評が多いので、それらの作品を読んでないのにああだこうだと発言する資格は私には無い・・・という意味から☆1個分差し控えたのであって、執筆・制作サイドにマイナスされるような落ち度は何もなし。龜鳴屋の仕事だけならば満点。だいぶ前に発売された倉田啓明譎作集『稚兒殺し』みたいな本をまた出してほしい。
(銀) 本書は限定613部だそうなので興味のある方は早めに龜鳴屋HPへどうぞ。それにしてもハードカバーで613部作って価格が2,200円+税か。個人レーベルにしては多めの部数かもしれないけど、良心的な価格だなあと思う。これに比べて盛林堂書房の出す新刊本は部数が200~300部ぐらいのソフトカバー本(カバー付き)で価格が3,000~3,500円あたり。サイズが文庫より大きくなったり、カラーページ中心の本になるともっと値段は高くなる。
本の制作に関する内部事情はそれぞれ異なるとはいえ、盛林堂は黒っぽい探偵小説の古本に対し状態が悪かろうがおかまいなしに非常識な高値を付けて売っている印象が強く、そこまで超レアではなかった古本まで相場を軒並み吊り上げようとしているようにも思えるので、龜鳴屋の本に見る丁寧な造りと価格を鑑みると、「盛林堂の新刊はゴリゴリに利益を乗せた価格で売ってるんだろうなあ」とつい詮索したくなる。でも盛林堂はテキスト打ち込みやデザインとかを第三者に発注しているから、その点で龜鳴屋以上に人件費コストはかかっているのだろうが。