2021年4月4日日曜日

『亜細亜の旗』小栗虫太郎

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①  NHK朝のニュースの第一報


私は朝、テレビを見る習慣が無い。202132日(火)の朝もNHK総合にたまたまチャンネルを合わせていなかったら、この第一報は間違いなく見逃していただろう。               それは早朝6時台の『おはよう日本』放送中、ふと画面右側の〝本日のメニュー〟に目を向けると  「小栗虫太郎が家庭小説も」という項目が。なんでまた虫太郎がテレビのニュースに?

 

 

その情報がオンエアされる順番は一番最後のほうだから録画する余裕は十分にある。           ゆっくりセッティングを済ませ待機して見ていると、桑子真帆がこう切り出した。                        「昭和初期に活躍した探偵小説家で『黒死館殺人事件』等の作品で知られる小栗虫太郎が、  昭和16年に他の作品とは作風が全く異なる家庭小説を発表していた事が確認されました」     おお~。

 

 

次に画面に映し出されたのが二松学舎大学の山口直孝。今回の虫太郎作品発見者は彼だという。                        は?この人、多少なりとも虫太郎を読んだ体験はあるのか?以前横溝正史「雪割草」を発見した時にもNHKの『ニュースウォッチ9』で、発見された「雪割草」の中にくちゃくちゃのお釜帽を被りもじゃもじゃした蓬髪の男性芸術家が出てくるもんだから「これは金田一耕助の原型だ!」と大騒ぎしていた俗物だ。自分で何か発見すると毎回NHKに報道してもらうように手配してる のかな。                                    

 

 

このニュースでわかったのは発見された長篇が九州地方ほかの新聞に連載されていたという事。恋愛うんぬん家族うんぬんと紹介されているけど、家庭小説っていってもどんな内容なのか全然想像がつかない。そうそう、今回発見された作品のタイトルは「亜細亜の旗」というらしい。 そして探偵小説ではなさそうなのに加えて、虫太郎の特徴である難解な節回しが全く無いとも。しかし昭和16年っていったら「女人果」よりも後でしょ。「女人果」も新聞に連載した長篇で、虫太郎は既に初期の晦渋さが無い文章の作品を書き始めていたから、虫太郎の事をよく知らずに山口直孝がまた話題にしようと思ってオーバーに盛って言ってるんだろうなと、私は思った。


                   

 

その後ネットでもこのニュースが出回り、早くも『亜細亜の旗』が単行本として春陽堂書店から刊行される告知が。「雪割草」の時と違って、今回は作品発見のニュースから間を空けずに発売するつもりみたい。春陽堂はコロナ禍になって自社オンライン通販の発送が(在庫が十分ある のに)やたら遅くなっていたけれど、ちゃんと改善してくれたようで最近はスムーズな購入が できている。よって今回はwebサイトで予約を開始したその日にすぐさま春陽堂にオーダー。

 

 

『おはよう日本』のニュースから一か月も経たぬうちに、その新刊本『亜細亜の旗』は届いた。『完本人形佐七捕物帳』に似た函・カバー・帯の仕様が施されており、かなり厚みもある。    梱包を解き、待ちかねた未刊長篇を読み始めた。                             すると、こちらの予想を裏切るような点がいくつも見つかった。

 

 

   につづく