2021年3月17日水曜日

『Re-ClaM』vol.2/十五年目の論創海外ミステリ

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Re-ClaM事務局
2019年5月発売



★★★★   論創海外ミステリは500巻を目指すんだってさ



● 日本で翻訳されていないクラシック・ミステリの数々を、原書からコツコツ探して読んで紹介してきた海外ミステリ・マニアの為の同人評論誌『ROM』。そのバトンを引き継ぐように年二回ほどのペースで近年刊行を開始したのがこの『Re-ClaM』。




本号はまだvol.2だからか、間口を入りやすくしている印象。スウェーデンで出版したカーの書影なんかも十三冊ばかり載っていて、昔の古書のほうが装幀に味わいがあるのは日本もスウェーデンも同じなのか、1941年刊『九人と死で十人だ』の書影に惹かれる。葬列のようにエドワーディック号へ乗り込もうとしている船客の絵とタイトル書体とのバランスが見事だし、どこか得体の知れないジャーマン・ロックのアルバム・ジャケットみたいで、なんで日本人はこんな雰囲気のうるさくなく意味深いカバー・デザインを作るセンスが無いんだろう?


 

 

● ROM』時代からの小林晋/林克郎/真田啓介/M.K.といった常連寄稿者以外に森英俊/北原尚彦ら古本ゴロも参加していて不快だが、このvol.2は巻頭特集が論創海外ミステリなのでblogの記事にするかどうか思案してきた。というのも、私の関心が日本探偵小説にあり論創ミステリ叢書はマメに読んでいるとはいえ、このところずっと不甲斐ない本ばかりを出している論創社だから、制作裏事情を知ったところで悪口しか書く事がないし。

 

 

その論創社編集部から論創海外ミステリ現在関わっている黒田明と林威一郎が呼ばれ、対する聞き手は『Re-ClaM』のオーガナイザー三門優祐に盛林堂書房店主・小野純一、この四人によるロング・インタビュー。知らなかったけど論創海外ミステリの担当は今井佑の前にふたりの前任者がいたんだな。

今井が去ったのが2013年あたり・・・ということは論創ミステリ叢書でいうと菊池幽芳や水上幻一郎の頃か。論創社の出すミステリ本についてツイートするのは主に林のほうだそうで、どっちでもいいけど読者からの「これ出して」要望の傾向とかをtwitterだけで決めないでほしいよな。プレゼント企画の応募をtwitterでしか受け付けないクソ企画とか他社でも見かけるけど、twitterをやらない読者の存在は一様に無視かい?

 

 

Re-ClaM編集部が推薦する論創海外ミステリ20選〉という頁もあって(大物作家は除外)、一番古い作はグラント・アレン『アフリカの百万長者』(1897)で、逆に一番時代が近い作はシーリア・フレムリン『溺愛』(1969)とジョン・ブラックバーン『闇に葬れ』(1969)。ちなみに本号で各巻の紹介がされているのは1100巻まで。よってこの20選もその100冊の中からのセレクトなんで念の為。


 

 

● 論創社インタビュー参加者四名のフルネームが末尾の〈執筆者コメント〉欄にしか書いてなかったり、素人っぽい欠点も見られるが定価1,200円以上の収穫は十分あると言えるのでは?


 

私は論創海外ミステリはごくたまにしか買ってないから、当初より指摘されてきた「翻訳の質のショボさが最近は改善されているのか?」問題に突っ込むのは他の人に任せる。

何度も述べてきた事だが、論創ミステリ叢書しかりその他の本もコロナのせいにしないで誤字誤植などミスの無い本作りを当り前にやる、それが論創社の最重要課題だろうが。そしてもうひとつ挙げるとすれば、他の中小出版でも自社独自のショッピング・サイトを作り、大手通販サイトが発売日になっても入荷しない本を在庫があれば即購入できるようにしてくれているのに、論創社ときたらユーザーの利便性をちっとも考えようとしないから、発売日以前に新刊本がヤフオクで売られている。ちったあ真面目に考えろ、社長。




(銀) 論創ミステリ叢書をテーマにした誌面上のトークはかつて2011年8月の『図書新聞』に掲載された。その時の対談者が横井司なのは鉄板としても、聞き手が郷原宏だったので対談のボリュームが今回の『Re-ClaM』には圧倒的に負けているだけでなく、理想的な聞き手であったら面白い話をもっと横井から引き出せたのに、と思ったものだ。だからチャンスがあれば再び論創ミステリ叢書をネタにして『「新青年」趣味』あたりで『新青年』研究会メンバー + 旧担当者の今井祐をゲストに招いて座談会大特集をやってほしいけど、今のガタガタな論創ミステリ叢書を考えるとどんなもんかねぇ。




同じ論創社の本なんだし、論創海外ミステリのテキストにだけ語字誤植が無いなんて事は絶対ありえないと思うのだが、誰も気がつかないのかしらん。なんせ読者が老眼のオッサンまたはジイサンばかりだから、おかしな箇所がいくつあっても全然気がつかなくて当り前?