● 日本で翻訳されていないクラシック・ミステリの数々を、原書からコツコツ探して読んで紹介してきた海外ミステリ・マニアの為の同人評論誌『ROM』。そのバトンを引き継ぐように年二回ほどのペースで近年刊行を開始したのがこの『Re-ClaM』。
本号はまだvol.2だからか、間口を入りやすくしている印象。スウェーデンで出版したカーの書影なんかも十三冊ばかり載っていて、昔の古書のほうが装幀に味わいがあるのは日本もスウェーデンも同じなのか、1941年刊『九人と死で十人だ』の書影に惹かれる。葬列のようにエドワーディック号へ乗り込もうとしている船客の絵とタイトル書体とのバランスが見事だし、どこか得体の知れないジャーマン・ロックのアルバム・ジャケットみたいで、なんで日本人はこんな雰囲気のうるさくなく意味深いカバー・デザインを作るセンスが無いんだろう?
● 『ROM』時代からの小林晋/林克郎/真田啓介/M.K.といった常連寄稿者以外に森英俊/北原尚彦ら古本ゴロも参加していて不快だが、このvol.2は巻頭特集が論創海外ミステリなのでblogの記事にするかどうか思案してきた。というのも、私の関心が日本探偵小説にあり論創ミステリ叢書はマメに読んでいるとはいえ、このところずっと不甲斐ない本ばかりを出している論創社だから、制作裏事情を知ったところで悪口しか書く事がないし。
〈Re-ClaM編集部が推薦する論創海外ミステリ20選〉という頁もあって(大物作家は除外)、一番古い作はグラント・アレン『アフリカの百万長者』(1897)で、逆に一番時代が近い作はシーリア・フレムリン『溺愛』(1969)とジョン・ブラックバーン『闇に葬れ』(1969)。ちなみに本号で各巻の紹介がされているのは1~100巻まで。よってこの20選もその100冊の中からのセレクトなんで念の為。
● 論創社インタビュー参加者四名のフルネームが末尾の〈執筆者コメント〉欄にしか書いてなかったり、素人っぽい欠点も見られるが定価1,200円以上の収穫は十分あると言えるのでは?
(銀) 論創ミステリ叢書をテーマにした誌面上のトークはかつて2011年8月の『図書新聞』に掲載された。その時の対談者が横井司なのは鉄板としても、聞き手が郷原宏だったので対談のボリュームが今回の『Re-ClaM』には圧倒的に負けているだけでなく、理想的な聞き手であったら面白い話をもっと横井から引き出せたのに、と思ったものだ。だからチャンスがあれば再び論創ミステリ叢書をネタにして『「新青年」趣味』あたりで『新青年』研究会メンバー + 旧担当者の今井祐をゲストに招いて座談会大特集をやってほしいけど、今のガタガタな論創ミステリ叢書を考えるとどんなもんかねぇ。
同じ論創社の本なんだし、論創海外ミステリのテキストにだけ語字誤植が無いなんて事は絶対ありえないと思うのだが、誰も気がつかないのかしらん。なんせ読者が老眼のオッサンまたはジイサンばかりだから、おかしな箇所がいくつあっても全然気がつかなくて当り前?