『本の雑誌』に掲載されていた昭和の編集者たちに話を聞く企画「シンポ教授の温故知新インタビュー」を単行本化。各章に関連リストが付いているのは便利。全員の内容を紹介していると長くなるので、いにしえの探偵小説に携わり尚且つ私の興味が深い人だけ紹介する。
● 原田裕
ネタが結構『<出版人に聞く⑭>戦後の講談社と東都書房』(論創社)と被ってはいるが、実際先に行われたのはこっちのインタビュー。やはりミステリに関する話を引き出すには、小田光雄よりも新保のほうが好ましい。
● 大坪直行
本書の中で最も問題のインタビュー。というのはこの人、『ヒッチコック・マガジン』編集長の座から追い落としたとして小林信彦(=中原弓彦)から深い恨みを受けていて。松本清張がとことんイヤな性格なのを伝えるエピソードは嘘ではないと思うが、小林との事実関係はどっちの言っていることが本当?
● 中田雅久
飯田豊一『<出版人に聞く⑫>「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』をちょっとだけ補完する内容。後章で島崎博が『探偵実話』の再評価を促しているが、久保書店~あまとりあ社の(エロ系)探偵小説も同じくそうあるべき。
● 八木昇
この人も桃源社社長としての仕事は立派なものだが、その後の蔵書家としてはいろいろな噂も耳にするし、一筋縄ではいかなそうな御仁。だいたい度を越した古書蒐集家にまともな人間なんているんだろうか。
● 島崎博
よく誤解されているが、雑誌『幻影城』を立ち上げたのは実は彼自身ではない。
● 北村一男
『EQ』『ジャーロ』の人。北村は山前譲と一緒に、鮎川哲也『幻の探偵作家を求めて』完全版の刊行計画を早く進めなければいかんのだ。(のちにあの本は実にいい加減な作り手達によって、論創社から復刊されてしまった)
● 戸川安宣
氏が東京創元社の社長だった頃は乱歩本が充実していて幸せだった。戸川みたいな人がトップにいないと、あの会社はダメよ。
● 藤原編集室
高くて少部数な本しか企画が通らない・・・・やっぱり国書刊行会はアブノーマルだ。紀伊国屋書店のウェブストアでは国書の新刊が出ても発売日に全然「在庫あり」にならないので問い合わせ先に文句を言ったら、「国書刊行会は価格の高い本が多いため弊社では専門書扱いしており、それゆえ発売日に潤沢な在庫を持たない傾向があります」なんて、耳を疑うような回答をされちゃったぞ。ところで藤原はいつも顔写真 NG?
その他は白川充・佐藤誠一郎・山田裕樹・宍戸健司・染田屋茂の面々。新保が原田裕から聞き出したかった昭和20年代末頃の江戸川乱歩と横溝正史確執の理由しかり、真に聞きたいヤバそうな話に限って語られることはない。皮肉にもそれが聞書本の宿命だな・・・と本書を読んで私は悟った。
新保が編纂する最近のミステリー文学資料館名義の光文社文庫アンソロジーに比べたら、ずっと有益で面白かった。頭が衰えないうちに、本書はしがきで触れている江戸川乱歩評伝とか『横溝正史自伝的随筆集』に入りきらなかった正史のエッセイを纏める『金田一耕助と私』など懸案事項にはケリをつけてほしいが、そんな気持はもう雲散霧消しているんだろうな。
(銀) twitterで他人に言わなくてもいいことを言ったあげくに激昂され、結局は詫びを入れる羽目になり・・・日下三蔵ほど重度の依存症ではないにしろ、とうとう新保もSNSボケしてしまったのか。今まであれだけ良い仕事をしてきながらイタイ晩年になったものだ。
twitterって、そんなにしてまでやらなきゃいけないものなのかね。SNS自体、本来は既に親しい間柄とかこれから親しくなりたい人達が内輪でチマチマやってりゃいいもんじゃないの? 世間に向かって説教垂れたりアジったり他人の事をあげつらったりチクったり、そういうのをわざわざ拡散させる必要がどこにあるというのだろう?