2020年12月20日日曜日

『新吉捕物帳』大倉燁子

NEW !

捕物出版(楽天ブックス  POD)
2020年10月発売



★★★★   もっと彼女の新刊(探偵小説)が出ないものか



時代の変化につれてマニアックなジャンルの本は、
従来の出版社から刊行される商業出版のものばかりではなくなってきた。
このBlogでも同人出版の本を紹介しているが、
今回取り上げるのは、商業出版と同人出版の中間の立場で頑張っている〈捕物出版〉という個人出版のインディペンデントなレーベル。

 

 

捕物出版は2018年から稼働開始。
POD(プリント・オン・デマンド)、つまり在庫を持たず、
受注した数量だけを随時印刷・製本して販売するシステムをとっており、
現在のところ捕物出版の本はPODの自社製本機を持っているAmazon.co.jpと楽天ブックス、
そしてHonto経由で購入が可能。あと全国の三省堂書店でも取り寄せ可能との事。

 

 

『大倉燁子探偵小説選』以来ちっとも新刊が出ていなかった大倉燁子の、
昭和2630年の間に書かれはしたが単行本に纏まる機会がなかった時代小説が、
一冊の本になった。捕物出版エライ!
メインは本書のタイトルにもなっている「新吉捕物帳」シリーズ十二篇。


「組屋敷のお化枇杷」「捨て子」「嗤った人形」「不思議な客」

「鏡のない家」「鼈甲の櫛」「二つの親心」「お三輪のゆくえ」

「彼岸花」「藪の中の空屋敷」「恨みの駕籠」「龍紋の平打」

 

そして20201010日に当Blog記事で紹介した「黒門町伝七捕物帳」シリーズのうち、
大倉燁子が担当した「身代り供養」「美女と耳」を収録している。
この他にも彼女の時代ものはもう少し残っているようだが、
それらはどれも本書収録作品を改題しただけなのか、私は知らない。

 

 

元から時代小説に造詣は深くないし、最近は配本がまだ継続している横溝正史の『完本人形佐七捕物帳』しか読んでいないので ❛ お玉が池 ❜の口の悪さに比べると新吉と手先の千太のやりとりは何ともマイルドに見える。そして燁子刀自は探偵小説を書く時、リアルで物理的なトリックよりも心理面の素材を扱う人なので、江戸を舞台にしたヒュ~ドロドロの超自然チックな犯罪スリラーは書き易かったのかもしれない。ていうか、そもそも捕物小説ってその多くは気の利いたトリックが無い時のシャーロック・ホームズ物語みたいなものだしね。
(捕物帳マニアの方々、失礼)


 

 

(銀) 捕物出版の本で持っているのは一番最初に出た納言恭平『七之助捕物帖』と、
横溝正史の『朝顔金太捕物帳』『左門捕物帳・鷺十郎捕物帳』『不知火捕物双紙』。
ここまではAmazonから買っていたけど、もうあそこから買物するのは一切止めたので、
今回は楽天ブックスを利用した。大倉燁子の新刊なので☆をひとつおまけでプラス。



「二つの親心」という話は3頁しかないのだが、これって初出誌の『増刊読切小説集』(荒木書房新社 昭和28年11月刊)発表時からそうなのかな? 本書は解説が付いていないので判断がつかない。

 

 

『新吉捕物帳』は新刊だったからか、オーダーから発送まで五日かかったが全くNo Problem。逆に最近のAmazonは在庫があっても品物が届くまで一週間とか、めちゃくちゃ遅いんでしょ。捕物出版の中の人も「(本の販売システムに対して)Amazonの対応が悪すぎ」とボヤいておられたし、あの会社に関わっていい事なんかひとつも無いから、いっそ捕物出版もAmazonで売るのは止めたらどうですか?