B 名越國三郎って和製ビアズレイの筆頭だから、あながち間違ってもないじゃないですか。 それより本作でよく云われるのは「恐竜より、襲ってくる猿人のほうがインパクト強いじゃん」という事ですよね。
A 確かに『原始少年リュウ』みたく、凶暴なティラノサウルスに喰われそうになる印象は少ないな。チャレンジャー教授の外見が猿人どもとそっくりなのは挿絵付きだと尚更笑えるけど。
B 『ジュラシック・パーク』とかじゃなくて『原始少年リュウ』を引き合いに出すところがそれ以上に笑えます。
A 70年代のアニメは声優も渋かったし今と違って全然面白かったんだよ。嘘くさいCG映画より、子供の頃アニメで見た恐竜チラノがヨダレ垂らしてリュウ(声:井上真樹夫)に牙を剥く場面のほうがずっと恐かったイメージが残っててさ。今見たら「あれ? こんなもんだったけ?」って思うんだろうけど。その確認の為にもアニメ版『原始少年リュウ』はもう一回見てみたい。
B ドイルじゃなくてすっかり石森章太郎の話になってますが、本書の日暮雅通による解説はすごく適切で、そこで映画版「失われた世界」の紹介もされていたので、1925年のやつだったら僕もソフト買って見てみたいと思いました。
(銀) 手元にある旧訳本「失われた世界」の中から、戦前に改造社から刊行された『世界文學大全集 ドイル全集』第5巻を引っ張り出してきた。本作は「滅びた世界」と題され、訳者は大佛次郎。他に「霧の世界」が横溝正史、「マラコット深海」が和氣律次郎、「ラフルズ・ホー行状記」(ママ)が石田幸太郎とクレジットされておる。奥付の譯者代表は大佛次郎で、検印も大佛の本名「野尻」のハンコが押されている。
浜田知明がどこかで「この『世界文學大全集 ドイル全集』における横溝正史訳は本人のものではない」と書いていたような。『ドイル全集』第5巻は冒頭に「訳者の言葉」として前書きがあり四人の訳者がそれぞれ自分の担当作品について述べている。今日のテーマだと本来は大佛次郎のパートを紹介するべきなのだろうが、それじゃ面白くないので横溝正史のパートを掲載しよう。但し、浜田の言い分が仮に本当だとしたら以下に記すこの前書きも正史本人が書いたものではないかもしれない、という事になる。なお、読み易いように私(銀髪伯爵)が改行を施した。読者諒セヨ。
> 「霧の世界」は作者ドイルの傑作「ロスト・ワード」(ママ)が映畫化されて、異常な好評を博したのに刺戟されて書いた。(ママ )作者としては晩年の作である。思ふに映畫の好評にヒントを得たジャーナリズムに無理に強ひられて書いたものであらう。
とはいへ、この二つの作品の間には殆ど何等の連絡もない。唯前作の主人公三名がそつくりその儘この作品にも出て来るといふに過ぎない。何しろこの二作は年代に於いてかなり距離があるのだから、作者としてはいかにジャーナリズムに強ひられても、再び昔の冒険物を書く氣にはなれなかったのに違ひない。