2020年11月9日月曜日

『桜田十九郎探偵小説選』桜田十九郎

2014年6月4日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

論創ミステリ叢書 第75巻
2014年5月発売



★★★★   国際冒険任侠小説




版元が文士村長(疎開後に地元名古屋で着任したという)などとキャプションを付けるものだからどれだけ野暮ったい小説なのかと気が重かったが著者の学歴は旧制一高→東京帝国大(中退)と、そこそこのインテリだったらしい。 


                   


「鉄の処女」「燃えろモロッコ」(『モダン日本』に発表)


「髑髏笛」「めくら蜘蛛」「女面蛇身魔」「呪教十字軍」

「沙漠の旋風」「五時間の生命」「蛇頸龍の寝床」「屍室の怪盗」

「悪霊の眼」「唖の雄叫び」「魔女の木像」「落葉の岩窟」(『新青年』に発表)


「恐怖の水牢」(『譚海』に発表)

 

昭和12~19年、探偵小説冬の時代である戦時下に書かれた作品群。異境を舞台に大和魂の日本男児を主人公とした、なんというかインディ・ジョーンズみたいな冒険譚。八紘一宇がどうとか国策色は思った程前面に押し出されてはいない。エッセイやインタビューの類が全く遺されていないので作者の意図は掴めないけれど、カタカナのルビが全編に踊り、どれだけ小栗虫太郎の影響を受けているか解らないが中村美与子(本叢書第20巻)よりは大衆的に思える。それが優秀かどうかはまた別の問題としても。

 

 

一人三役とか、化かし合いを見せる作は点在するも、ミステリ的要素が読後の印象に残るものではない。これだけ『新青年』に執筆していながら全く名が知られていなかったのはこういった背景から来ているのだろう。上記の作よりも前に書かれ『サンデー毎日』に公募入選したボーナス収録分「青龍白虎の争闘」「哀恋佃夜話」「幇間の退京」「夏宵痴人夢」はただの普通小説。

 

                    


探偵不在による論理性の無さ、更に怪奇幻想色もそれほど無く。純粋なミステリでないと嫌だという人には需要が少なそう。論創ミステリ叢書のラインナップの中で、桜田十九郎みたいなのはワースト・ランキングの上の方に入ってしまうんだろうな。




(銀) Blogに載せるので若干改稿したが、レビュー投稿時に書いた自分の文章がいつも以上に雑だし手抜きで桜田十九郎があまりに可哀そうだから、ひとつプッシュもしておこう。一口に戦時下作品と言っても意外といろいろな本が近年出されており、『梅原北明探偵小説選』収録の「特急〈亜細亜〉」は本書と同系統の長篇だったりする。だったら私の好きな守友恒の昭和16年~20年に書いた「南極海流」「熱砂圏」などが『守友恒探偵小説選Ⅱ』として出されたっておかしくはない筈。このあたりの作品にも面白いものが潜んでいないとも限らないから、出来る限りの目配りは続けていきたい。