2014年3月5日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿
戎光祥出版 ミステリ珍本全集③ 日下三蔵(編)
2014年2月発売
★★★★ イカモノ喰いの読者オンリー
✪ このミステリ珍本全集のコンセプトは、過去の評論等において正当に評価されるような行儀の良い内容では決してなく、これまで再刊される事もなくゲテモノ扱いされ稀覯本と化した小説を復活させる事にある。普通の感覚で接するにはあまりにマニアック過ぎる作品なのだが、その中でも本巻はこの全集のゲテモノぶりを象徴するのに最も相応しいかもしれない。だから、この辺りの事情に詳しくない方は書店に足を運び、自分の目で中身をしっかり確認した上で買うほうが無難。
✪ ここに収められた三長篇の怪人は、
悪の芽が醗酵すると変幻自在になったり(「醗酵人間」)
LSDを使って変貌したり(「改造人間」)
八本手足の奇形蜘蛛人間だったり(「台風圏の男」)
いずれも復讐に燃える異形の殺人鬼(の筈)。
「醗酵人間」の出だしなど怪談風で良い感じなのに、その後マヌケな設定やセリフが次々に出てくるものだから、ちっとも陰惨に思えずグダグダになる。
「台風圏の男」だと最初は蜘蛛男の暗躍がメインの筈だったのに、途中から元・泥棒/緒方正平あるいはその協力者/渋谷伸二の活躍譚にすり変わる。基本は確かにSFっぽい。そこに江戸川乱歩趣味やマジメに受け取る価値も無い密室殺人まで絡んできて、もうSFにもミステリにもなりそこねている。「予想外の感動を呼ぶ」なんて言っている連中がいるが、そういう代物ではありません。
■ こんなものでもリスクを冒してまで再刊したという遊び心
■ 作者・栗田信の経歴が明らかになった事
この本を評価する根拠はそこに尽きる。間違っても作品の内容が良い訳がなく、★1つ評価にする人がいてもちっともおかしくない。その昔、横田順彌・會津信吾の両氏と共に栗田信を世間に紹介した鏡明でさえ今回の月報エッセイを読むと「なんで今頃『醗酵人間』を・・・」と呆れている様子。褒めるところがあるとしたら、昭和30〜40年貸本時代の大らかさ(いや、いい加減さか)が味わえる点か。
✪ 発売日である2月26日の未明、「在庫あり」になるのが最も早かったAmazonで私は本巻を購入しオーダー分は午前中には発送されたが、その日の正午にはAmazonに本巻のレビューが既にもう掲載されていた。都心の大型書店でも同日午前10時発売なのに、一般人がどうやってこのボリュームの本を読み終える事ができるのだろう?
人に聞くと、レビューのランキング上げたさに商品を買いもせずネット上の既存情報だけコピーペーストし、内容はどうあれ★5つにしたレビューを早出し投稿して「役に立った」票稼ぎをするという、我々には理解のできない人種がいるんだと。本を読んでもいないのにレビューをでっちあげて投稿しているこの手の輩にはくれぐれも騙されないように。
(銀) 本巻がウケたので調子に乗った盛林堂書房が2019年の夏に『栗田信傑作集 上下巻』を出したのだけれど、これが呆れるほど超くだらない。シャレとはいえ、よくもまあこんなものを厚かましく〈傑作集〉などと名付けて売り出したものだ。森英俊が編纂に加わっている事を除いても、あまりの酷さに「金返せ!」と言ってやりたくなった。本巻掲載の三長篇は馬鹿馬鹿しいながらもまだ読めたし、せめてこのレベルを保っているのならともかく、再び古本ゴロどもが栗田信を新刊で出す事があったとしても有難がる必要なんてない。
発売日の正午にAmazonに本巻のレビューを投稿していたのは Nodyというレビュー業者。実際に本を買って読んでいないのが見え見えな理由として、この人物がレビューしている商品が(本でもCDでもいいが)要するに再発リイシューものだったとしよう。そんな時その商品は前に出ていた時と内容がどこかしら異なっているものだ。ところが悲しいかな、現物を手にすることなくネット情報から都合の良い文章ばかり剽窃してレビューを書いているものだから、現物を見ないと判らないような以前の商品との違いについて書くのは到底不可能なのでアル。
おヒマな方はAmazonのレビューで怪しそうな投稿者がいたら、レビュワー名の部分をクリックするとその人物がこれまで投稿してきたレビューがズラズラ出てきて、特にNodyだと高評価ばかりで★3つ以下の投稿が無いとか、いろんな事が見えてくる。そもそも毎日何かを買い続けて日課のようにレビューを投稿しているヒマと金のあり余っている社会人なんて殆どいない訳で、毎日毎日しかも一日のうちに何件もレビューを投稿している奴はどこからどう見ても不審。そしてこういう中身の無い満点レビューしかAmazon.co.jpは求めていない。
やらせレビュー・ネタはまだまだある。新刊本の発売される日付に変わってAmazonでその本のレビューが投稿できる状態になると、社員が自社の本の自作自演満点レビューを猛ダッシュで投稿してくる大手出版社がある。その話はまた今度にでも。