2020年10月21日水曜日

『大衆文化』第二十三号

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立教大学江戸川乱歩記念 大衆文化研究センター
2020年9月発売




★★  立教大/江戸川乱歩記念大衆文化研究センターの刊行物



西池袋にある旧江戸川乱歩邸は現在立教大学が管理している訳だが、立教の中には【江戸川乱歩記念 大衆文化研究センター】という部門があり、年12回の頻度でリリースされる刊行物が 二種類ある。ひとつは『センター通信』という約12頁の冊子で、販売品ではないから関係者以外には知られていないだろう。もうひとつの刊行物が今回紹介する『大衆文化』という学術誌。  こちらのほうは池袋で販売されている場所もあるのでご存じの方もいるかも。



立教大学など限られた処でしか購入できないが、乱歩に関する論考/資料が発表されるので私は毎回楽しみにしている。立教が出しているからといってテーマを乱歩オンリーに限定している訳ではなく、決まり事さえ守れば時代問わずどんな作家・作品を論述の題材にしても良い。   そんな風に投稿の門戸は開放されているが、誌面に載る文章の執筆者はだいたいいつも立教の人あるいは他の大学関係者が多い。書いている人の職業など普段は気にする事も無いが、この雑誌の特徴を知ってもらうために本号執筆者はどこの大学に属する人なのか下段にて記しておこう。今回は岡崎京子の漫画「Pink」についての論文もある。さすがに岡崎京子論をやられても私は 全然嬉しくないが、それはそれとして。 

 

① 艶めかしき怪談 ― 江戸川乱歩「人でなしの恋」論(上) 

  石川巧(立教大学文学部教授)


② 江戸川乱歩「孤島の鬼」の着想を巡って 

  小松史生子(金城学院大学文学部教授) 


③ 岸田國士「かへらじと」を読む ― 移動演劇の作劇術  

  松本和也(神奈川大学国際日本学部教授)


④ 「Pink」から『Pink』へ ― 岡崎京子『Pink』論 

   村松まりあ(立教大学大学院博士課程前期課程) 

 

この中で②の「孤島の鬼」論のみ少しだけ触れておく。この作に登場する紀伊半島の各地は現実のどの場所を乱歩はイメージしていたか? 蓑浦金之助/諸戸道雄の命名のモデルは? 「孤島の鬼」創作に臨んで、乱歩は森鴎外の片輪者製造の話にインスパイアされている。「ヰタ・セクスアリス」こそがそれに該当する作品だと小松史生子は書いているのだが、もしいつも買うようなアンソロジーに鴎外を入れたなら、教科書に載っている文豪など今更読みたくないと思っている私のような横着者でも面白がって読めるだろうか?




(銀) 立教大学の乱歩センターが立ち上がってすぐの頃に旧乱歩邸を見学させてもらい、  乱歩が自宅に所蔵していた貴重な書籍なども手に取って見ることができた。その時格別の計らいをとってくださった落合教幸のおかげで『センター通信』と『大衆文化』は毎回送って頂いて おり、落合氏はじめセンターの方々にはただただ感謝。氏はてっきり乱歩センターの統括者に なるものだとばかり思っていたが、今はセンターに係わっておられないらしい。せっかく能力のある適任者だったのに。