2020年10月14日水曜日

映画『フランケンシュタインの怪獣/サンダ対ガイラ』

2015年1月23日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

東宝特撮Blu-rayセレクション
2010年1月発売



★★★★   東宝・円谷らしい健全さに囚われず
          大人向けの恐怖を徹底していれば




NHK-Eテレ『岩井俊二のMovieラボ ~ 特撮編』で本作にスポットライトが当てられているのを観て無性にBlu-ray が欲しくなった。ネット上でのBlu-rayの評判はDVDと比べてかなり良いようなので、つい衝動買い。以下、特撮マニアでもコレクターでもない過剰な思い入れゼロの人間による感想。



まず、万人に解り易いアトラクティブなポイント 。


 ープニングから、いきなり伊福部昭の不穏なメインテーマに昂る。


 ピンクのルージュとノースリーブからのぞく二の腕。
様々なシックスティーズ・ファッションで魅せる水野久美(as アケミ)。


 『ツイン・ピークス』ファンなら、若き日のラス・タンブリンが(そう、Dr.ジャコビー!)主役級のスチュワート博士として出演しているので注目。撮影中、日本人スタッフにあまりフレンドリーではなかったので表情にやる気がない等と一部ネットに書かれているが、事前にそんな情報さえ知らなければ気にはならない。

 

 暴風の海上を泳いで逃げる船員を醜悪なる緑の怪物ガイラが襲うシーン、浜辺・空港・村落に出現した時の遠景のガイラと、近景の逃げ惑う人間とを合成した光景は実に素晴らしい。特にいやらしいガイラのあの走り!こういうシーンをもっと観たいのに、場面によっては短すぎる。サンダとガイラの悲哀を観客に把握させるための説明は少なく、印象に残るシーンがある割にはストーリーのメリハリ/ヤマ場的な部分は弱い。海彦山彦あるいはカインとアベルの要素を本作に持たせたいのなら、もっとテーマ性を明確にして脚本を練らないと。

 

 

私は怪物が人間に迫りくる脅威をこそ観たい。それは巨大怪獣対巨大怪獣や巨大ヒーロー対巨大怪獣よりも人の目線でみた人間対怪物のほうが最もスリリングだと思っているから。本作なら凶悪なガイラが単独で暴れる前半の方がしっくりくる。アケミに育てられた恩を覚えていた善のサンダは45分過ぎてやっと登場するのだが、個人的にはガイラの蛮行が目当てなので、冒頭の巨大オクトパスを八つ裂きにしたり、もっと人間も残忍に喰いちぎってほしかったね。

 

それでこそ人間側の対抗兵器であるメーサー殺獣光線も活きてくる。東宝・円谷が子供を意識して品行方正なのは承知しているけれど、せっかく日米合作なのでせめて本作ぐらいはターゲットの年齢層を上げてもう少しヘビーで恐ろしい仕上がりに挑戦してもらいたかった。

 

Blu-rayのジャケットは当時の宣伝ポスターのようなおどろおどろしいイラスト・タイプにしたほうが怖くて洒落てるのに・・・とか物申したい点はいくつかあるけど、とりあえず買って満足。改めて『ウルトラQ』はTV作品ながら突出した完成度だったのだなと思い知らされた。



(銀) TVで岩井俊二も言っていたが、脚本的にそこまで優れている訳ではない。醜いガイラが人間を襲ったり怪獣らしくない獰猛さで集落や海を駆け抜けるのが気持ち悪くて、すごく脳裏に刷り込まれるのだ。



以前、2019年に出た『ウルトラセブン』北米盤Blu-ray BOXAmazon.co.jpレビューに書いておいたのだが、不当に削除されたのでもう一度物申す。あの「恐怖奇形人間」も「九十九本目の生娘」も商品化したのだから、「獣人雪男」も早く復活させてくれ。

 

 

いくら『ウルトラセブン』をBlu-rayリマスタリングや4Kリマスタリングしても、円谷の大株主フィールズとバンダイは気狂いクレーマーが怖いから、いつまでたっても12話の解放にOKを出そうとしない。ひし美ゆり子でさえ第12話解禁を望んでいるのに、どうしてウルトラファンは(朝日新聞が昔やったスペル星人抹殺キャンペーンの逆をいって)第12話解放の抗議デモを起こして自粛まみれの世論をひっくり返そうとしないのか?