有名になったスターを「自分があいつを BIG にしてやった」なんて思っている人は得てしてよくいるものですが・・・。
▼
▼
この長篇における女優マーシャ・テイト殺しの真犯人・動機・雪上に残された(脱走形跡がない)侵入方向だけの足跡の理由もそうだが、いたいけな読者が目を剥きながら丁寧に話の筋を追ってみても、H・Mが終盤に謎を解き明かす前に真犯人が使った兇器をズバリ当てるのは相当難しい。序盤でシレっとその手掛かりが提示されてはいるが流石にこれは解らないと思う。真相を知って「ああ、やられた!」と一杯喰わされて頂きたい。
舞台となる〈白い僧院〉。本館・屋根付き車寄せ・常緑樹の並木道・厩舎・別館(ここが屍体の発見現場となる)・・・それらの位置取りはやっぱり図があったほうが解り易く、実際に本書を読んでいないレビュアーは知らんだろうが(Amazonに毎日のようにレビューを投稿している輩はこういう奴ばかりだ)、翻訳者・高沢浩原案による見取図が8頁に載っている。
本作は『黒死荘の殺人』(プレーグ・コートの殺人)後の事件。主人公はアメリカからやってきた外交官で、ヘンリ・メリヴェール卿の甥っ子でもあるジェームズ・ベネット青年。冬の早朝〈白い僧院〉に到着したベネット青年は別館の戸口にいたジョン・ブーン(屋敷の主・モーリスの弟)によって〝 蝶よ花よ 〟的な扱いをされている女優の死を知る。毒入りのチョコレートを使った脅迫という前奏はあったが、誰が何のために・・・?
これから読む人は〈白い僧院〉回りの状況、そして「雪の降っていた時/やんでいた時」「飼われている猛犬テンペストの動き」に気を留めながら、物語を追っていくといい。それと現場には絡んでこない新聞界のドンについてもしっかり把握しておかないと、終りのほうで明かされる〝もうひとつの人間関係〟がイマイチ理解できなくなる。
▽
▽
作品自体は★5つで順当なのだが、折角リニューアルした2019年新訳版なのに、ヤフオクにて(レアだけどボロ同然の状態の)探偵小説古本の転売を止めぬ人間に解説をいまだ書かせているのには呆れる。心ならずも減点したのはこれだけが理由。
(銀) 本書の解説を書いているのは森英俊という古本乞食で、こいつを古本神とか呼んでいるコバンザメのような莫迦もいる。古本屋や即売会で見つけたレア本を長年ヤフオクで転売し続けており、昔の 2ch(今だと 5chか)に立てられていた「ヤフオクでボロ儲け! 森英俊って」というスレッドはググれば今でもヒットするようだ。
森英俊はネット上でも古本狩りをしているらしく、コソコソ隠れて仕込んでいる転売ネタの尻尾を掴んだことがある。いつだったか私は「日本の古本屋」で新規にupされた相当珍しい戦後貸本探偵小説の古本を見つけた。自分で欲しいものならすぐ買ってしまうけれど、既に持っていたり必要の無いものだったらいくらレアで手頃な価格であっても買わない。あいにくと既に所有済みの本を転売=カネ目的で何冊も買うほど貧乏臭い人間ではないもんでね。
その本がupされて二、三日が過ぎ、再び「日本の古本屋」を見たら売り切れている。すると更に数日後今度はそれと全く同じ状態の古本がヤフオクで森英俊によって転売されているのを発見。threecoffinsというIDが森であるのは、ヤフオクにて探偵小説古本の出品状況を長い間見てきた人なら周知の事実。この本は「日本の古本屋」で書影画像を添付して売られていたからヤフオク画面と見比べてすぐに同じものだと判明。「森英俊はこうやってレア本を転売しているのだな」と手口が明るみに出た訳だ。
こんな人間にカーの新刊本が出ると平気で翻訳をさせたり解説を書かせているのだから、日本のミステリ・ギョーカイがどれだけ腐っているか。しかも森や喜国雅彦周辺の、探偵小説に関する古本を小銭稼ぎの道具だと勘違いしている連中が排除されるどころか日本推理作家協会メンバーになっているのだから、江戸川乱歩をはじめ先人達が苦労して経営してきたこの団体も今では名ばかりで何をか言わんや、である。