2010年7月発売
★★★★ 四年ぶりの外地探偵小説集第三弾!
エキゾティカ・南方篇
■ 「破壊神の第三の眼」 山口海旋風
■ 「湖ホテル」 北村小松
■ 「南方探偵局」 耶止説夫
■ 「スーツ・ケース」 玉川一郎
■ 「食人鬼」 日影丈吉
■ 「C・ルメラの死体」 田中万三記
■ 「スマトラに沈む」 陳舜臣
忘れた頃に出るこのアンソロジー。せらび書房は大丈夫か?と心配していたが、とりあえずひと安心。巻頭の「探偵小説的南方案内」と巻末の解説だけでなく、今回はカバーを外して本体の表と裏表紙も見てみよう。
毎回秀逸な視点でシブい作品を揃えてくれるのだが、戦前日本の植民地が舞台なのだから、セレクトされる作品の書かれた時期は広く採っても昭和20年代までに限定した方がいいと毎回思う。
本書でいうと特に陳舜臣なんか時代が下り過ぎている。作家の同時代性を重視して欲しいのだ。それと順調に本シリーズを継続させる売上を見込む為にも、良い作品なら怪奇幻想ものを避ける必要は無い。ビッグ・ネームとは言わずとも、ある程度知名度のある作家も押さえた方がいい。(前回の『上海篇』でいうと甲賀三郎「カシノの昂奮」とか)
第四弾は『大陸篇』が予告されている。編者の藤田知浩よ、今後はもっと速く出してね。
(銀) しかし、その後『絵筆とペンと明日』(田中益三)という本を平成23年に出したっきりせらび書房は雑誌『朱夏』の最新号も出すことなく長い長い無い沈黙へ・・・かろうじてSNSは更新され、HPも生きてはいるが・・・。
『南方篇』が出て十年経った。その間に各出版社がいろいろなアンソロジーを出したし、それまで個人名義で本になっていなかったマイナー作家でさえ、現行本で読めるようになった。だから用意していたネタを他でやられて新作を出しにくくなっているのかな・・・とも思う。でも『満洲篇』『上海篇』そして本書のラインアップを見直してみたけれど、他社が掘っていない鉱脈はきっと残っている。I'm still waiting !