2020年7月16日木曜日

探偵小説と古本の闇(二)

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【二】 心が貧しい古本者たち




Amazonのカスタマー・レビューに投稿しながら、管理部門から不当に削除されたもうひとつのケースについて話をしよう。【一】はさもしい古本ゴロの話だったが、【二】は古本屋にフォーカス。





古本屋の情報を得たい場合でも今はネットのおかげで大変便利になった。多くの店がHPを作って通販にも対応しているし、更に「日本の古本屋」「スーパー源氏」のような通販専門webサイトだってある。片や、一度古本に狂った人は近場だろうが遠方だろうが収穫を求めて古本屋に足を運びたがる。ネットが無かった頃、国内あちこちの古本屋情報を得るためには日本古書通信社が刊行していた『全国古本屋地図』という本に頼るしかなかった。




ネットで簡単に古本屋情報が得られる環境になったおかげで『全国古本屋地図』の新版はずっと出なかったのだが、数年ぶりに若干書名を変えて制作されたのが『古本屋名簿-古通手帖2011』だった。昔より古本屋の数が減少しているとはいえ、大きさは新書サイズに縮小、厚みも控えめになってアレッ?と思って見たら、各店舗の情報で載っているのは〈住所〉〈電話 + FAX番号〉〈最寄りの駅名〉のみ。以前はあった地図が無いどころかHP/メールアドレスの記載さえ載っていない。これじゃあガイドブックとして手抜きと云われても仕方あるまい。

 

 

その他のページには〈全国の即売会ガイド〉、これは必須情報だし納得。〈本のサイズ〉〈紙のサイズ〉、これらの情報も必要な人はいるのだろう。ただ、〈干支年表〉〈元号早見表〉〈著名作家署名・生没年一覧〉、この三つは私は不要としか思えないのだが世間の人はどうなのかな。ネット社会の中で本書の意義を見出すのが難しくなっているとはいえ、せっかく新版を出すのに過去の『全国古本屋地図』よりはるかに情報がグレードダウンしちゃダメだろ。

 

 

版元の顔でもある月刊誌『日本古書通信』からして、あんなペラペラな仕様なのに何百円も取るなど実にボッタクリな話だ。とかく古本屋を営む人というのは社会通念を理解できない変わり者が多いと昔から云われてきた。ここははっきりさせておくが、私自身「日本の古本屋」を通じてお世話になっている古本屋の店主さんは常識のある方が殆どで、いつも気持ちの良いやりとりをさせてもらっている。しかし例外というものは必ずあり、【一】で述べた芳林文庫のみならず、客を客とも思っていない古本屋は十年一日存在しているのが現状。

 

 

・ 東京の古書ワルツという店からは、「日本の古本屋」で売っている本について状態など事前の質問は一切お断り、「嫌なら買わなくて結構です」と言われた。極端な最悪の例だが(人手が足りなくて忙しいとか、仕方のない面もあるにせよ)店主の人間性の問題だろう。後でトラブルにならないよう、礼儀としてこちらは注文前に最低限の質問をしているにもかかわらず、無礼極まりないこの態度。そんな絶対買ってはいけない店がある反面、古書の状態の質問に対し、わざわざメールに本の画像を添付して返信を下さる方もいて、そんな丁寧な店は多少状態に難があってもなるべく買うようにしている。

 

 

・ 日本郵便がアホなので、ゆうちょ銀行だけでなくゆうメールの利用も以前よりかなり不便になってきた。そこで私が古書通販の発送方法に好んで使っているものがある。送料もさほど高くない上に追跡番号が付いて、発送者側の最寄の集配局が夕方までに荷物を受け付けたら、たとえ遠い地域からの送り出しであっても翌日にはこちらへ届く〈レターパック〉がそれだ。(離島・山間部など残念ながら翌日配達が無理な地域もある)

 

 

このレターパックを知らない古本屋がいて、こちらがいくら「レターパックは郵便局だけでなくコンビニでも専用封筒を買えたり発送もできますよ」と伝えても意固地になって拒否したり、中にはレターパックについて説明したら逆ギレしてきた佐賀の古本屋もいたな。なぜか裏日本の店にその傾向が強いが、田舎ばかりに起きることでもなくて、都心部でも物わかりの悪い古本屋に遭遇する時がある。「やむをえない事情だから」と言ってくれたらこちらも「わかりました」と納得するのに、従来からのやり方をひとつたりとも変えたくないからといって何もキレることはないと思うけどね。

 

 

斯様にして実例を挙げ、「いまだに古本業界には話の通じない人種が生息しているし、日本古書通信社はユーザーの利便性をちっとも理解していない」みたいなことを『古本屋名簿-古通手帖2011』のAmazonレビューに書いた。自論を無理に肯定するつもりはないが至極当たり前の問題を指摘しているつもりだったし、このレビューもこちらが想像していたより「参考になった」票が数多く寄せられていたのだけれど、これまた関係者がAmazonへ裏から手を回したのだろう、知らぬ間に私のレビューは削除されていた。

 

 

なにか買物をすると鬱陶しいほど「カスタマー・レビューを投稿して下さい」とメールを送ってくるくせに、誰も言わない本当の事を指摘したら、即座にそのレビューを削除する。まさに社会主義国家のような発言規制に今トコトン邁進しているのが、長い間日本に税金を納めずブクブク肥大化してきたAmazon.co.jpだ。これについてはまた別の記事にて、Amazonにターゲットを絞って書く予定。

 
 


という訳で、本項【一】~【二】で言いたかったことを総括しよう。古本それ自体、現行で流通している本には無い情報を得られて、我々を豊かにしてくれる素晴らしいものなのは確か(但し相当旧くて綺麗に保存されていなかった本は不衛生なので注意を要する)。だが、古本を商売として扱っている業者の中には残念ながら社会人としての常識が欠落した人間がまだまだ多いし、自分の欲しい古本のためなら人格が変わってしまう病的な人間もいる。

 

 

 

そういう連中がネット等で口にするウマそうな話には決して乗らず、相手にしないこと。こんな業界には深入りせず、物事を冷静に見極めながら古本と付き合わないと、【一】でも書いたように毎日ネットでポチらずにはいられぬビョーキになってしまったらオ・シ・マ・イ・ダ・ヨ。