○ モンキー・パンチのインタビューでは彼の漫画史やミステリ観をよく聞き出している。ルブラン原典の魅力をアピールしているページもあり、内容がすべてブレている訳ではない。反面、渡辺由美子とかいうアニメライターが峰不二子のことを「あまり恵まれた環境にはない女ののし上がり」だの「女だけが本来の不二子を見てくれる存在」だの、的外れな意見を開陳。性格背景をあえて明確にしないのが不二子という女性の肝なのをちっとも解ってないのだな。
○ 本号最大の欠点はアニメ・サイドのルパンに熱を上げるあまり、一番の売りであるルブラン~ルパン研究者住田忠久の執筆記事を大幅に削ってしまったこと(某ファンサイトで住田が嘆いていたので、この事実が判った)。日下三蔵のアニメによるルパン三世系譜なんて、アニオタでなくとも知っているどうでもいい内容で、ミステリ読者は住田の濃いルブラン情報を読みたいのに、編集部というか早川書房は勘違いも甚だしい。
○ 新訳ルパン全集文庫を出すと云っておきながら、四冊で放棄した会社だものな。今時、附録ボーナスとしての詳細な注釈や初出挿画とか付加価値を何も付けずに、映画タイアップだけでは売れる訳がない。本国 (仏) ではルパン最終長篇「アルセーヌ・ルパン最後の恋」がとうとう刊行され日本でも早く翻訳リリースが望まれるけれど、できれば早川ではなくて他の出版社にお願いしたいものだ。
アニメの「ルパン三世」も上記に書いた以外に言いたい事はないが、絵柄のみについて述べるとするなら、スピンオフ『峰不二子という女』はモンキー・パンチの原作に近いアダルト・タッチに先祖返りしているように見えた。
私は思う。TV旧シリーズが度重なる夕方の再放送で評価を上げ、やっとTV 2ndシリーズが高視聴率を得て映画『ルパンvs複製人間』も大当たりしていた頃、要するに山田康雄が元気な時に、なぜおおすみ正秋に頭を下げて(大塚康生も巻き込んで)おおすみ旧ルパンのアダルトな世界をもう一度復活させなかったのか、と。