そうなのだ。正史は「探偵小説一代男」とマニフェストし、小説の執筆のみに執念を燃やした人。メディアミクスを目論んだ事実なんてどこにもない。なのにこうも小説は棚上げして映像最優先ってどういうこと?金田一以外にも耽美もの/ヒネリの利いた傑作短篇/ユーモアもの/由利麟太郎・三津木俊助シリーズ/時代もの/少年もの、更に編集者/翻訳者/エッセイストとしての顔等々、正史その人と作品に焦点を合わせる、それが横溝正史研究じゃないの?
江藤茂博・山口直孝のふたりは金田一の有名長篇以外ろくに正史を読んだ経験がないのだろう。西口明弘(木魚庵)が参加するとこれだから困る。しかるべき特集で少なくとも5号ばかり出した上での本号の内容だったらまだ受け入れられたかもしれない。読みどころがない訳じゃなく正史が翻訳したアルデンの論考とか良い頁もあるだけに、正しい視点を持つリーダーの不在が致命的と言える。
正史没後30年。創刊号の参考文献目録でわかるように、真っ当なテキスト・クリティックスを取り上げた商業誌は殆どなく、外堀的な映像関連の本ばかり。まともな横溝正史文献そして正しいテキストで校訂された横溝正史全集を一体いつになったら我々は読めるのだろうか?
(銀) 二松学舎大学のセンセイ、特に江藤茂博は横溝正史の著作というよりも活字を読む習慣それ自体がなさそうだ。この人の著書に『オタク文化と蔓延する「ニセモノ」ビジネス』という本がある。それってまさに自分自身のことじゃないの?
ところで横溝クラスタっていうんですか? とみに映像作品がお好きらしいその手の人達に対して素朴な疑問がある。今世紀に入ってから日本の地上波で明智小五郎や金田一耕助のドラマが作られる時、他に選択肢はゼロであるかのように名探偵役にはほぼジャニーズ・タレントがキャスティングされるけど、何かTV業界でそういう決まりでもあるんですかね?
あの会社って何かあるとすぐワケわからん強権を発するでしょ。『古畑任三郎』が再放送される際、木村拓哉の回とSMAPの回はだいたいトバされる。稲垣吾郎金田一シリーズはあんなにネットでオタの人達がソフト化して!って言ってきたのに商品化どころか再放送さえしてもらえない。まして彼はジャニーズを辞めたから余計に稲垣金田一の商品化と再放送の可能性は無くなったかもしれない。そんな事されても、まだジャニーズの名探偵が見たいですか?
話が横道に逸れるが、なんでジャニーズが嫌かといえば上記のような強権しかりゴリ押しブッキングがエグいから。木村拓哉主演のドラマでも中居正広(彼もジャニーズを退社したが)のバラエティでも必ず下っ端ジャニタレがまぎれこんでいて、その内デカいツラをするようになってゆく。他にも例えば山下達郎。「僕はゲーノー人じゃない」とか言うが、どう見てもジャニーズの裏・役員だし、偽善的な発言とタイアップがらみの仕事しかしなくなって(昔は好きだったけれど)今はただ嫌悪しかない。