2020年6月17日水曜日

『赤い水泳着』横溝正史

2009年5月19日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

出版芸術社 横溝正史探偵小説コレクション①
2004年9月発売



★★★★★  いまい毬のカバー絵が素敵、
                 探偵小説はこうでないと




角川の『喘ぎ泣く死美人』『双生児は囁く』(山前譲/編)を受けて、原田裕の出版芸術社が入手難作品を集めた「横溝正史探偵小説コレクション」全3巻。同社は他にも正史の伝奇・捕物・金田一原型ヴァージョンのレアなところを小まめに拾ってくれていて地味ながら探偵小説ファンは目を離せない出版社だ。
 

 

本巻では金田一もの「赤の中の女」のオリジナル「赤い水泳着」、第2巻『深夜の魔術師』ではジュブナイル「真珠塔」の原型で単行本初収録となる表題作、第3巻『聖女の首』では「車井戸は何故軋る」の非金田一もの初稿版を収める。正史の改稿癖も良し悪しだが、この三作、特に「車井戸」に関しては原型の方が結末の余韻が断然いい。時代もの → 人形佐七への改稿はともかく、なんでも金田一へ改稿すればいいという訳でもなかろう。

 

 

この本では、正史にしては大変珍しいSFテイストの「二千六百万年」や南洋もの「八百八十番目の護謨の木」など有名作では見られない意外な面も様々楽しめる。





(銀) こんなに探偵趣味にあふれるタッチと構図を具えた装幀の新刊本は、その後もなかなかお目にかかれていない。杉本一文のイラストよりもこっちのほうがはるかに優れている。