2020年6月17日水曜日

『村山槐多耽美怪奇全集』村山槐多

2009年5月9日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

学研M文庫 「伝奇ノ匣④」 東雅夫(編)
2002年11月発売




★★★★★ 「俺の舌は久しくも実に人肉を要求していたのだ。
                    ああ遂に発見した。」


  

伝奇怪談アンソロジーの雄、東雅夫が送る耽美怪奇全集「伝奇ノ匣」第4弾。
詩歌・小説・日記・随筆・年譜を一冊に凝縮。 

 

 

「悪魔の舌」「魔童子伝」「魔猿伝」「殺人行者」などの小説が小振りながらも面白い。
黒岩涙香・谷崎潤一郎・宇野浩二と並んで江戸川乱歩の作品にその影を落としており、「悪魔の舌」の肉に飢えた主人公や「魔猿伝」の涎を垂らした金猿にはきっと乱歩作品のデジャ・ヴーを視るだろう。 

 

 

巻頭に有名な「二少年図」の口絵と、乱歩から槐多へのオマージュであるエッセイ「槐多 二少年図」も収録。どこか人食・男色を想起させるネチネチといやらしい山本タカトのカバー絵も秀逸だが、実際読んでみると槐多の文章自体はそんなにくどくはない。 

 

 

講談社文芸文庫にて『槐多の歌へる』が文庫化されたので本書を紹介してみたのだが、既に品切れで現在取扱なしとは・・・。

 

 

 

(銀) 当レビューを書いた時点で既に本書の流通は無くなっていた。しかし古書価格が高騰しているなあ。この本、内容もさる事ながらカバー絵が本当に素晴らしくて。山本タカトがもっと日本の探偵小説本の装幀の為にカバー絵を描いてくれたら嬉しいのだが、彼にオーダーするセンスの良い出版社はいないのだろうか。


「伝奇ノ匣」シリーズはもっと続いてほしかった。