2020年6月30日火曜日

『探偵雑誌目次総覧』山前譲(編)

2009年6月30日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

日外アソシエーツ ミステリー文学資料館(監修)
2009年6月発売



★★★★    探偵小説データベース




山前譲が長年取り組んできたデータベースの集大成で、戦前~戦後に亘る全探偵雑誌の総目次と執筆者名索引を見ることができる。光文社文庫「幻の探偵雑誌シリーズ」「甦る推理雑誌シリーズ」巻末部分を一冊に纏めたと思ってもらえればいい。但し『新青年』は量が多すぎるので収録されていない。  

 

 

「幻の探偵雑誌シリーズ」「甦る推理雑誌シリーズ」の巻末とどこが違うのかと言えば、まず総目次はミステリー文学資料館における蔵書の有無/各記事のノンブル/アンケートのお題の記載が加えられている。「幻の探偵雑誌シリーズ」「甦る推理雑誌シリーズ」では省かれていた『ぷろふいる』や『宝石』等の総目次も勿論ある。  

 

 

次に執筆者名索引。既存の書物で作品目録が無かった作家(例:森下雨村/水谷準ほか)のよくわからなかった著作内容が見えてくるのは嬉しい。また一般雑誌と比べて探偵雑誌だとあの作家の小説が意外に少ないとか、この作家は結構書いているなとか、チェックしてみるのも面白い。だが翻訳もので目に付く部分もある。索引に翻訳者の表記が無いのはイタイ。例えば「和蘭陀靴の秘密」の場合、総目次を見ればその翻訳者が伴大矩だと判るが、その翻訳者が他に何を書いていたか執筆者名索引で追うことができない。  

 

 

とりあえず気がついた点はそんなところだが、他にも良い点・悪い点があるかもしれない。この価格だったら図版やコラム等が欲しかったし、挿絵画家のクレジットや、小説が初出か再録かを判るようにするのはやはり難しかったろうか?  

 

 

おそらく前述の文庫はいずれ姿を消すだろうし、好事家のリファレンスのため後世に残すよう、図書館本としてこれは刊行されたのだと思う。間違いなく山前譲のキャリアの代表作。こういう企画は大歓迎なので、どんどん発展させてほしい。 

 

 

 

 

(銀) 〝索引に翻訳者の表記がない〟のはおそらく、戦前などは同一ペンネームを複数の人間で使っていたり、その翻訳者のペンネームの正体が本当は誰なのかハッキリ断定できないとか、そういう理由があるからではないか。 

 

 

『新青年』総目次と索引は中島河太郎『日本推理小説史』第二巻などで補わなければならない。本書の定価は19,000+税とかなりのお値段だからこれ以上の価格アップは厳しいし、もし『新青年』の分も載っていたなら(ページ増で済むか二巻本になるかはさておき)、調べものがこの本だけで済んだのだけど。それにしてもまさか池袋のミステリー文学資料館がクローズするとは夢にも思わなかった。  

 

 

とはいうものの、今でも調べものがあると度々本書の世話になっており、お役御免にはなりそうもない。山前氏よ、いつもありがとう。