2020年6月28日日曜日

『緑色の犯罪』甲賀三郎

2009年5月12日 Amazonカスタマー・レビューへ投稿

国書刊行会 探偵クラブ
1994年4月発売



★★★★★  著書目録もあり、甲賀初読者にはピッタリ



大下宇陀児もそうだが、とにかくかなりの作品数が存在する。戦後1度だけ全集が刊行されているが漏れているものが多すぎ。この甲賀全集は復刻がされているものの、いわゆる図書館本で価格高すぎの上、文字も読み難いとくる。甲賀三郎のシリーズ・キャラには獅子内俊次・木村清・葛城春雄・手塚龍太・土井江南等があり、それぞれがどの作品に登場しているのか一度完全に整理しないとよくわからない程だ。

 

江戸川乱歩とは逆に「質より量」的に見られる事も多く、探偵小説好きには魅力的なものものしいタイトルの割にはショボい作品もあるが、本書はその中から良いものを選りすぐっている。

 

■ニッケルの文鎮

■悪戯

■惣太の経験

■原稿料の袋

■ニウルンベルグの名画

■緑色の犯罪

■妖光殺人事件

■発生フィルム

■誰が裁いたか

■羅馬の酒器

■開いていた窓

 

現行本では論創社『甲賀三郎探偵小説選』、創元推理文庫『黒岩涙香・小酒井不木・甲賀三郎集』が入手し易い。春陽堂の初刊本復刻『琥珀のパイプ』『恐ろしき凝視』も探せば見つかる筈。春陽文庫『妖魔の哄笑』は新聞連載されたスリラー長篇だが、出来はもうひとつ。甲賀の弱点としては詰めが性急で書き飛ばしているように見えてしまうところ。やっぱり気短な性格なんだろうか?もっと作品数を絞り一作一作じっくり練り上げるような老獪さがあったら・・・。



(銀) 2015年以降、商業出版でも同人出版でもようやく甲賀の本がポツポツと出る動きが出てきた。「姿なき怪盗」もやっと現行本に入った。その「姿なき怪盗」が収録された『甲賀三郎探偵小説選 Ⅳ』の私が書いたAmazon.co.jpカスタマー・レビューに対してTwitterで絡んでいる人間がいた。

 

私は『甲賀三郎探偵小説選Ⅰ』と『Ⅱ』の収録作選択はあまり適切ではなかったと感じており、その上また『Ⅳ』で甲賀作品を差し置いて次女・深草淑子氏の小品を収録していることに疑問を呈したのである。第三者がそれを見て「別に深草氏の作品を収録したっていいじゃん」と言うのはかまわない。そのTwitterで〝ゆーた〟と名乗っている人物は「深草作品を収録したことにケチをつけているレビュアーがいる。甲賀作品は古本探せば読めるけど娘さんの作品はこんな機会がないと永遠に読めない、甲賀を長嶋茂雄やジョン・レノンと比較しているのは無理がありすぎる」と申している。詳しくは『甲賀三郎探偵小説選 Ⅳ』のAmazonレビューを参照のこと。


この人物についてネットの某所で書かれていたのを見た覚えがある。しょっちゅうTwitterで手持ちのレアな探偵小説古書を自慢するのが生きがいのようで、入手難な同じ本を何冊も買うほど本に金を投入しているらしい。ヤフオクでは pikamak というIDでいつも出没しているのもこの人物だそうだ。そういう人種はいくらでも稀覯本の甲賀著書を買えるからいいが、ごく普通の読者はそんな金は無いし論創ミステリ叢書一冊だって財布に痛い人もいるだろう。そんな甲賀ファンのためにも現行本でひとつでも多く甲賀作品を載せるのがごくノーマルな考えというものではないか。


そして、まさに他人の文章をちゃんと読んでいないネット民らしい言だが、私は甲賀三郎をミスターやジョンと同等のスーパースターという意味で書いたのではない。大衆から見た、親と子に対するかけ離れたニーズの差を喩えて引き合いに出したのだ。そのツイートを受けて‶genei-john〟と名乗っている野地嘉文は「稲富さんが深草作品を収めた気持ちには共感します。別に藤雪夫・藤桂子と同等の扱いをしているわけではないと思う」との事。


『甲賀三郎探偵小説選 Ⅲ』『Ⅳ』の私のAmazonカスタマー・レビューを読んでもらえればわかるとおり、『Ⅳ』の甲賀作品セレクト・解題執筆を担当した稲富一毅に対しては敬意を払ってこそすれ、一言もケチなどつけていない。私はこの〝ゆーた〟や野地嘉文がネットであれこれ言い出すよりはるか前、稲富氏の乱歩・甲賀ファンサイト立ち上げ時から彼のHPを興味深く閲覧させてもらってきた。

 

それに「別に藤雪夫・藤桂子と同等の扱いをしているわけではない」というが、私は深草作品を世に出すなと言っている訳じゃない。わざわざレビュー文中には書かなかったが、氏の未発表作を世に出すのなら甲賀の本じゃなくて単独名義で出せばいい。それは同人出版になるかもしれないけれど。


稲富氏は春田家の著作権継承者ではなく、深草作品は論創社編集部の黒田明が遺族から預かってきたものだから深草作品収録は黒田の意思だろう。そもそも『Ⅳ』の刊行前に出た鮎川哲也『幻の探偵作家を求めて 完全版』をはじめ最近の論創社の本は見苦しいほど誤字だらけな上に、こんな収録内容にするから(稲富氏ではなく)論創社に余計に厳しい物言いにならざるをえなかった。こざかしいネット民は私のような場末の発言にはあれこれ言うくせに、相変わらず誤字を無くそうともしない論創社や著名業界人のヨイショには忙しい。こういう連中に探偵小説への愛情があるとは私は全く思っていない。「一冊の本に誤植が五つもあったらそれは相当杜撰な本といわざるをえない」とは真田啓介も言っている事だ。

 

なんかしょうもない連中のお相手をしてつまらない事に終始してしまった・・・この『緑色の犯罪』は面白いし、甲賀三郎デビューとして一冊目に読むにはピッタリ。是非多くの人に読まれてほしい。