2025年3月2日日曜日

映画『Bombs Over Burma』 (1942)

NEW !

Film Masters    DVD
2024年3月発売



★★★  抗日映画のアンナ・メイ・ウォン




私のBlogでは日本探偵小説の一部に属し、反米・反英・反ソを啓蒙すべく日中戦争~第二次世界大戦の最中に発表された防諜スパイ小説をしばしば取り上げているけれども、今回は逆の立場、中国大陸へ侵攻する日本の脅威を知らしむる米国製作プロパガンダ映画を見ていきたい。主演はAnna May Wong(アンナ・メイ・ウォン)。タイトルはBombs Over Burma」。

 

         ⊶⊷

 

この数年、Alpha Videoというメーカーをはじめ、「Bombs Over Burma」の DVDはいくつか出回っていたわりに、どれも丁寧なレストアがされておらずnot to buyなものばかり。ところが昨年の春リリースされたFilm Masters盤は今までのディスクと比べ、最も観やすい画質に仕上がっているとの噂。PRCProducers Releasing Corporation)の製作した映画はおしなべてフィルムのコンディションがよろしくないそうだけど、その点を考慮しつつFilm Mastersはよく頑張ってブラッシュアップしたと好意的に見る海外ユーザーの声もあり、アメリカからDVDを取り寄せた。

 

 

【 仕 様 】

NTSC  リージョン0(日本のDVDプレーヤーで再生可能)

ブックレット、特典映像などは無し

 

【 言 語 】

英語(一部、北京語あり)

 

 

Film Mastersはなんともニッチなレーベル(?)で、マイナー作品をアーカイヴする一環としてソフトを製作しているような感じ。聞いたこともない昔の映画をブルーレイで発売しているのに今回の「Bombs Over Burma」はDVDのみの扱い、残念すぎる。しかもこのDVD、正規ルートで購入したからバッタもんではないプレス盤のくせにチャプター再生の開始位置が変だったり、全体的に作りがチープ。更に、画質良好と書いたものの音声はそこまでクリアでなくボリュームを上げて視聴する必要がある、英語圏のネイティヴでさえ「細かいセリフが聞き取りにくい」と不満を漏らしているぐらいだし、英語字幕が無いのはイタイ。

 

 

そういう事情もあり「Bombs Over Burma」の公開された1942年(昭和17年)における亜細亜の情勢を先に記しておいたほうがいいだろう。中国大陸の東側(沿岸部)を占拠された蔣介石の国民党政府は重慶まで後退して日本軍に抗戦。一方、ビルマ(現在のミャンマー)も本作が完成したあと日本に占拠された模様。話の中に出てくるビルマ・ロードというのは〝ラーショー〟(ビルマ)と〝昆明〟(中国)を結ぶ物資輸送のための山岳幹線道路。重慶を南西に下ると昆明に至り、その先にビルマがある。








【 ストーリー 】

Lin Ying(アンナ・メイ・ウォン)は重慶で学校の教師をしているが、裏の顔は中国の諜報員。冒頭、重慶の街を日本軍の戦闘機が襲う。Linが教えている生徒のひとりが落命し、手堅く日本の非道ぶりがアピールされる。

場面変わって、ビルマの〝ラーショー〟を出発したLinは中国に向かってビルマロードを走るバスに乗っている。彼女の任務はビルマに届いた連合国からの軍事物資を滞りなく中国へ輸送できる地上ルートを無事開通させること。乗合バスには連合国の派遣メンバーも連なっている。

道中、トラブルによりバスが足止めを食ったため、彼らは僧院らしき建物にて一夜を過ごさねばならなくなった。そこへ狙いすましたかの如く、日本軍の戦闘機が飛来。Lin達は派遣メンバーに紛れて日本側へ情報を流しているスパイがいることを察知。そのスパイとは誰か?




 



〈室内の子供〉と〈窓の外に見える戦闘機の光景〉とは明らかに合成


ビルマ・ロード





この中にスパイが・・・






低予算かつ短期間で撮影されたこの作品、重慶の街並みや空爆は既存の資料映像みたいなものを流用していると思われ、Annaや役者達は中国/ビルマには行っていないはず(よくある話だ)。僧院もそれらしき実物を調達できなかったのか、外観は映らない。一度目に観た時は英語字幕が無いせいでディティールを理解できず、つまらなかったが、作品背景を知って二度目に観たら、なかなか面白かった。ロー・バジェットながら、音楽及び美術&セットはマイナーな国策映画として観れば、そこまで悪くもない。できれば脚本にもっとメリハリが欲しい。やっぱ映画は脚本がしっかりしてないとダメだよな。Annaの演じるLinが口汚く日本の悪口を言わないのは日本人として救われる気持ち。




フランク・キャプラもドキュメンタリー風の反日映画を作っているが、本作よりずっと好戦的な内容だった。「カサブランカ」に至っては反ナチのはずが、あそこまでロマンティックな名作になるとは・・・。Annaの存在だけを楽しむのなら★4つ献上して何ら問題は無いのだけど、字幕は絶対付けてもらわないと困る。日本でも大阪圭吉や蘭郁二郎あたりの防諜スパイ小説をこんな風に映画化していたらよかったのに。
 

 

 

(銀) 日本みたく国土を焼き尽くされてもいないのにAnna May Wongが出演した海外の戦前映画はフィルムが失われたと云われている作品が結構あって、もどかしい。その中にはビガーズ「シナの鸚鵡」を映画化した「The Chinese Parrot」(1927)もあるというが、そういうのに限って観ることが叶わない。やれやれ・・・。