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NHK-BSプレミアム
2023年3月放送
★ ひとつ曲がり角 ひとつ間違えて
本来はNHKドキュメンタリーの看板番組である『映像の世紀』シリーズ。『映像の世紀』→『新・映像の世紀』→『映像の世紀プレミアム』ときて、今やっている『映像の世紀バタフライエフェクト』はそれまでの半分程度(45分)に放送時間を縮小した形。
『新・映像の世紀』以降、水増し編集や同じ素材の再構成を繰り返すだけでビカビカのフレッシュなテーマは投入されなくなり、当初のパワーは次第に失われてきている。『映像の世紀バタフライエフェクト』は(よく言えば)小ネタに焦点を絞り込んでいるけど、無理くり週一オンエアにするものだからディープに作り込む余裕も無さそうで、番組のイメ-ジがこじんまりしてしまった。
もうひとつのビッグ・プロジェクト『未解決事件』シリーズも同様の道を辿っている。最初のFile.01「グリコ・森永事件」こそ劇場型犯罪だったせいもあって、非常によくできていた。ところが、File.02の「オウム真理教事件」は麻原彰晃の自供をとれないなど多くの謎こそ残ったが、一応は教団一味を逮捕できたのだから、このシリーズ内で扱うのはちょっと違う気がする。
その後も事件のセレクトのみならず、再現ドラマ・パートにばかり力点を置き過ぎたり、草彅剛みたいなジャニタレをキャスティングしたりするので、『映像の世紀』と比べ、かなり早い段階から失速の様相を呈していた。そこへなんとFile.09は「帝銀事件」、なんとか盛り返してくれることを期待したけれども、結果は今年の元旦の記事(☜)にて述べたとおり。
その上3月4日には『松本清張と〈小説帝銀事件〉/未解決ミステリー』と名付けられた、またも『未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件』を再構成しただけの番組を垂れ流すばかりか、『未解決事件』シリーズのコンセプトをぼやかしてしまう鵺(ぬえ)のようなこの「未解決ミステリー」とやらの続編として、今後『未解決事件』シリーズの題材になるよう強く願っていた「下山事件」「松川事件」をあろうことか一緒くたに使ってしまうとは・・・。これで『未解決事件』シリーズにおいて「下山事件」と「松川事件」をやる可能性は、ほぼほぼ消えてしまったっぽい。
「未解決ミステリー」があまりに〝ど素人〟の作ったような内容だったんで、記事を書く意欲も湧かないのだけど気力を振り絞って(?)やってみよう。
3月4日放送の『松本清張と〈小説帝銀事件〉』も今回の『松本清張と日本の黒い霧』も、社会派ミステリの王様・松本清張を褒め散らかして喜びたい薄~い視聴者層には向いているのかもしれない。コメンテーターとして出てくる横山秀夫/保阪正康/みうらじゅんはひたすら清張信者としての讃美を口にするのみで、「帝銀事件」「下山事件」「松川事件」については何も理解していないようにしか映らない。清張個人ではなく、これら戦後の不可解な怪事件の真相に対する肉迫が観たい私みたいな視聴者にとって、得られるものは皆無。
もしかするとこの番組の制作者って、私のBlogの『日本の黒い霧』に関する記事をチラ見して「未解決ミステリー」を適当にでっち上げたのかな?もう中身がペラペラすぎて、そんな気さえしてくる。「帝銀事件」ならわざわざ類似番組を作らなくたって、『未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件』を再放送すればそれで済む話だったんではないの?
NHKの松本清張ワッショイ番組といったら、去年だったか船越英一郎をMCにした『わがこころの松本清張』があったし、その前にも『深読み読書会』だっけ?もう十分清張の特集はやってるじゃないか?『未解決事件』シリーズを水で薄めてまで、どうして清張推しをやる必要があるのか、よくわからん。
『松本清張と日本の黒い霧』でも、必要もないのに相も変わらず『未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件』ドラマ・パートの大沢たかお演じる清張のシーンを挿入するし、みうらじゅんは「うしろメタファー」とか面白くもない自分語を披露してシラケさせるし、なんちゅうしょーもない番組なんだか。昔からNHKのドキュメンタリーはあまりセンスがよろしくない傾向にあったとはいえ、どこでどう間違えて人気コンテンツをここまでダメにするほど落ちぶれてしまったのか。こんな調子では立花孝志みたいに「NHKをぶっつぶーす!」って立候補してくる人間は今後も増える一方だぞ。
(銀) 局の顔ともいえる武田真一アナウンサーでさえ見限って辞めていくぐらいだし、民放と違って受信料で潤ってる筈のNHKでさえ、有能な人は続々といなくなってるのだろう。たぶん。長年の無用の長物『紅白歌合戦』をいまだに終わらせられないっちゅうのも私には理解できん。