今年は『「新青年」趣味』創刊30周年でもあるし、これまでの号でどの作家が大きく特集されてきたかを振り返ってみたい。一人の作家について複数記事を組んだ大きな枠の特集を始めたのは 第4号(1996)からなので、それ以降のバック・ナンバーから集計。作家名の右側にある⦅ ⦆は特集された号をを示し、上から特集回数の多い順に並べた。別冊として刊行された『渡辺啓助100』(2001)『江戸川乱歩で行こう!』(2018)もカウントしている(〝別〟と表記)。
江戸川乱歩 ⦅4⦆⦅8⦆⦅12⦆⦅16⦆⦅〝別〟⦆
渡辺啓助 ⦅7⦆⦅〝別〟⦆
横溝正史 ⦅10⦆⦅11⦆
佐藤春夫 ⦅6⦆
海野十三 ⦅9⦆
中井英夫 ⦅11⦆
森下雨村 ⦅11⦆
夢野久作 ⦅12⦆
久生十蘭 ⦅15⦆
谷崎潤一郎 ⦅16⦆
大下宇陀児 ⦅17⦆
小栗虫太郎 ⦅18⦆
濱尾四郎 ⦅19⦆
甲賀三郎 ⦅20⦆
木々高太郎 ⦅21⦆
この一覧に記されてない号は単独作家の特集を行っていない。やはりと言おうか、乱歩の特集が多いですな。あと渡辺啓助の記事が多いのは彼が2002年まで長寿でいてくれたのもあるだろう。この他例えば、大倉燁子の記事などは内容からして非常に読み応えのある内容で、本来なら第16号の谷崎特集よりボリュームもあるのだが、一括特集ではなく第9~10号に分載となったため、不本意ながら上記の一覧にカウントしなかった。執筆者の阿部崇には申し訳ない次第。
小酒井不木と大阪圭吉の大特集が無いのが意外だが、各号に分散しているものの不木の記事はちゃんと存在する。圭吉が十分読めるようになったのはつい最近の事で、盛林堂がいろいろと圭吉本を出しているから、なんとなく機会を逸したか。さて今後特集が考えられる作家は、戦前デビューの作家にこだわるなら橘外男か蘭郁二郎が予想される。そうなると蘭郁二郎に詳しいそうな研究家、すなわち三一書房版『海野十三全集』に参加したメンバーの協力が必要だろう。なんせ読めない作品が多過ぎて。